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その44の2『たまごの話』

 知恵ちゃんに何を言われようともめげず、亜理紗ちゃんは丸い石を家に持ち帰りました。そのまま2人は亜理紗ちゃんの部屋に集まり、持ち帰ったキレイな石を何に使うのか考えます。


 「何に使えばいいかな?」

 「机に置いておけばいいんじゃないの?」

 「ただ置いておくと、お母さんにいらなそうだと思われちゃう……」


 ただでさえ亜理紗ちゃんの部屋は物が多いので、変なものが持ち帰られていないか、たまにお母さんの視察が入ります。ペットボトルのフタはコレクションしているのを知っているので捨てられませんが、それ以外のものに関しては置いておくと、お母さんに捨てていいかと聞かれてしまいます。


 「そうだ!ちょっと待ってて」


 亜理紗ちゃんは急いで部屋から出ていき、台所の冷蔵庫に入っている卵を持ってきました。丸い石と卵を並べてみると、形はほとんど同じです。それをテーブルの下に隠してシャッフルした後、亜理紗ちゃんは石と卵を知恵ちゃんの前に置いてクイズを出しました。


 「どっちが石だと思う?」

 「こっち……」


 石と卵は形こそ似ていますが、色や質感は全く違うので、どちらが卵なのかは一目瞭然です。悩む事もなく知恵ちゃんは石をつかみ、卵の方はキッチンに戻してくるよう亜理紗ちゃんに言います。


 「これは冷蔵庫に入れとかないと……」

 「うん」


 亜理紗ちゃんは生卵を冷蔵庫へ戻すと、すぐに部屋へと戻ってきました。その後、何か思いついたように勉強机からカラフルなペンを取り出し、どの色がいいか選ぶようにしてテーブルへと並べていきます。どうしたのかと、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんに聞いてみます。


 「なにするの?」

 「石をぬってみる」


 試しにノートを持ってきて、ノートにぬってペンの色を確かめます。あわせて、どんな模様を石に描くかも決めていきます。


 「ピンクのしましまは?」

 「かわいい」


 ピンク色のペンで横しま模様を書いてみます。知恵ちゃんからも可愛いという意見をもらいましたが、石は丸いので真っ直ぐな横線を引くのは難しそうです。そこで、亜理紗ちゃんは次に青色のペンで水玉模様を紙に描いてみます。

 

 「青の水玉」

 「なんか虫の卵っぽい」

 「……そうだ!卵っぽくしよう」


 亜理紗ちゃんは石を生き物の卵っぽくしようと思いつき、どんな模様にするかデザインを始めます。


 「……なんの卵にするの?」

 「うんとね……じゃあ、恐竜」


 なんの卵にするかは決まりましたが、恐竜の卵なんて亜理紗ちゃんも知恵ちゃんも見た事がありません。なので、完全にイメージだけを頼りにして試行錯誤していきます。色々と描いてはみましたが、どうにもしっくりこないので、亜理紗ちゃんは最後の手段を提案しました。


 「きょうりゅうって書いたら、恐竜の卵っぽいかな」

 「ニセモノっぽさがスゴイ……」


 文字で恐竜と書くのは止め、適当に緑色で丸っぽい三角を描いてみました。すると、どことなくではありましたが、恐竜っぽい卵の模様となりました。


 「これ、どう?」

 「よさそう」


 どのような模様にするのか決まり、亜理紗ちゃんは緑色の丸っぽい三角形を丸い石へと描いていきます。亜理紗ちゃんが模様を描き終わった頃には、公園にあったただの石が、どこかオシャレな小物へと変化していました。


 「ちーちゃん。できたよ!」


 完成した恐竜の卵をくしゃくしゃにしたティッシュ紙の上に乗せ、ポンと勉強机の上に飾ってみます。石の見た目は、とても華やかになりました。でも、それなりに存在感があるので、お母さんの目に留まったらどうするかと知恵ちゃんは聞いています。


 「アリサちゃん。これ、何って聞かれたら、なんって言う?」

 「えっと……」


 お母さんに質問されたことを想定し、亜理紗ちゃんは少し目を泳がせながら、小さな声で言いました。


 「……もうちょっとで生まれるから、捨てないでって言う」

 「戻してきなさいって言われそう……」


                              その44の3へ続く


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