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プロローグ 檻の中から始まる伝説
世の中は、理不尽で不合理だ。
周りはいつだってヒトのことは後回しで、自分たちに都合のいいことばかり押し付けてくる。
それでも自分が周りと少しずれている自覚はあったから、上手く受け流しながらなんとかやってきた。
周りと同じになることはできなかったけれど、異常ななりに、浅すぎず深すぎずかかわりながら繋がりながら、どうにか波風を立てずにこれまで生きてこれた。
「けどーーーー今回ばかりは無理……かな」
底の底まで堕ちて乾いた笑いが咽を鳴らす。
冷たく、固い、石の床。
目の前を塞ぐのは、鈍色に光る鉄格子。
軽く身をよじると、腕と脚に繋がった鎖が歪な音を立てた。
遥か遠く、高い天井の先。採光用の窓から月明かりが届く。
山本友里。十六歳。華の高校二年生。
さる異界の大国にておこなわれた、勇者召還の儀によって現代日本から召還された彼女は、異世界召還三日目の夜を牢獄の中で迎えていた。
突発的に投稿。食い付きが良ければ続きも書きます。




