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その38の2『水槽の話』

 「問3の答え、中田さん。答えてください」


 算数の授業が始まり、ドア側の席から順に先生がプリントの答えをたずねています。この調子なら知恵ちゃんまで回答の順番はこないので、知恵ちゃんは安心した気持ちで答え合わせをしています。結果、プリントの正解率が8割を超えていた為、それなりに納得した様子で知恵ちゃんは授業を終えました。


 「ねえ、知恵ちゃん……水飲み場に行かない?」

 「いいけど」

 「ありがとう」


 休み時間、百合ちゃんと知恵ちゃんは2人で教室を出て、水道のある場所までやってきました。その途中の通路には大きな水槽があって、水槽の大きさにあわせて大きくなった金魚が、緑がかった水の中に収まっています。そのお魚の存在感が非常に大きいせいで、百合ちゃんは1人で水を飲みに行くのが怖いのです。


 「お待たせ、知恵ちゃん」

 「うん」


 お手洗いに入った百合ちゃんを待ちながら、知恵ちゃんは水槽の中を泳いでいる金魚を見つめていました。金魚は水草の裏に隠れていて、ぷくぷくにふくらんだ顔だけを見えるように出しています。知恵ちゃんはお魚を怖いとは思っていないので、お魚のどこが怖いのか百合ちゃんに聞いています。


 「百合ちゃん。お魚がキライなの?」

 「キライじゃないけど、目が怖いの……」

 「じゃあ、焼いたお魚は?」

 「それは好き」


 焼かれたお魚は目が白いので、百合ちゃんでも怖くありません。その日の給食の献立は焼いたシャケの切り身で、目や頭はさておき、骨すらも入ってはおりませんでした。知恵ちゃんはお魚の皮も好きなので、食べ終えたお皿には何一つとして残りませんでした。


 「雨……全然、やまないみたいだね」


 桜ちゃんがホウキでゴミを集めながら、窓の外の雨音に耳を澄ましています。午後の掃除の時間になっても、降り続く雨はやむ気配を見せません。窓から見える地面には大きな水たまりができあがっていて、水たまりと水たまりが広がって繋がり、大きな池のようになっています。結局、放課後になるまで雨模様は崩れませんでした。


 「知恵。気をつけて帰ってね」

 「うん」

 「知恵ちゃん。またね~」


 授業が全て終わり、桜ちゃんと百合ちゃんが先に家へと帰ります。それから少しして、亜理紗ちゃんが知恵ちゃんを探して教室へとやってきました。


 「ちーちゃん。帰ろう」

 「うん」


 今日は部活動なども行われておらず、多くの生徒は帰り道が雨で酷くなる前に学校を出ています。学校の前の水たまりも大きくなっていて、長くつをはいていてもクツの中に水が入ってくるほどです。傘をさしていては並んで歩けないので、今日の2人は前後に並んで歩道を歩きます。


 「ちーちゃん。見て、これ」


 下校途中、亜理紗ちゃんは道すがらに見つけたバケツを指さしました。朝には空っぽだったバケツが、今は雨の水でいっぱいになっています。それだけ雨が降ったのだと解り、亜理紗ちゃんは空を見上げながら続けて言います。


 「このままだと、明日は街が水でいっぱいになってるかも」

 「そしたら、家も沈むから困るけど」

 「それは困る……」


 家が沈んでしまうと困るので、それについて亜理紗ちゃんが解決策を出しました。


 「車に乗ってれば、浮くから助かるかもしれない」

 「たぶん、車も沈むと思うけど……」


                                その38の3へ続く


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