異世界に行った僕と、少女の夢
初投稿になります。
面白いと思ってもらえる物を作れるように頑張ります。
初めまして。僕の名前は太刀花鑑人。日本人、だった。
過去形になった理由は、今の僕は明らかに日本ではなく、明らかに現代でも無い世界に居るからだ。
多分その理由には心当たりがあるんだけど、帰り方が分からないから困ってる。
原因となったのは家の蔵にあった鞘に妙な意匠がされていた日本刀だ。それに触れてからの記憶が無い。刀に触れた後の記憶はこの見知らぬ世界での記憶だった。
「アキト、手が止まってるぞ。腰が痛くなったかー!」
「いいえー!ちょっと喉が渇いたなーって思ってただけですー!」
「そうだなー!そろそろ昼だし、あと一畝終わったら飯にするぞー。」
「はーい!」
今僕が話してるのはこっちに来てからお世話になっているドードンさん。
会話の内容からも想像できると思うけど、農家だ。
刀を持って行き倒れてた僕を助けてくれるくらいのお人好しか、考え無しの人だ。けど、僕はそんなドードンさんのおかげで助かったからこうしてドードンさんの為になるようにと畑仕事を手伝っている。
ドードンさんに聞いた話では今居る国の名前はフォルネア皇国。皇王アーネルデウス四世・・・だったはず。
曖昧なのはぶっちゃけ関係無いと思ってるからだ。少なくとも今は。とりあえず、ドードンさんの愛娘のキャシーちゃんが作ってくれた昼飯の弁当が今いちばんの関心事だ。
キャシーちゃんの料理は、割と美味い不味いにだけはうるさいはずだった僕も一口で黙らされた程美味い。料理の腕で嫁を選ぶなら暫定一位である!てか、娘の事となると張飛級のドードンさんさえ居なければぶっちぎりの一位なんだけど・・・。
あ、今ので僕が嫁さんを選ぶ基準の一番批准の大きなところを自分で暴露してしまったか。
そんな事はどうでも良い。どうにか元の世界に帰れるのだろうか?
うん、それでもやっぱりキャシーちゃんの料理は美味い。
少女は夢を見ていた。
少女は夢の中で戦っていた。相手は自分よりも強いとぼんやりと分かっていた。それでも少女は戦った。何故なら父と兄の仇を討つため。少女は敵と向かい合っていた。
少女は追い詰められ、助けを求めようと辺りを見回すが近くには誰も居ない。剣が振り上げられる。
あぁ、死んでしまう。その時になって少女は遂に悲鳴を上げた。
すると背後から声をかけられた。
「だから言ったろ?助けて欲しい時は助けてと言えってさ。」
背後から見知らぬ男の子が現れた。
僅かに反った細身の剣を手に彼は少女の敵を追い返した。
少女はお礼を言おうとした所で目が覚めた。
「おはようございますお姫様。」
「姫と呼ばないでと何度言ったら分かるのかしら?」
「姫様は姫様ですので。例え並みの男性を圧倒する技量を持っていようと貴女様はいずれかの殿方の妻となりそのお方を支えるのです。」
私の言う事を聞いてくれない相手に諦め私は溜息をついた。
「パウロ。夢を見たわ。」
「ほう。どのような夢ですかな?」
「男の夢だったわ。」
パウロと呼ばれた老人は驚きを表情に表した。
「宝石などの装飾品よりも名工の打った剣をお求めになり。御友人と歓談される事よりも騎士達と共に野山を駆け回る方を好まれる姫様が殿方を夢で見るなど・・・。明日は嵐ですかな?」
「怒るわよ。」
「続きを話されませ。」
身の危険を感じたパウロは続きを促した。
「父上も兄様も倒されて私が敵と向かい合ったのだけど、敵わなかった。だけどその時に私を誰かが助けてくれたの。」
パウロはその言葉を聞いてあからさまにがっかりとしてみせた。
彼はようやく姫様が結婚を考えてくれたものと考えたのだが、年頃の娘の見る夢想でしか無い事にがっかりしたのだ。
「はぁ、これは姫様にも女らしい所があったと喜ぶべきなのでしょうか?」
「パーウーロー。」
「これは失敬。如何しますか?占い師に夢見でも聞きますかな?」
普段なら私は下らないと一蹴しただろう。だが、今回の夢はなんとなく気になってしまってパウロの提案を受け入れた。
「お願いするわ。確かな占い師に占わせて。」
「了解しました。」
パウロは恭しく頭を下げて着替えをベットの上に置いて退室した。
「あんな剣。見た事がないわ。」
そう呟いた私は今日は何処まで遠駆けに行こうかと考えながら着替えを始めた。
主人公が活躍しない時期が長くなる事もある小説だという事を理解しておいて下さい。
ライバルキャラや敵の描写をしっかりとやってみたいと思っているので。