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その45の2『洞窟の話』

 ブロック塀にあいている洞窟の岩は金属に変わっていて、強く叩いたとしても崩れてきそうな気配はありません。ただ、洞窟の中は今も暗いままで、奥に何があるのかは一目では解りませんでした。


 「ちーちゃん。これならいいんじゃないの?」

 「……ううん。やだ」


 洞窟が安全そうになったので、亜理紗ちゃんは中を探検したくて仕方ありません。でも、やっぱり知恵ちゃんは怖いので、なんとか中に入らない言い訳を考えだします。


 「虫がいるかもしれないから、入ったら危ないかも」

 「でも、いい虫がいるかもしれないし……」

 「いい虫ってなんなの……」

 「ノコギリクワガタ……」


 ノコギリクワガタがいい虫なのかは知恵ちゃんには解りませんでしたが、クワガタがいる洞窟にも入りたくはありません。よって、洞窟のことは忘れて、とにかくナワトビの練習をしようといいます。


 「アリサちゃん。ナワトビやろう」

 「うん……」


 遊んでいる広場の一部はコンクリートで整えられており、そこで2人は玉結びにしていたナワをほどきました。知恵ちゃんは二重跳びが苦手なので、うまく跳ぶコツを亜理紗ちゃんに教えてもらいます。


 「どうやったら、上手に跳べるの?」

 「手を速く動かすよ」

 「ジャンプも高くした方がいいの?」

 「たぶん、ジャンプより回す方が大事なの」


 亜理紗ちゃんいわく、回す手を速くするのが成功の秘訣のようです。それにならって知恵ちゃんは実践してみますが、どうしても足に引っかかってしまって跳べません。目の前では亜理紗ちゃんが、手を交差させる器用な跳び方でナワトビをしています。


 「その技なに?」

 「交差二重跳びスペシャル」

 「アリサちゃん……オリンピックに出れるんじゃないの?」

 「ナワトビのオリンピックなら出たい」

 「あれ、知恵。何してるのかな?」


 二重跳びに苦戦している知恵ちゃんへと、買い物帰りに通りかかったお父さんが声をかけます。小学生用の短いナワを広げながら、知恵ちゃんはお父さんも二重跳びができる子どもだったのかと聞きます。


 「お父さん。二重跳びってできた?」

 「う~ん……できなかったと思う」

 「そう……」

 「……そうだ!ちーちゃんのお父さん!洞窟、見てください!」


 亜理紗ちゃんは洞窟が危険なのか知恵ちゃんのお父さんに見てもらおうと思い、草むらの奥を指さしました。不思議そうな顔をしながら、知恵ちゃんのお父さんは草むらの奥をのぞいてみます。でも、どこにも洞窟は見つかりません。


 「洞窟はなさそうだけど」

 「かくれた。お茶目だ」

 「変なところに入っちゃダメだよ。ケガするかもしれないし」


 お父さんに見つかるのをイヤがって洞窟は隠れたのだと、亜理紗ちゃんは自分で考えて納得しました。変な場所へ入らないようと注意を残し、お父さんは買い物袋を持って家へと帰っていきます。再び、知恵ちゃんと亜理紗ちゃんはナワトビの練習を始めました。


 「あ……今、できそうだった」

 「できそうなの?」


 何度もナワトビを回している内に、知恵ちゃんは段々とコツがつかめてきました。なるべく腕を曲げて、急いでナワトビを回します。あと少しで二重跳びが成功しそうです。それを気にしつつも、亜理紗ちゃんは消えた洞窟の方にも目を向けました。


 「……あ。洞窟が復活した」

 「また出てきたの?」


 知恵ちゃんもナワトビの手を止め、草むらの奥にある洞窟を見つめます。ですが、またしても洞窟は姿を変えていて、知恵ちゃんは怪しむようにして目を細めました。その壁はスポンジみたいに柔らかな素材となっています。洞窟の中も明るく照らされており、通路も2倍ほどの広さに変化しています。


 「……ちーちゃん。これなら入る?」

 「行かない……」


                                 その45の3へ続く

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