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第8話 『ひとりめ』

 アレクは今、土竜の討伐にミッドランドから50km離れた山岳を目指し進んでいる。


 土竜はランクBのモンスターであるが、ドラゴンと言うだけあって、その強さはランクAに近い。なぜランクがBになっているかと言うと、土竜は飛空能力がない点と敏捷性が低い点でランクBに位置している。土竜の特徴は鉄壁の防御力だ。火水風土の属性魔法ではその鉄壁の守りを突破することが難しく、またそんじょそこらの武器では歯が立たない。そして5mに近い巨体であり、力も十分に脅威に値する。


 アレクはそんな土竜の情報をモンスター図鑑で知っていた訳だが、実際に見たことはなく、想像であれこれと攻略法を考えながら進んでいた。


 50kmという距離は決して近いものではなく、大人の足で10時間ぐらいかかる道のりだ。道中は舗装された道ではないため、普通の冒険者であれば、1日はかかるものであるが、アレクはそんな道のりも無駄にはせず、地図を作りながら進んでいる。


 レグスには簡単な地図は存在するが、正確な測量技術などはないため、アレクは遠出する良い機会と思い、きちんとした地図を記録している。そんな地図作成であるが、サーチフィールドと視覚の身体強化を使用しながら、かなりの広範囲のものとなっていた。この地図は今後の世界征服への一歩でもある。


 アレクの土竜討伐は、地図作成はもちろんついでだが、一番の目的は、『土竜の鱗』という素材である。土竜の鱗は防具としては最大級の素材であり、今後の戦力アップとして防具類を確保しておきたい。土竜は5mもある巨体ということもあり、鱗の素材も多くとれると見込んでいる。またそれ以外にも土竜の牙や爪なども高価な素材であり、それも入手する予定だ。


 土竜の攻略法を考えてはいるものの、アレクはどうしても倒した後のことが楽しく、攻略法よりも先行して頭を過ってしまうのであった。



 そうして進むこと、日が暮れ始めていた。ミッドランドを出たのが朝だったのでかれこれ8時間ぐらい経ち、土竜がいる山岳までの距離はあと10kmといったところだ。

 今日は野営ををして、明日日の出とともに出発すれば昼前には着くという考えのもとアレクは、野営の準備に取り掛かった。


 ただ野営といっても、アレクはテントを張ったりせず、地面に手を触れ【アースホール】と唱えた。

 そうするとアレクの目の前に2畳ほどの広さで深さ1mの穴があき、アレクはそこに横になり、次に【オピチュアルカモフラージュ】と唱え、まわりからは見えないようにし、眠りに入った。



 アレクは日が昇るとともに目を覚まし、軽い朝食をすませ、土竜のいる山岳に向かい始めた。


 3時間ほど歩き、アレクは大きな山の目の前にいる。土竜のいる山は木などはあまり生えておらず、土が剥き出しになった山であったため、アレクは視覚を強化することで遠くに土竜を確認出来るまでの距離に来ていた。


 土竜はアレクの想像していた恐竜のような姿ではなく、はっきり言って大きな亀だった。


 土竜は特に暴れる様子もなく、ただ横になって休んでいるようだった。


 しかし、アレクはさっきから気になっていることがある。それは、土竜に向かって進んでいる一人の気配だ。アレクのサーチフィールドで探った感じ、その人はランクDの冒険者ぐらいの強さは持っていそうであったが、土竜には通じなさそうだ。


 その人と土竜との距離はまだ離れてはいるが今のアレクのペースで進めば、その人の方が早く土竜に到達しそうであったためアレクは少し急ぐことにした。

 アレクとしては全く知らない人ではあるが、目の前の人を見殺しにはできないという正義感からだった。



 それから数十分。



 アレクはその人に話しかけることにした。

 その人は、腰に刀を着け袴姿。長い黒髪を後ろにまとめ、まさにポニーテールといった髪型。20歳前後の美人な女性であった。


 アレクは驚かしてはいけないと思い、ちょっと離れた位置からその女性に声をかける。

「すいません」

「えっ?」

 遠くからといってもこんなところに人はいないと思っていたのか、やっぱり驚かしてしまったが。


「驚かしてしまってすいません。ただこの先に土竜が生息しているので危険ですよ」

「やっぱりこの先にいるんですね。大丈夫です、わたくしはそのために来ているんですから」

「でも、失礼ですがあなたの力では厳しいかと」

「はい、わかっております。ただわたくしとしてなんとかケジメをつけたいのです」

「ケジメですか?」

「はいそうです。わたくしのパーティがトドメをさせなかったばっかりにこの土地にまで迷惑をかけてしまいました。リーダーもなぜだか「ほっとけ」なんて無責任なことを言い出しますし、せめてわたくしだけでもケジメをつけにこちらに向かった次第ですので」


