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その43の2『夜明けの話』

 その日の夜、知恵ちゃんはご飯を食べながらも、亜理紗ちゃんとしていた朝焼けの話をお父さんにも伝えました。すると、お父さんも明日は仕事がお休みなので、一緒に海を見に行かないかと知恵ちゃんに問いかけました。


 「行ってみようか?」

 「お父さん。いいの?」

 「お父さんも、久しぶりに釣りに行こうかなって」


 知恵ちゃんの家の倉庫には釣り竿などの道具が保管されていて、でもお父さんは忙しいので最近は釣りに出かけていませんでした。そこで、せっかくなので一緒に行って釣りをしようと検討を始めます。お父さんは軽く冗談を言うようにして、お母さんにも海に行かないかと聞きます。


 「お母さんも行く?」

 「私はいいや……知恵。カメラ貸してあげようか?」

 「ほんと?」

 「お母さんは、それをあとで見るね」


 ごはんを食べた後、お父さんは釣り具を用意するために家から出ていきます。お母さんはデジタルカメラを棚の中から取り出して、コンセントに繋いで充電します。こうなってしまうと朝に起きれなかった場合に都合が悪いので、知恵ちゃんは早めにお風呂に入って、いつもより更に早い時間にベッドへと入りました。


 「……」


 暗闇の中、知恵ちゃんが目をさまします。時計に表示されている時刻は4時であり、家から海までは車で移動すると数分で到着します。やや早めではありましたが、知恵ちゃんは寝巻きから着替えて、下の階へと降りていきました。リビングではお父さんがテレビを見ており、天気予報では今日の天気は晴れと言っています。


 「おはよう。コンビニで、ご飯を買っていこうか」

 「うん」


 知恵ちゃんは眠そうな顔をしながらもカメラをバッグに入れて、歯みがきなどを済ませてからお父さんと一緒に家を出ました。隣の家でも車のエンジンがかかっていて、ちょうど亜理紗ちゃんと亜理紗ちゃんのお父さんも家を出るところでした。

 

 「ちーちゃんも行くの?」

 「うん。アリサちゃん、起きれたんだ?」

 「起こしてもらった」


 やや急いで準備をしたせいか、亜理紗ちゃんは寝ぐせで髪がはねていて、いつもと少し違う髪型をしています。知恵ちゃんのお父さんと亜理紗ちゃんのお父さんも、どこへ向かうのかとお話をしています。


 「そちらは、どこに行きます?」

 「釣りに行くので、フェリーふ頭の方へ」

 「そっちで合流しますか」


 お話の末、別々の車では出かけはしますが、同じ場所で落ち合うことに決まりました。亜理紗ちゃんの家の車が先に出かけていき、それを追って知恵ちゃんの家の車も出発します。信号機につかまって前の車が見えなくなったりはしましたが、どちらの車も同じコンビニの駐車場に停まります。


 「知恵。おにぎり2個、食べる?」

 「1個でいいよ」

 「ジュースは?」

 「おちゃちゃを買う」


 朝なので大して食欲がなく、知恵ちゃんはおにぎりと1個と、ペットボトルのお茶をお父さんに買ってもらいます。亜理紗ちゃんはパンを2つとジュースを買ってもらっていて、とても朝から元気です。買い物を終え、また車は追いかけっこをするようにして海へと向かいます。


 「……あれ?どこ行くの?」

 「ちょっと寄り道」


 途中、知恵ちゃんのお父さんが運転する車は亜理紗ちゃんの家の車から離れ、別の道へと入っていきました。スーパーマーケットの近くにある釣具店の前に車を止め、知恵ちゃんのお父さんはお店の前に置いてある自動販売機へお金を入れます。その見慣れない自動販売機を見て、知恵ちゃんは何を買うのかお父さんに尋ねます。


 「何を買うの?」

 「釣りにエサを使うからね」

 「……?」

 「お父さん。虫を買うんだ」


 自動販売機から出てきたものを手に取りながら、お父さんは買ったものの正体を明らかにしました。虫を売っている自動販売機があるのを知ってビックリしたと同時に、お父さんが虫を買った事実に知恵ちゃんは少したじろぎました。


                                 その43の3へ続く

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