死合
先週ドタバタしてしまいましたので投稿できませんでしたすみません。
なので今週2話まとめて更新します。
僕がその音に気がついたのは偶然だった。
カカカッとこ気味良く響くその音源を僕は見た。
「女の人?てか、あれ戦ってない?」
助けに入ろうと考えるも手元にはこの世界に来た時に握っていた日本刀しかない。騎馬を止めるのは無理だ。
「ドードンさん!誰かこの村に逃げ込んで来ます!弓か槍をください!」
「お前さん刀以外も使えるのか!?」
「弓は殆ど経験がありませんけど、槍なら投げる方でもある程度は自信があります!」
「待ってろ!直ぐに、ってティファナ様じゃねぇか!」
「それ誰です!?」
「この国のお姫様だ!後ろの連中の足を鈍らせてくれ!俺が弓で仕留める!」
「無茶を言いますね・・・。」
鍔に挿している小刀を抜いた。
「さて、馬を狙うか。」
小刀を投擲する。狙いは馬の目。小刀じゃ、馬を仕留めるのは難しいだが、目を狙われれば動物は本能的に回避行動を取る。
俺が投げつけた小刀を避けるために馬は嘶きを上げて上体を反らす。
「凄い、あれで落馬しないなんて。どんなバランス感覚してるんだよ。」
と、感心してる場合じゃないな。
だが、追っ手の三人の動きがそれで止まった。逃げていたお姫様は矢を放って戦闘の敵の馬を射殺した。
「人は僕が殺ります!馬を頼みます!」
「任せろ!姫様!村の中へお早く!」
村の中からドードンさんが数人連れて出てきた。
「早く行って!邪魔になる!」
「なんだと!?お前一人でカルキスを三人も相手に出来るわけがない!」
「見ててください!」
ドードンさん達も弓矢で馬を狙ってくれたから敵は馬を捨てて僕を囲んだ。
「へぇ、悪くない動きだな。」
正面に二人、背後に一人。全員が剣を抜いていた。ごく一般的な西洋剣、ショートソードだ。
正面右に居た奴が斬りかかってきたので受けて鍔迫り合いに持ち込むと、背後の一人ともう一人がほぼ同時に走り出した。
「成る程、新撰組と同じ戦い方か。」
一人を囲んで数人で斬りかかかる。幕末の剣豪相手に新撰組が死傷者を減らすために選んだ集団戦法の一つに彼等の動きは酷似していた。
「まぁ、今回は相手が悪かったね。」
手首を返して体の右下に敵の剣を流し、そのまま相手の腕の上に僕の腕を重ねるこれで最初に斬りかかってきた相手の喉元ががら空きになり、僕は日本刀でそこを引き斬った。
「一人。」
左手で倒れる前の死体から剣を奪って体を密着させたままクルリと背中あわせになるように体の位置を入れ替える。これで背後から向かって来ていた相手に対して僕は肉の盾を用意した事になる。
二人目は腰のあたりに剣を構えて突きに来ていたから右手の日本刀で左下に捌いて左手の剣を相手の喉仏の辺りに突き入れる。
「二人。」
三人目はその光景を目にして驚きと戸惑いを隠せない表情をしながら足を止めていた。
「来ないのかい?」
僕は青眼に構えてそう呼びかけた。
終始無言で動いていた敵は突然雄叫びを上げて上段から切り掛かってきた。
「気合は十分。ただ、斬りかかるには間合いが遠すぎるだろう。」
ギリギリまで引きつけて足捌きで敵の左脇を通り抜け、その間に胴を薙いだ。剣道で言う所の『面抜き胴』だ。
「三人。」
二、三歩離れた位置で倒れた三人目を尻目に僕はそう呟いた。
刀身を見れば刃こぼれが全くない。骨に当てず肉と臓腑のみを斬っていた自信があるとは言え、斬撃を受けたのに刃こぼれがない。
「こいつ、とんでもない業物だ。」
あまりに常識外れな日本刀に僕は驚愕していた。本当は良質な玉鋼に元の世界にはないある生物の特殊な素材を用いてあった為の性能なのだが、それを鑑人が知るのは後にドワーフの知り合いができた後になる。