「そういうことでしたか…もしかしてあなたのリーダーはユーマさんと言うのでは?」

「そうですが、ご存知なのですか?」

「はい。ミッドランド冒険者ギルドに来ていましたので」

「そうでしたか。申し遅れましたが、わたくしはイーストランドギルド所属のランクC冒険者でユキと申します」


「どうも、アレクです」

「アレクさんですね。ご忠告ありがとうございました。それでは」

「待って下さい」

「止めないで下さい。危険は承知の上です」


 アレクはユキの表情から意志の強さを感じとり、そのままユキを行かせることにしたのだが、アレクはユキに気付かれないように後をつけることにした。



 それから1時間、土竜のいる山を登り、とうとうユキは土竜の間合いに踏み込んだ。

 ユキが間合いに入ったことで、土竜はムクッと頭を上げユキの方を睨みつける。対するユキも土竜に合わせ抜刀の構えに入り、ユキ対土竜のゴングがなった。


 まず初めに仕掛けたのはユキだ。

 ユキは抜刀の構えから刀を素早く抜き【飛斬】という掛け声のもと抜き放たれた刀から斬撃を飛ばした。


 斬撃は土竜の首に向かって一直線に向かっていくが、

 キンっと金属と金属がぶつかり合ったかのような音を立て、土竜に簡単に弾かれてしまう。しかし直ぐさまユキは土竜との間合いをつめ、今度は直接、足にめがけ斬りかかった。


 キンっ


 今度もまた、土竜に簡単に弾かれてしまう。


 土竜について、鉄壁の防御力を誇っていると認識していたアレクではあたっが、大きな亀の姿をしていたため、それは甲羅の部分であろうと思っていたが、ユキと土竜との戦闘を見て少し考えを改めた。


 その後、何度もユキは土竜を斬りつけていたが、傷すらつけられずにいた。


 一方土竜もユキに噛みつこうとしていたが、ユキを捕らえることはできず、両者攻めあぐねていたわけだが、両者では絶対的な違いがあった。それは土竜の圧倒的な体力だ。


 土竜の動きは確かに遅いが、噛みつく速さはそれなりにある。ユキは身体強化を使い、回避をしている。身体強化について攻撃は勿論のことユキは常に展開している様子だった。


 アレクはサーチフィールドでユキの魔力がどんどん減っていることに気付いていた。しかし土竜は、戦闘からほとんど魔力量が減っていない。


 そしてとうとうユキの魔力が枯渇し、土竜の尻尾による攻撃をくらい、ユキが吹っ飛ばされる。

 土竜は吹っ飛んでいったユキを追い、右前足を大きく上げ、ユキを踏み潰さんとしていた。

(わたくしもここまでですね)

 ユキは目を閉じ、最後の瞬間を迎えようと覚悟した。


【アースポール】


 ユキの周りの地面から大きな柱が突如せり上がってゆき、踏みつけようとしていた土竜の足を押し返していった。


「ユキさん、大丈夫ですか。代わります」

「ア、アレクさん」


 ユキ対土竜の戦いは土竜に軍配が上がり、2回戦としてアレク対土竜の戦いが始まるのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【魔法の紹介】


魔法名:アースホール

種別:土属性魔法

効果:地面に穴を開ける。効果範囲は込めた魔力によって大きさを変えることが出来る。


魔法名:オピチュアルカモフラージュ

種別:光属性魔法

効果:光学迷彩として、光の屈折角を操り透明に見せる。


魔法名:飛斬

種別:風属性魔法

効果:刀に風の魔力を集め、斬撃を飛ばす。


魔法名:アースポール

種別:土属性魔法

効果:地面から土の柱を出現させる。

読んでいただきありがとうございました。

今後ともよろしくお願いします。

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