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その41の3『プリンターの話』

 亜理紗ちゃんはバケツの中から雪まんじゅうを取り出し、また中に雪を入れなおしたあと、バケツを逆さにして地面に置きました。数秒してからバケツを持ち上げると、そこには再び雪まんじゅうが入っていました。


 「魔法のバケツだ。じゃんじゃん雪まんじゅうができる!」

 「アリサちゃん。もう1回やって!」


 バケツに入れると雪まんじゅうが作れることを発見し、知恵ちゃんは雪まんじゅうのアンコールをお願いします。たくさん雪を入れたら、もっとたくさん作れるのではないかと考え、亜理紗ちゃんは先程よりも多めに雪を入れてバケツを逆さに置きました。


 「……そろそろ開けていいかな」


 頃合いを見て、亜理紗ちゃんがバケツを持ち上げます。中には雪まんじゅうが6個も入っており、知恵ちゃんと亜理紗ちゃんは更に作りたい気持ちが増します。そんな中、知恵ちゃんはお願いすれば、別のものも作れるのではないかと提案しました。


 「もしかして、他のもできる?」

 「やってみるね……むむ」


 亜理紗ちゃんは再びバケツに雪を入れて閉め、念じるように声を出します。それから、ゆっくりとバケツを持ち上げました。知恵ちゃんは中にあるものを見ても正体が解らず、それがなんなのか亜理紗ちゃんに質問します。


 「これはなに?」

 「サッカーボールマン」

 「さっきと違う……あっ」


 亜理紗ちゃんが自分で作ったものと比べて、バケツが作ったサッカーボールマンは造形がキレイでカッコいい出来栄えです。そんなサッカーボールマンを知恵ちゃんが見つめていると、触ってもいないのにグラグラと動き出しました。


 「……アリサちゃん。逃げようとしてるんだけど」

 「あ……逃げちゃう!」


 突然、サッカーボールマンが前を向き、ジャンプしながら逃げ出そうとします。亜理紗ちゃんはバケツをかぶせて、サッカーボールマンを封印しました。バケツの中のサッカーボールマンは暴れている様子もなく、押さえている亜理紗ちゃんも、まだ中に残っているのか疑っています。


 「……ちーちゃん。まだいるのかな?」

 「あけてみる?」


 サッカーボールマンの気配を感じられず、本当に中にいるのか確かめてみることにしました。亜理紗ちゃんがバケツを少しだけ持ち上げます。知恵ちゃんが下からのぞいてみます。すると、中からのぞき返しているサッカーボールマンと目が合いました。すぐに知恵ちゃんは、それを亜理紗ちゃんに教えます。


 「いる!」

 「いたか」


 亜理紗ちゃんはバケツを下ろして、またサッカーボールマンを封印しました。サッカーボールマンがいてはバケツで遊べないので、どうにかして元の世界に戻そうと考えます知恵ちゃんは別のものを作ってみたら、サッカーボールマンがいなくなるのではないかと思いつきました。


 「アリサちゃん。雪のプリン、作ってちょうだい」

 「いいよ。むむ……」


 亜理紗ちゃんはプリンの形を想像しながら、サッカーボールマンの入っているバケツに力を込めます。どことない手ごたえを感じ、亜理紗ちゃんはバケツに両手をかけました。


 「あけるよ」

 「うん」


 うなづいてみせる知恵ちゃんの顔を見て、亜理紗ちゃんはバケツを持ち上げました。バケツの中からは2体のサッカーボールマンが知恵ちゃんを見つめており、すぐに知恵ちゃんはバケツを下ろすよう亜理紗ちゃんに手で合図を送りました。


 「アリサちゃん。増えたんだけど」

 「ごめん。今、ちょっとサッカーボールマンのこと考えてた……」


                                  その41の4へ続く


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