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番外編の3『ちーちゃんクエスト(海と空と大地のケモノたち)』

 「着いたー!」


 大して能力も上がらないまま、知恵ちゃんたちは大きな城の前に到着しました。到着宣言も束の間、すかさず亜理紗ちゃんが城の大きなドアを押して開きます。


 「百合ちゃん、いるー?」

 「あっ、アリサちゃん」


 城の中には一室しかなく、そこは知恵ちゃんの部屋と瓜二つの場所でした。百合ちゃんと亜理紗ちゃん、桜ちゃんがハイタッチをしている中、知恵ちゃんは部屋のテーブルに乗っているネコの姿を気にしています。


 「百合ちゃん……そちらのネコさんは?」

 「こちら、魔王さんなんだけど」

 「魔王なの?」


 テーブルの上のクッションに乗っているネコは、見れば見る程にふてぶてしい顔をしており、じっとしてピクリとも動きません。そのネコを百合ちゃんが撫でてあげるのですが、ネコは顔をしかめるばかりです。桜ちゃんはネコの前にしゃがみ込みながら、どうしてくれようかと百合ちゃんに相談します。


 「それで、どうするの?」

 「どうしたらネコさんが満足するか考えてるの」

 「……何が不満なんだろう」


 ゴワゴワとした毛並みを桜ちゃんもなでてみますが、ネコはうんともすんともいいません。桜ちゃんは口なおしにと百合ちゃんの頭をなでます。そちらの方が手触りがいいので、ネコについては早々に諦めました。


 「百合。もう帰ろっか?」

 「ダメだよ~」

 「さわるところが悪いんじゃないの?」


 そう言って、亜理紗ちゃんがネコのアゴをなでてみます。でも、特に反応はありません。そこで今度は尻尾を触ってみるのですが、それはイヤだったのか尻尾で手を叩かれました。


 「攻撃された。1ダメージだ」

 「はい。ばんそうこう」

 「ありがとう。さくピー」


 桜ちゃんにもらったばんそうこうをポケットにしまいながら、亜理紗ちゃんは次の作戦を考え始めます。ネコが何を不満に思っているのか考えた末、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんの勉強机に乗っているリボンを手に取りました。


 「ちーちゃん。これ、借りていい?」

 「いいけど……」


 借りたリボンをのばして、亜理紗ちゃんはネコの体に乗せてあげます。少しオシャレになりましたが、ネコは満足してくれません。今度は桜ちゃんが知恵ちゃんの勉強机に乗っているブラシを手に取ります。


 「知恵。ブラシかりていい?」

 「いいけども……なんで私の机にブラシが」


 買った記憶もないブラシを桜ちゃんに貸し出し、桜ちゃんはネコ用ブラシで毛をなでてあげます。やや体をのばして気持ちよさそうにはしますが、まだまだネコは心を開きません。そこで、百合ちゃんは知恵ちゃんが持っているドッグフードを見つけます。


 「知恵ちゃん。それは?」

 「ドッグフード」

 「キャットフードは持ってる?」

 「持ってないけど」


 そんな2人の会話を聞いて、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんの勉強机にあったネコ缶を手にしました。


 「ちーちゃん。ネコ缶もらっていい?」

 「なんで私の机にネコ缶が……」

 「お皿も借りるね」

 「お皿まで……」


 ネコ缶を開けて皿に開け、ネコの前に置いてあげます。ネコは匂いをかぎ始め、それが食べていいものだと解ると口をつけました。一生懸命にご飯を食べているネコを見て、桜ちゃんは腕を組みながら話をまとめました。


 「お腹がすいてたんだね。これで世界は救われた」

 「救われたんだ……」


 いまいち納得がいっていない知恵ちゃんに構わず、世界は時空を歪ませるようにして景色を薄れさせていきます。特に何もしないまま世界が救われたことに知恵ちゃんが戸惑っていると、耳元で亜理紗ちゃんのささやく声が聞こえました。


 「ちーちゃん……」

 「……」

 「ちーちゃん。起きた?」

 「……うん?」


 気づけば、そこは知恵ちゃんの部屋のベッドで、隣には亜理紗ちゃんが寝転んでいます。亜理紗ちゃんは手元のゲームの画面を見せながら、目覚めたばかりの知恵ちゃんに報告します。


 「ニャッス、つかまえたよ」

 「……ほんとだ」


 ゲームの画面にはネコのキャラクターが映っており、仲間になったというメッセージも表示されています。それを見て知恵ちゃんは、亜理紗ちゃんがネコのキャラクターを仲間にしようと頑張っているのを見ている内に、自分が眠ってしまったことを思い出しました。

 

 「ちーちゃん。寝言でなんか言ってたけど、夢?」

 「……なんって言ってたの?」

 「なんなの……って何回も言ってたけど」


 知恵ちゃんが『なんなの?』というのは日常茶飯事なので、それに関して知恵ちゃんも亜理紗ちゃんも思うところはありません。でも、どんな夢だったのかは気になるので、亜理紗ちゃんは夢の内容を知恵ちゃんに尋ねました。


 「どんな夢?」

 「……う~ん」

 「……?」


 知恵ちゃんは、さっきまで見ていた夢を思い出そうとします。ですが、何一つ思い出せず、ポツリとつぶやきました。


 「……よくおぼえてない」 


                                  その39に続く



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