旦那とギャンブル
ウチの旦那は少しおかしい。本人は「今流行の理系男子だから」と誤魔化しているが、仮に理系男子だとしてもその中でもかなり特殊な人間だと思う。
……あと、もう男子と言う年ではない。世間から見れば中年のオジサンだ。
旦那とわたしは所謂幼馴染みで幼稚園からの仲だ。しかしながら、娘を儲けて結婚十年目を迎える現在においてもイマイチ理解しきれていない。
◇◇◇◇
旦那は一時期、競馬に熱中していた時期があった。それだけ聞くと良いことかどうかは兎も角、普通に思える。
だが、当然?旦那のハマり方は普通とはひと味違った。
まだ娘が生まれる前の頃である。旦那が会社の先輩に誘われて競馬に行くと言う。
わたしもだが、休みの日でも旦那は用がなければ家にずっといる。半引きこもりである。出かけても、その行先は本屋、電機屋、近所のスーパーくらいである。遠出はほとんどしない。
旦那は無駄遣いをするタチではないし、そんなに大げさに散財しなだろう。少しくらい負けても目くじらを立てるほどではない。
まあ、偶には良いんじゃないか、と送り出した。宝くじさえ買わない男なのでギャンブルにハマる姿が想像できなかった。
帰ってきた旦那を捕まえて感想を聞くと、予想に反して「面白かった」と言う。
・・・マジで? どこら辺が面白かったのか。まさか、万馬券でも当たったのか?
百円づつで、尚且つ単勝馬券しか買わなかったと言う。全く面白みのない買い方である。なお、2回当たったと言ったが、当然赤字である。しかし、千円も使っていない。昼食代の方が掛かっている。
旦那曰く「オッズが面白かった」
謎であった。どこが面白いポイントだったが不明だ。
旦那は次の休日に競馬のデータ本を買って研究を始めた。パソコンで表計算ソフトを使って熱心に数字を入力していた。さらに翌週は別の本を買い、また何か表らしきものを作っていた。
しかし、一向に競馬場に行こうとしない。旦那の小遣いを含めた家計はわたしが管理しているが、お金をせびる事もなかった。今どきは電話やネットで買えるのので、そうしているのかとも思ったが、その気配も見せない。
口煩く言うものではないと思い、口にださなかったが、やっぱり気になってしまう。
わたしに内緒でこっそり買っているのかと思い、携帯をチェックしたが発信履歴もネットブックマークも履歴もない。ついでに言うと、エッチなサイトの履歴もなかった。
とうとう、旦那に聞いてみた。一体、いつ馬券を買っているのかと。
「買ってないけど」
旦那の答えはシンプルだった。何故買わないのか?
「だって勿体ないじゃないか。当たるかどうかも分からないのに、何で買うんだ?」
逆に聞き返された。
じゃあ、何のために競馬の本を買ってパソコンに向かっていたのか?
オッズがどう決まるのか気になって調べていたらしい。ついでにJ○Aの利益率や馬券回収率が気になってハマったらしい。
控除率? 期待値? ゲーム理論? なんちゃら均衡? 何ソレ?
何故、そんな面倒な計算が面白いのか・・・謎である。
わたしの困惑を他所に、本人は満足している。
その後、競艇や競輪も同じように本を買って表計算ソフトと格闘していた。
感想は一言、「やっぱり、ギャンブルって儲からないな」
ーー当然である。そんなの、計算しないわたしでも判る。旦那はやはり謎生態である。