その40の2『怖かった話』
学校に到着して、知恵ちゃんと亜理紗ちゃんは玄関でクツをはきかえます。亜理紗ちゃんは怖い話を思い出したせいでトイレに行きたくなったようで、ろうかの途中で知恵ちゃんと別れました。
「おはよう。知恵ちゃん」
知恵ちゃんが教室に入ってランドセルを降ろしていると、そこへ百合ちゃんがやってきてアイサツながらに声をかけました。まだ桜ちゃんは学校に来ておらず、何かあったのかと知恵ちゃんは百合ちゃんに聞いています。
「あれ……桜ちゃん、まだなんだ」
「ねぼうしたから遅れるって」
「珍しい……」
いつも同じ時間登校している百合ちゃんと桜ちゃんですが、今日は桜ちゃんが寝坊したので百合ちゃんだけが先に学校へ来ています。桜ちゃんが朝に起きれないのを珍しく思い、亜理紗ちゃんと同じように怖くて眠れなかったのではないかと知恵ちゃんは考えました。
「桜ちゃんって、夜に眠れなかったりすることあるの?」
「桜ちゃんはテレビ見たいから、寝るの遅いんだよ」
「あ、そうなんだ」
夜の10時あたりにも面白いドラマやバラエティ番組を放送している場合があるので、桜ちゃんは少しだけ見て寝ようと頑張って夜更かしをしてしまいます。そうして噂をしていると、桜ちゃんが急いだ様子で教室へとやってきました。
「百合。ごめん。遅れた」
「どんまいどんまい」
「家に迎えにきてくれたのに、ごめんね」
寝坊をした割には遅刻ギリギリという訳でもなく、桜ちゃんは時間に余裕をもって登校しました。しかし、髪型や息は乱れているのが見て解るほどで、家から走ってきたことについては聞かずとも姿が物語っています。
「知恵。おはよう」
「おはよう。どうしたの?」
「夜、テレビの映画を見て、それで寝坊した……」
もしかしてと考え、桜ちゃんの見ていた映画を知恵ちゃんは当ててみます。
「殺人の映画?」
「殺人の映画ってなんなんだ……お医者さんの映画だよ。夜にやってたんだ」
亜理紗ちゃんの見ていたものが知恵ちゃんの想像とは全く違うものだったので、亜理紗ちゃんが殺人事件の映画だと思った理由を知恵ちゃんは探し始めます。でも、病気で倒れたシーンを死んでしまったシーンと勘違いしたまま、亜理紗ちゃんがベッドで眠りについたのは想像に難しくありませんでした。
「映画の人……死にそうだった人、助かった?」
「私も最後まで見てない……最初だけ見て録画したから。でも、助かるよ。お医者さん、カッコよかっただし」
「え~、カッコいいと助かるの?」
「カッコよくないとダメだから、絶対に助かるよ」
百合ちゃんはカッコよさと手術の成功率について関係性を疑っていますが、映画なので主役がカッコよければ助かると桜ちゃんはお約束で語っています。桜ちゃんの話を聞いている限りでは全く怖い映画ではなかったようでしたので、それを学校からの帰り道で知恵ちゃんは亜理紗ちゃんに伝えました。
「あれ、助かるって」
「助かるんだ!だったら、怖がんなくてもよかったな」
亜理紗ちゃんも桜ちゃんと同じところまでしか映画を見ておらず、病気で倒れた人が苦しそうにしている場面で怖くなって見るのをやめてしまったようでした。これで今夜は亜理紗ちゃんも、ゆっくりと眠ることができます。
「……?」
「どうしたの?ちーちゃん」
家の近くまで辿り着いたところで、知恵ちゃんは近所の家に停まっている車の下へと目を向けました。亜理紗ちゃんも一緒に車の下をのぞきますが、特に異変はありません。
「……なにかいた?」
「……気のせいかも」
何もいない場所に何かを感じつつも、知恵ちゃんは自分の家へと帰りました。
その40の3へ続く






