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その35の2『ホットケーキの話』

 あらゆるホットケーキのお話を聞いて期待を高めつつも、家でホットケーキが待っていると解れば学校の授業にも身が入ります。今日の給食のデザートはフルーツポンチなのですが、他の人のお皿よりさくらんぼが少なくても文句はありません。知恵ちゃんは普段にも増していい子にしながら、放課後になるのを待っていました。


 「ちーちゃん。帰ろう」


 クラスメイトの桜ちゃんと百合ちゃんが先に帰り、ちょっとして亜理紗ちゃんが図書室へと知恵ちゃんを迎えに来ました。図書室の本棚には料理の作り方という本が何冊も置いてありましたが、ホットケーキの作り方を書いてある本は見つかりませんでした。


 亜理紗ちゃんと知恵ちゃんは図書室を出て、下駄箱の前で靴を履き替え家へと帰ります。朝にホットケーキの話題が出たせいか、亜理紗ちゃんもホットケーキが食べたくなってしまいます。


 「私も、お母さんにお願いしよう」

 「材料あるの?」

 「いつもある」

 「いいなあ」


 いつでもホットケーキを作れる環境に知恵ちゃんが憧れていると、亜理紗ちゃんはテレビで見たホットケーキの映像を思い出しました。


 「ちーちゃん。もこもこのホットケーキ知ってる?」

 「もこもこ?」

 「もこもこしている」

 「どんなホットケーキなの……」


 焼く時に空気を含んで、ふわふわに膨らんだホットケーキを亜理紗ちゃんはテレビでは見たものの、実際に2人の家の近くで作ってくれるお店はありません。なので、テレビですら見た事がない知恵ちゃんは羊みたいな姿をしたホットケーキを想像していました。


 「じゃあね。ちーちゃん」

 「うん」


 亜理紗ちゃんと家の前で別れて、知恵ちゃんはリビングにいるお母さんに帰宅を報せます。台所に立っているお母さんは白い色のフライパンを持っており、その見慣れない調理器具に知恵ちゃんも物珍しそうな顔をしています。

 

 「お母さん。それでホットケーキ作るの?」

 「うん。あとで亜理紗ちゃん来ると思うから、先に手洗いとかしてきなさい」

 「そうなの?」

 「亜理紗ちゃんのお母さん、いいって言ってたから」


 亜理紗ちゃんが来ると知り、知恵ちゃんは2階にある自分の部屋へとランドセルを置きに行きます。1階へ戻ってくると家のインターホンが鳴り、お母さんが玄関へと出迎えに行きます。亜理紗ちゃんが来たのだろうと考え、知恵ちゃんも一緒に迎えに出ました。


 「こんにちは!」

 「いらっしゃい。知恵と手を洗って、ご飯を食べる部屋に来てね」


 亜理紗ちゃんと知恵ちゃんは洗面所で手あらいをして、小走りで廊下を通りリビングへと入ります。もうホットケーキのもとはボウルの中に出来上がっていて、あとはおたまですくって焼くだけです。お母さんは白いフライパンを火で熱しているところでした。


 犬のモモコは先におやつをもらっており、ささみの巻いてあるガムを前足で押さえながら一生懸命に噛んでいます。テーブルの上にはハチミツやジャム、バターなど、考え付く限りのトッピングが並べられ、知恵ちゃんはカラフルなチョコスプレーに興味津々です。


 「そうそう、知恵。ミントのホットケーキ作れるんだけど、それにする?」

 「ミント?」

 「青いホットケーキ」

 「青?や……いい」


 焼き始める前に青いホットケーキを提案されますが、知恵ちゃんは頭の中で青いホットケーキを思い描くより早くお断りしました。


 「じゃあ、焼いていくから、ここのお皿、持って行ってね」

 「うん」


 知恵ちゃんがお皿を持って行き、自分と亜理紗ちゃんと、お母さんの分の3枚をテーブルに並べます。お母さんはおたまですくったホットケーキのもとを高い所から、ゆっくりとフライパンへ落とします。キレイな丸になった生のホットケーキを見つめながら、お母さんは知恵ちゃんと亜理紗ちゃんに言いました。


 「あ。今日は1人、2枚までね」

 「え……」

 

 ホットケーキは1人2枚、そう聞いて知恵ちゃんはテーブルの上のトッピングを物欲しそうにながめます。それから、お母さんへとお願いしました。


 「3枚くらい食べれるのに……」

 「だって……夜ご飯、食べれなくなるでしょ?」

 「夜ご飯も、ちゃんと食べるから……」

 「そういう問題じゃないの……」


                                  その35の3へ続く


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