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その58の4『予言の話』

 知恵ちゃんと亜理紗ちゃんはロクにケンカもしたことがなく、急に友だちじゃなくなるとは予想もつきません。亜理紗ちゃんの書いた予言が当たる事はないと考え、それは当たったら100ポイントの予言として残しておきました。


 「ちーちゃん。最後の日は、なんって書く?」

 「私も、なさそうなことを書く」


 亜理紗ちゃんと友だちじゃなくなるくらいのことを探してみますが、知恵ちゃんには何も考えつきません。無難に雨が降るなどと、天気予報にあわせた予言を書いてしまいます。


 「……全部、書いた」

 「私も書いた。ちーちゃん。見せて」


 1週間後まで予言を書き終わり、知恵ちゃんと亜理紗ちゃんは書いた予言を見せ合いっこします。どれも偶然にあってもおかしくない内容でしたが、亜理紗ちゃんの書いた7日目だけは実際に起こりそうにありませんでした。


 「このあと……私、宿題やるから。もう今日は帰るよ」

 「私も国語のプリント、100点にするよ!」


 お互いに予言ごっこのポイントがもらえるよう応援しあい、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんの家の玄関を出ました。家に帰って勉強机と向き合い、知恵ちゃんは宿題のプリントを広げました。


 「……」


 算数のプリントに載っている問題は難しくはありませんでしたが、問題の数が30近くあります。亜理紗ちゃんに応援されたのを思い出しながら、知恵ちゃんは教科書を参考にしつつ計算を続けていきます。間違いがないか最終確認をして、プリントは忘れずにランドセルへとしまいました。


 「知恵。ごはん食べるよ」


 部屋の外で、お母さんが呼んでいます。あまりキッチンへは立ち寄っていなかったので、夜ご飯の献立について知恵ちゃんは知りません。前を歩くお母さんの背中へ、知恵ちゃんは何気なく問いかけます。


 「お母さん。今日って、もしかしてカレー?」

 「ハンバーグだけど?」


 お母さんが作ってくれるハンバーグはゴツゴツとして大きく、ひび割れができていて格好はよくありません。レストランで食べるものとは全く違いますが、そんなお母さんの作るハンバーグが知恵ちゃんもお父さんも大好きです。それにフォークをつけたところで、テレビからは天気の週間予報が聞こえてきました。


 一週間後の天気予報は朝に見た時から変化していて、今は晴れのマークが映っています。亜理紗ちゃんが言っていたように、クツ占いのプロが決めているとは知恵ちゃんも思いませんが、天気予報も一週間後まで同じではないのだと改めて知りました。


 次の日、天気予報では雨となっていましたが午前中は曇り空で、ぬれずに登校をすませることができました。学校では桜ちゃんたちに貸した傘も返してもらったので、今日の知恵ちゃんは持参の傘とあわせて2本も用意があります。亜理紗ちゃんは知恵ちゃんにエールを送り、自分の教室へと向かうべく去っていきます。


 「じゃあ、ちーちゃん。がんばってね!」

 「うん」

 「知恵。がんばるって何を?」

 「宿題」

 「宿題、今から頑張ることある?」


 桜ちゃんに頑張り方を尋ねられますが、あとは授業前に見直しをするくらいしかやることはありません。算数の授業は2時限目で、授業の始めに採点の時間がとられました。生徒が1人ずつ順番にプリントの答えを読み上げ、そちらが正解かどうかは先生が判定してくれます。


 「……」


 自信のない問題があったにも関わらず、採点されたプリントの問題は全て正解でした。その結果に自分で少し驚きながらも、亜理紗ちゃんの予言通りに100点がとれたことを喜びつつ、放課後になるのを待ちました。


 「ちーちゃん。お待たせ」


 やや雨が小降りになっている窓の外を見つつ、知恵ちゃんは教室の前で亜理紗ちゃんが来るのを待っていました。やってきた亜理紗ちゃんは元気がなく、震える手で宿題のプリントを取り出します。


 「私、宿題のプリント……95点だった」

 「私は100点だったけど……」

 

 亜理紗ちゃんのプリントには1つだけ丸が足りず、読みの似ている別の漢字を書いてしまったせいで1問だけ不正解になってしまいました。知恵ちゃんの予言を外してしまい、とても申し訳ないといった様子で亜理紗ちゃんは頭を下げます。


 「ちーちゃん……あの」

 「……?」

 「わざとじゃないです……」

 「……うたがってないですが」


                            その58の5へ続く

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