旦那と娘
ウチの旦那は少しおかしい。本人は「今流行の理系男子だから」と誤魔化しているが、仮に理系男子だとしてもその中でもかなり特殊な人間だと思う。
……あと、もう男子と言う年ではない。世間から見れば中年のオジサンだ。
旦那とわたしは所謂幼馴染みで幼稚園からの仲だ。しかしながら、娘を儲けて結婚十年目を迎える現在においてもイマイチ理解しきれていない。
◇◇◇◇
わたしには小学生の娘がいる。
黒髪ショートカットでぷにぷにしたほっぺ。わたし好みに育った愛娘だ。
休みの日には突撃して心行くまで抱きつく。最近はツンデレまで覚え始め、嫌がるフリをする。・・・フリだったら良いなぁ。
さて、その娘が小さい頃の話である。
赤ちゃんに話しかける人なら分かるだろうけれど、ある赤ん坊や幼児に対しては、いわゆる赤ちゃん言葉を使う。
ついつい、語尾に「○○でちゅ~」とつけてしまう経験があるだろう。
しかし、旦那は普通に話しかけていた。傍から見てほのぼの感が感じられない。
「成長したら、赤ちゃん言葉なんて使わないんだから今から普通に話してた方がいいだろ。そもそも、赤ちゃん言葉を使っている幼児を見たことない」
確かに、アニメくらいでしか「○○でちゅ~」と言っている幼児を見たことない。実際はカタコトの擬音や単語をつなぎ合わせて喋っている。
娘の初めての言葉は「ママ」、次に発した言葉な「まんま」
旦那は「同じじゃないのか」と言っていたが、違う。母親であるわたしには分かる。似ているようだが全然違うのだ。
それに対して、娘はついぞ「パパ」と呼ぶことはなかった。
「ママ」と違って誰も教えていないのだから呼ぶはずもない。わたしは旦那を「ねえ」と呼んでいた。というか、旦那と娘だけだと主語不要で会話が通じてしまうから改めて呼ばない。だから真似して覚えるということもなかった。
旦那は平然を装っていたが、ショックを受けていたのは明白だ。
旦那が「パパ」と呼ばれるのは大分後になってからだった。可愛そうになって、わたしがコッソリ教え込んだ。
その所為か、旦那は娘がカタコト喋れるようになってから読み聞かせするようになった。
普通は絵本を読み聞かせるのだろうが、旦那は図鑑を見せていた。まあ、写真も一杯載っているし娘も喜んでいた。お気に入りは乗り物図鑑だった。
「ぶーぶー」
「く・る・ま」
旦那は相変わらず、普通に話しかけていたけれど。
なお、現在はとあるアニメの影響で、旦那は娘に名前で呼ばれている。