旦那といい加減な人生
ウチの旦那は少しおかしい。本人は「今流行の理系男子だから」と誤魔化しているが、仮に理系男子だとしてもその中でもかなり特殊な人間だと思う。
……あと、もう男子と言う年ではない。世間から見れば中年のオジサンだ。
旦那とわたしは所謂幼馴染みで幼稚園からの仲だ。しかしながら、娘を儲けて結婚十年目を迎える現在においてもイマイチ理解しきれていない。
◇◇◇◇
ウチの家庭は共働きで家事を分担している。わたしが料理担当で旦那が掃除やゴミ出しなど。風呂掃除は毎日だが、部屋の掃除は休日にまとめて旦那がやっている。彼は小姑の様に綺麗に掃除してくれる。ベットの下やタンスの裏まで細かい所に気が付くので重宝する。
買い物はその時々。わたしはスーパーで安い物を買ってメニューを決めるが、旦那はわたしに事前にメニューを聞いて買い物する。
旦那は神経質というほどではないが、わたしよりは細かい。だが、日頃は細かいのに人生設計は大雑把だ。
旦那は適当に人生を決めていると思う。というか、頭の良い人にとって、人生はイージーモードなんだと思う。近くで旦那の人生を見ていると切実に思う。
わたしと旦那は幼馴染みで幼稚園・小・中学校と同じだった。お受験なんて無縁の公立の学校で、家が近所だと同じ学区だから当然だった。
高校に進学するに当たって、学校を選ぶことになった。わたしは模試試験結果を鑑みて、自分の偏差値に見合ったそこそこの進学校を受験した。
旦那は、昔から成績が良かったので当時の担任にもっと上の高校を選ぶように勧められたけれど、わたしと同じ学校を選んだ。
理由を聞いてみると「家に近い高校を選んだだけ」とぶっきらぼうに答えた。
旦那は学力はもっと上を選べるはずなのにわたしと同じ学校を選ぶなんて……、当時は「もしかしてこの男はわたしに気があるにじゃないか」と気をもんでいた。
しかし、今なら分かる。旦那は本気で家からの距離で選んでいた。単に通学が面倒だっただけだ。
2年になると理系クラスと文系クラスに分かれる。旦那は理系を選んだ。その理由は理系の方が覚えることが少なくて済むから。
そんな適当で良いのか? いや、理系の方が大変だと思う。
なお、わたしは文系クラスだった。
旦那はあろうことか、大学も家に近いかどうかという基準で選んでいた。進路希望調査には理工系の学部がある家に近い順番で学校名が書かれていた。
第一志望が偏差値45の私立大学で、第二志望が偏差値60の国立大学だった。
明らかにおかしかった。
実際、受験したのはその2校だけで両方受かっていた。旦那は両親と相談して授業料が安いとの理由で国立大学に行くことにしていた。
わたしは本命も含めて5校受験して、2校受かった。本命は落ちたが、第二希望に受かったので、その大学に進学した。
旦那は当時不思議そうにわたしに聞いてきた。
「えっ? 何でそんなに受験するんだ?」
滑り止めとか、受かったらラッキーとか色々あったんだよ。
旦那は就職活動とは無縁だった。大学に直に各企業から募集が来て、学校推薦で面接のみで内定決定。会社説明会もエントリーシート提出もなし。はっきり言ってズルくないか?
その企業の志望理由は面接のみだったから。他に募集がきていた企業は小論文や筆記試験プラス面接があったので、楽な方を選んだそうだ。なお、面接では志望理由は聞かれなかったみたい。
そんな理由で良いのか、聞いてみたが嫌になったら辞めて転職すれば良いやと思っていたそうだ。
ーーこうして並べてみると、旦那は人生舐めてるんじゃないだろうか?
思い出してみれば大学受験の時も、旦那はさほど勉強していなかった気がする。
旦那は未だその企業に勤め続けていて、今のところ辞めるそぶりはない。
会社での評判は仕事ぶり真面目で丁寧だと、すこぶる良いらしい。
本人は適当にやっているつもりらしいので、首をかしげている。
しかし、家の掃除も本人は同様に適当だと言っているが、わたしがやるよりよほど細かい出来だ。旦那にとっては適当でも、傍から見ると凄く一生懸命やっているように見える。
適当という言葉の基準が違うのかもしれない。