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その47の3『雲の中の話』

 「ちーちゃん。さくピーの家を探そう。これ、レベル2」

 「レベル1はなんなの?」

 「難しさのレベル1は学校」


 雲の遥か下に小さく見えている家々の中から、亜理紗ちゃんは友達である桜ちゃんの家を探し始めます。別の友達である百合ちゃんの家は屋根にカワラが乗っている家なので簡単に見つかり、その近くにある桜ちゃんの家も順を追って見えてきます。桜ちゃんの家が意外と簡単に見つかった為、もっと別のものを探したいと亜理紗ちゃんは考えを巡らせています。


 「……そうだ。ちーちゃん、コンビニ探ししよう」

 「コンビニ探し?」

 「たくさんあるから緑のコンビニは1点で、青色が2点で、黄色のコンビニは珍しいから3点だよ」


 知恵ちゃんたちの住んでいる街は大都会ではありませんが、それなりにコンビニは点在しています。どこにコンビニがあったかを思い出しながら、2人は目の前にある光る棒へつかまって街をのぞいています。


 「あった!」

 「あんなところにあるんだ……コンビニ」


 山の近くに低めの看板が立っていて、そこに緑色のコンビニがあるのを亜理紗ちゃんは見つけます。そことは別の場所に知恵ちゃんは黄色のコンビニを見つけ、青いコンビニが立っている場所も思い出して亜理紗ちゃんに伝えます。


 「アリサちゃん。あれは、コンビニ?」

 「どれ?」


 少し遠めの場所に赤色の看板をつけた建物があり、それを知恵ちゃんは指さしています。亜理紗ちゃんも目をこらしてみますが、看板に書いてある文字は小さくて読めません。その看板の色に見覚えはありませんが、駐車場の広さや建物の大きさからして、それはコンビニらしいことが解ります。


 「なんだ……あの赤いコンビニは」

 「あれ、何点なの?」

 「う~ん……これは、ちーちゃんの勝ち」


 謎の赤いコンビニよりも難易度の高いコンビニは他にないと見て、コンビニ探しは知恵ちゃんの勝ちとなりました。亜理紗ちゃんは次に何を探して遊ぼうかと、うれしそうな表情で街並みを見下ろしています。その隣で、知恵ちゃんは自分たちの乗っている雲へと視線を落しました。


 「……アリサちゃん!小さくなってる!」

 「なにが?」

 「雲が!」


 後ろを振り返ってみると、先程までは見えていなかった雲のはしっこが見えるくらい、乗っている雲が縮んでしまっているのを知りました。それに伴い、徐々に眼下の街並みが近づいてきている事にも亜理紗ちゃんは気づきます。


 「雲が下がってる。お茶のけむりが少なくなったのかな……」

 「アリサちゃん。そろそろ帰ろう」


 知恵ちゃんは亜理紗ちゃんの手を引いて、雲の先が下り坂になっている場所を進みます。そうして移動している内にも、もう雲の高さは家の屋根まで近づいてきています。亜理紗ちゃんの家の庭までは、あと少しです。でも、雲を下っている途中、急に白い雲が上から大量に降ってきて、知恵ちゃんも亜理紗ちゃんも周りが全く見えなくなってしまいました。


 「……?」


 パッと目を開きます。知恵ちゃんは自分の部屋のベッドへ横になって、かけぶとんを抱きしめながら眠っていました。時刻は夕方近くであり、窓の外には真っ赤な太陽が輝いています。


 「……」


 寝ぼけた目をこすりながら、知恵ちゃんは1階のリビングへと降りていきます。夕食の支度をしているお母さんが、知恵ちゃんの姿を見て声をかけました。


 「起きたの?アリサちゃんの家の庭で寝ちゃったから、連れて来たんだよ?」

 「そうだったんだ……」


 それを聞いて、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんと一緒に見た景色が、全て夢だったことを知りました。リビングの窓から空を見上げます。太陽の光が目に入り、残光が輪っかのような形で空に広がります。その中には、もうすぐ消えてしまいそうな散り散りになった雲が、うっすらと浮かんでいました。


                             その48へ続く

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