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その35の1『ホットケーキの話』

 「知恵、フライパン新しくしたから、今日はホットケーキ焼くね」

 「なんで?」

 「試し焼き」


 学校から帰ってきたらホットケーキを焼くと、知恵ちゃんのお母さんが登校前の知恵ちゃんに言います。どうしてホットケーキを焼くのかと理由を尋ねると、それは新しいフライパンでピカピカのホットケーキを焼けるか試すためでした。


 知恵ちゃんの家のフライパンは使い込まれているせいで、ホットケーキを焼くと少し焦げついていたり、焼き目が月の表面のようになっていたりします。なので、知恵ちゃんはお店のディスプレイに飾られているホットケーキと、家で焼くホットケーキは別の食べ物だと考えていました。


 「おはよう、ちーちゃん」

 「おはよう」


 いつものように亜理紗ちゃんが知恵ちゃんを家へと迎えに来て、2人で一緒に学校へと歩き出します。帰宅してからのホットケーキを楽しみにしている知恵ちゃんは、どんな味にして食べるのが好きなのか亜理紗ちゃんと話をしています。


 「うち、学校が終わったらホットケーキ焼くんだ」

 「へえ。いいじゃん」

 「亜理紗ちゃん、何をぬるのが好き?」

 「はちみつ。ちーちゃんは?」

 「マーマレード」

 「なにそれ?」


 何かと聞かれれば、知恵ちゃんもマーマレードがなんなのかは解りません。しかし、きっとミカンのジャムだろうと推測し、そう亜理紗ちゃんに教えました。


 「オレンジのジャム」

 「じゃあ、オレンジジャムなんじゃないの」

 「確かに……」


 なぜオレンジのジャムだけマーマレードというのか疑問に思いつつ、知恵ちゃんは学校に着くまで亜理紗ちゃんとホットケーキの話をしていました。亜理紗ちゃんと別れてクラスへ行ってからも、桜ちゃんや百合ちゃんとも自然とホットケーキの話題になりました。桜ちゃんが百合ちゃんとホットケーキを焼いた日のことを思い出しています。


 「百合が家に来た時、ホットケーキパーティしたね」

 「うん。したした」

 「ホットケーキパーティって?」

 「うちにタコ焼き機があってね」

 「うん?」


 ホットケーキパーティについて尋ねたはずが、急にタコ焼きの話になってしまい、知恵ちゃんは動揺を隠せません。そんな知恵ちゃんの様子に気がついて、すぐに桜ちゃんが説明を付け加えます。


 「タコ焼き機で丸いホットケーキを焼いてね。中に好きなものを入れるんだ。チーズとか」

 「ジャムとかね~」

 「あぁ……そうなんだ」


 タコ焼き機で焼いたケーキがホットケーキなのか知恵ちゃんは悩んでいますが、それはそれで楽しそうなのでマネをしてみたい気持ちでいっぱいです。ただし、今日はフライパンの試し焼きを目的としているので、ホットケーキパーティはできません。そもそも、知恵ちゃんの家にタコ焼き器はないので、それを準備しないと丸いホットケーキは作れません。


 「今度やる時、私も呼んでほしい……」

 「そうだねぇ。今度は家に知恵も呼ぼう」

 「あ……でも」


 ホットケーキパーティをした記憶の中から1つ思い出し、百合ちゃんは知恵ちゃんに補足事項をつけ加えました。


 「桜ちゃん、ひっくり返すのが上手くないから、くちゃくちゃになるんだ~」

 「まあ、そうなんだけど……でも、いいよね。焼けてれば」

 「そういうものなの?知恵ちゃん」

 「大丈夫。焼けてればいい。最悪、丸くなくてもいい」


                                 その35の2へ続く

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