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その11の2『怪獣ごっこの話』

 知恵ちゃんは学校から帰ると自室で宿題を済ませ、お父さんが帰宅するのを待って家族でご飯を食べました。今日の夕食はカレーで、たくさんニンジンが入っています。知恵ちゃんはカレーの具材では比較的、玉ねぎが好きです。

 知恵ちゃんのお父さんはカレーを何口かほおばると、表情を変えずに知恵ちゃんのお母さんへ質問しました。

 

 「母さん。ルー変えた?」

 「辛い?」

 「いや、もっと甘くてもいいよ」


 知恵ちゃんの家は笑顔の絶えない家庭ではないですが、少ない会話のやりとりで意思の疎通が取れる仲の良い家族です。お父さんもお母さんも知恵ちゃんに学校のことを聞きませんが、知恵ちゃんの様子から問題ないのが解っているので、無理に話題にする必要はありませんでした。


 『トラの赤ちゃんが生まれました!』

 『ぬいぐるみみたいで可愛いですね!』

 

 少ない会話の後ろではテレビが映っており、トラの赤ちゃんがタオルの上に転がっていました。そのトラの模様が亜理紗ちゃんの描いたキャラクターに似ていた為、しばらく知恵ちゃんは手に持ったスプーンをとめてテレビを見つめていました。


 夜になると、歯を磨いた後に知恵ちゃんは亜理紗ちゃんの話を思い出し、廊下の窓から隣の家の窓をながめました。


 「……?」


 亜理紗ちゃんの家の階段付近にある窓のふちには、頭に紙コップを乗せた猫のぬいぐるみが置かれていました。

 知恵ちゃんが窓を開けて更に見つめると、その大きな猫のぬいぐるみの横に小さな毛糸玉が置かれていました。でも、それらの意図するところが理解できず、知恵ちゃんは何秒かぬいぐるみを観察したのちに窓を閉めて、ゆっくりと考え事をするように自分の部屋へ戻りました。


 次の日の朝、知恵ちゃんの家へ迎えに来た亜理紗ちゃんは、いの一番にぬいぐるみの話を口にしました。


 「ちーちゃん。窓のアリサウルス見た?」

 「あれがそうなの?」

 「隣にモモコちゃんも置いたんだけど」

 「あれがそうなの?」


 その話を聞いて知恵ちゃんは初めて、ぬいぐるみの隣にあった毛糸の玉が、知恵ちゃんの家で飼っている犬のモモコの役目を果たしていた事実を知りました。それと同時に、アリサウルスがモモコの10倍以上もある大きい怪獣であることも発覚しました。


 「ちーちゃん。またアリサウルスを置くから、今日の夜も見てね」

 「え……今日も?」


                                  その11の3へ続く


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