第3話 『魔法』
『魔法』
俺の前世ではそんなものはなかった。しかしレグスには当たり前のように存在しており、使えない人の方が少ない。
レグスの生活において、魔法は切っても切り離せない生活必需品にも多く利用されている。前世で言えば、電気のような存在であろう。いやもっと便利性な部分が魔法には多い。魔法が便利過ぎるためにレグスでは、科学が発展していないとも言えるであろう。
そんな存在に俺が興味を示さないはずがない。だから俺は生まれてからこの10年、魔法についていろいろと調べてきた。しかしそれは秘密裏に調べ、独学でやらざる終えなかったことだ。さらにこのレグスにある魔法に関する本は、前世の時での本とは違い、精度が悪く、さすがの俺でも推測出来ないことが多かった。
しかし今日からは違う。仮にも元ランクBの魔法使いから魔法を学べるのだ。そんなこともあり、俺は今日からの魔法の稽古を楽しみにしているのだった。
母ジェーンの部屋
「アレク、昨日のケガ痛くない?大丈夫?」
「うん、母さんが回復魔法してくれたおかげもあって、全然痛みはないよ」
「はぁ〜、よかった。でも無理しちゃダメよ。ほんとにルシオったらアレクにむちゃさせるんだから」
「うーん、本当に大丈夫だから、ね」
「よし、じゃあアレク魔法について教えるわよ」
「はい、お願いします母さん」
「っとその前に、アレク、あなた母さんが知らないと思って、こそこそと魔法使ってたわよね」
「えぇ」
「ふふーん。母さんにはばれてるんだからね。まあいいけど、魔法が使えるってことは、概念についてはなんとなくわかってるのよね?」
「うん。自分の体にある魔力を変換し、それを言霊に乗せ具現化し魔法を形に表すんだよね」
「正解。じゃあ魔力の変換にはどんなものがあるでしょうか?」
「火水風土と光・闇の6元素の変換があるんだよね」
「正解。じゃあ今度は魔法の基礎種類はわかる?」
「うん、変換魔法と干渉魔法だよね。変換魔法はさっきの通りで、干渉魔法は回復や身体強化、それに空間操作や相手への洗脳があるんだよね」
「正解。じゃあなんで母さんがアレクが魔法を使ったのがわかるか、わかる?」
「あっ…そうか、干渉魔法だね」
「そう」
「つまり母さんは干渉魔法で空気中に自分の魔力を張り巡らしているんだね」
「そう、だから私が見えないところでも誰かが魔法を使えば、それなりに感知出来るって訳よ」
「ねえ母さん、僕も使ってみてもいいかなぁ?」
「いいけど、難しいわよ」
アレクは空気中に存在する酸素に対して、自分の魔力を干渉させるイメージを描いてみた。
【サーチフィールド】
アレクの魔力が空気中の酸素へと干渉し、その範囲を広げる。
「いきなり出来ちゃったのね。はは。サーチフィールド、いいネーミングセンスね。まあ言霊は自分に合うのが一番効果があるから、それでいいわよ。まあ、それでもいきなり出来るアレクはさすがだけど・・・」
「あれ?でもなんで母さんの魔力はそんなに少ないの?」
「うーんっと、それはちょっとおいといて」
「別にいいんだけど」
「そうだ、アレク、あなたの魔力量は気をつけなきゃ。この歳でランクCの魔法使い並の魔力量があるから、普段は抑えるようにまずはしないとね。まずはそこからの稽古しましょう」
「わかった…母さん?魔力を抑える方法って3種類あるよね?」
「え?」
「まず母さんが使ってる方法で、自分の魔力に干渉させ、魔力を小さくする方法でしょ。それと魔力変換による対の魔法を使って魔力を小さく見せる方法。例えば光と闇を並行で使い、プラスとマイナスを表現させることで、魔力量が少なく見えるでしょ。最後に空間操作で魔力そのものを自分の体内に隠してしまう方法」
「えーっと、母さんは干渉のやつしか知らないんだけど・・・」
「あれそうだったの?でもそれぞれメリットデメリットがあると思うけどね」
「へぇーそうなんだ。ちなみにどんなものなの?」
「干渉魔法では、小さく見せることはできるけど、魔力そのものは残っているから、詳細を探られるとわかってしまうと思うんだ。ただ一番扱いやすいのがメリットだね。それで対の魔法は干渉に似てるけど、コントロール次第で魔力を完全に感知出来なくさせれると思う。ただどうしても対の魔法だから得意不得意があって、扱える人は少ないような気はするね。空間は完全に感知されない方法だと思うけど、空間に一度入れてしまう形だから、いざってときに魔力を使うのが遅れるのがデメリットかなぁ」
「なるほどね。アレク、さっきからそれぞれの方法試してるでしょ」
「うん」
「今空間魔法つかってるわよね?魔力がわかんなくなったわよ」
「はは、バレちゃったか」
「アレクー?私の感知から逃れたからって、悪い事しちゃダメよ」
「勿論・・・」
「まあいいわ。そこまで使いこなせるよになってるってことは、アレクもだいたいわかってるとは思うけど、魔法は奥が深いのよ。特にそれぞれを掛け合わせていろいろなことが出来ちゃうわけよ」
「そうだね」
「特に干渉魔法である身体強化は冒険者にとっては重要ね。こればっかりは魔法使いでも鍛えておいて損はないわ。まあアレクの場合、剣士も目指すんだから、極めないとね」
「うん」
「アレクは身体強化も、もう出来ちゃうの?」
「うん、出来るよ。ただ昨日は使わなかったけど」
「そうね。ただルシオも身体強化に関しては一流よ。さすがに昨日は使ってなかったと思うけど、もし使ってたら、母さん一生口聞いてあげないけどね」
「はは」
「それはいいにして、魔法については何百年も前から魔法ギルドで研究が続いているわけだけど、まだまだ新しい発見があるのよ。だからアレクには魔法ギルドで働くってのもいいかもね、こんだけ才能があるんだから」
「うん、でもやっぱり僕は冒険者がいいんだ」
「まあ、いつでも転職できるから、考えが変わったら勧めるわ」
アレクはジェーンとの会話と本で得た知識によって、レグスにおける魔法をほぼ知ることが出来ていた。ただアレクにとってみても魔法については奥が深すぎた。やれる事が有限であればマスターできるものかもそれないが、アレクの計算でも無限に近い組み合わせがあり、それを全部試すわけにもいかず、またそれを試すだけの魔力がまだアレクにはそなわっていないこともあり、その後魔力量を増やす稽古とともに効果的な魔法を見つけ出すことに精を出す日々が続くのであった。もちろん、剣術もやりながらである。
読んでいただきありがとうございました。
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