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その43の1『夜明けの話』

 「アリサちゃん。なにしてるの?」

 「お空が真っ赤になってる」


 学校が終わって帰宅した後、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんの部屋へと遊びに来ていました。今日は組み立てたブロックを壊さないように引き抜いていくオモチャで遊んでいて、珍しく亜理紗ちゃんが一度も勝てず、ちょっと悔しそうにしている日でした。もう窓の外は夕日に染められて赤くなっており、真っ赤な太陽は山の向こうへと消えていきます。


 「ちーちゃん。私はね。赤い太陽は好き」

 「私は、ちょっと好きじゃないけど」

 「なんで?」

 「見てたらさみしい気持ちになるの……」


 夕暮れになると亜理紗ちゃんが帰ってしまうので、知恵ちゃんは真っ赤な太陽が好きではありません。2人で目を細めながら、まぶしく輝く太陽が下がっていくのを見つめています。そうしている内にも亜理紗ちゃんは、消えゆく太陽の行き先に疑問を抱きました。


 「……太陽は、山の中に帰るの?」

 「太陽に帰らない思うけど……」

 「朝になったら、山から出てくるのかな?逆に」

 「……え?」


 亜理紗ちゃんに言われて初めて、知恵ちゃんも太陽が出てくる場所について考え込んでしまいます。朝に起きた時には既に太陽は昇っているので、出てくるところを一度も見た事がありません。教科書を開いてみても、詳しいことは解りませんでした。そうして2人が太陽について調べていると、知恵ちゃんのお母さんが部屋にやってきました。


 「アリサちゃん。そろそろ、帰る時間になるよ」

 「あ、ちーちゃんのお母さん。あの。太陽って、どこから出てくるんですか」

 「え?」


 家に帰る時間を伝えに来たお母さんに、亜理紗ちゃんは太陽の出どころを聞いています。知恵ちゃんのお母さんは窓の外にある太陽を見つめ、それとは逆の方角を指さしながら答えました。

 

 「沈むのが山の方だから、あっちじゃない?」

 「あっち……海だ!」


 知恵ちゃんのお母さんが指をさした方角には海があり、それに気づいた亜理紗ちゃんは納得したように表情を明るくしました。でも、すぐに別の問題が浮かび上がり、小声で知恵ちゃんに相談します。


 「山に入っていくのに、なんで海から出てくるの?」

 「……それは、私も解らない」

 「海に太陽が入ったら、海が熱くなるかもしれない……魚も焼けちゃう」

 「……山は燃えないのに?」


 解らない2人で話し合っても、よく解らない話が続く他ありません。そこで、知恵ちゃんのお母さんは実際に起きて見てみればいいのではないかと教えてあげます。


 「起きてみればいいんじゃないの?明日、お休みだから」

 「えっと……お母さん。朝って、何時?」

 「5時くらい」

 「……アリサちゃん。起きれる?」

 「……」


 日の出の時間が想像した以上に早かったのか、亜理紗ちゃんは山の向こうへ半分ほど沈んでいる太陽を残念そうに見つめています。でも、意を決したといった面持ちで知恵ちゃんに言いました。


 「……私、起きてみる」

 「無理そうなら、私が見ておくけど……」

 「私も見たいから起きるよ」


 知恵ちゃんは亜理紗ちゃんが朝に弱いことを知っているので、本当に起きられるのか半信半疑です。知恵ちゃんのお母さんは知恵ちゃんについても本当に起きられるのか、ちょっと解らないというふうに笑っています。それを見て、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんに明日の予定を伝えました。


 「私、海から太陽が出てくるのを見に行く。お父さんにお願いする」

 「私は窓から見るだけでいいけど……」

 「じゃあ、太陽で焼けた魚を持ってくるから、ちーちゃんにも半分あげる」

 「アリサちゃん……魚も取りに行くんだ」



                             その43の2へ続く

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