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その61の2『あわてんぼうの話』

 亜理紗ちゃんが家に筆箱を忘れるという事件こそあったものの、今日の授業も問題なく全て終了しました。知恵ちゃんが亜理紗ちゃんに貸した文房具も、大して減った様子もなく返却されました。しかし、重大な忘れ物をしてしまったのがショックだったのか、亜理紗ちゃんは忘れ物をしない秘訣について帰り道で知恵ちゃんに尋ねます。


 「忘れ物しない方法ってないかな?」

 「学校に全部おいておくとか……」

 「宿題する時に教科書がないと困る……」


 学校に勉強道具を置いている桜ちゃんも宿題を忘れてくる場合がある為、そこに関してはあまり参考になりません。そこで、最終的には知恵ちゃんを見習って、しっかり持ち物の確認をするのが大切だと結論に至りました。自分の家が見えてきたところで、亜理紗ちゃんは近くの物陰に身をかくしました。


 「ちーちゃん……なにあれ?」

 「……?」


 亜理紗ちゃんの家の近くには耳の長いケモノがいて、その体は知恵ちゃんの家にいるプードルのモモコくらいの大きさです。白い毛並みに大きな目を持っており、ボウシや服のようなものをまとっています。見た事のない生き物の動向を探るべく、亜理紗ちゃんと知恵ちゃんはブロックべいに隠れたまま、こっそりと様子をうかがいました。

 

 不思議な生き物は空の色をじっと見た後、亜理紗ちゃんの家の奥にある庭へと駆けていきました。家の前にはキラリと光る青い石が落ちていて、亜理紗ちゃんは生き物の行方を気にしつつも石をひろいあげました。


 「ちーちゃん。これ、落ちてた」

 「宝石だ」


 青い石は亜理紗ちゃんの手よりも大きく、すんだ青色の中には雲が映り込んでいます。どう見ても家の近くに散乱しているような石ではなく、亜理紗ちゃんは不思議な生き物が落としていったものなのではないかと考えました。


 「返しに行こう」

 「まだいるかな?」


 白い生き物を追いかけて庭へと向かいます。しかし、亜理紗ちゃんの家の庭には誰の姿もなく、2人は生き物が物陰などにひそんでいないかと探してみます。どこにも白い姿はありませんでしたが、ふとドアがきしむような、ギーギーといった音が耳に届きました。


 「アリサちゃん。なんかあったけど」

 「……?」


 物置の側面、日の当たらない影となっている場所に、木でできた小さなドアがついています。カギ穴はついていますが、ドアにはカギも差しっぱなしで、押すと簡単に音を立てて開きました。亜理紗ちゃんは戸締りのされていないドアの中をのぞき、不思議な生き物の行き先に見当をつけます。


 「多分、この中に入っていったと思う」

 「うん」


 一旦、ドアの中へと入ってみましたが、すぐに亜理紗ちゃんは外へと戻ってきました。試しに物置の中をのぞいてみましたが、そちらからは外についている木のドアは見えません。不思議な生き物が取りに戻って来てもいいよう、亜理紗ちゃんはドアの近くに青色の宝石を置きます。そして、探検に行く準備をしようと知恵ちゃんに伝えました。


 「ちーちゃん。ランドセルを置いたら、ここに来て」

 「うん」


 ひとまず2人は家へと帰り、自室にランドセルを置いてお母さんに声をかけると、庭に出現したドアの前へと戻ってきました。亜理紗ちゃんは右手に持った懐中電灯をつけ、ドアの中を照らしながら知恵ちゃんの方へと振り返りました。


 「よし。行ってみよう」

 「うん」


 先に亜理紗ちゃんがドアを開いて、その奥へ忍び足で入っていきます。ドアの近くに置き忘れられている青い石をひろい上げてから、知恵ちゃんも亜理紗ちゃんの背中を追いかけました。


                               その61の3へ続く


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