表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/18

第2話 『剣術』

『剣術』


 短剣、片手剣、両手剣、刀など剣といったらいろいろな形状のものが存在している。

 現世では剣道がメジャーな剣術であったが、いわゆる剣を扱う技術と言えばいいだろう。しかし剣道では竹刀を使い、面や胴に当てれば1本となり勝負には決まる訳だが、実際の刃物として真剣での勝負では、服を着ているだけでも体が簡単に斬れることはなく、せいぜい打撲になる程度だ。では、剣術とはそれらの剣をいかに扱い、相手を倒せるかといった技術が必要になる。そこが『剣術』の難しいところだ。


 実際には剣で相手を殺したい場合、刺すことが一番殺傷力が高い訳だが、突きは1点のみでの攻撃となるため、比較的回避し易い攻撃でもある。

 だからこそ、斬る、刺すを織り交ぜながら戦っていくことが剣術の基本となる。







 アレクは今日から父ルシオと剣術の稽古を始めるために家の裏庭に来ていた。


 アレクの住むファルマは、自然豊かな田舎街で一軒の土地としては広いこともあり、庭付きの家になっている。


 アレクの家の庭は、大きな木が一本あり、ジェーンが趣味でやる花壇のスペースがあり、あとはルシオの自主練をする大きめのスペースがある。


 アレクはルシオの剣の稽古する姿を10年間見ていた。アレクは、周りから見ればただの真似事だと思われるかもしれないが、庭でルシオの剣術を稽古していたので腕前はそれなりになっていた。


「アレク、今日から剣術の稽古を始めるが、まず稽古を始めるまえに剣の流派について知ってもらう。戦いにおいて相手を知ることは重要だからなあ」

「はい、父さん」

(実は流派については知ってるんだけどな)


「剣の流派には、まず4大流派と呼ばれる北神流・東神流・南神流・西神流があり、武器が違っても基本的にはこのルーツを辿っている。アレク、俺の流派はわかるか?」

「北神流だよね、父さん」

「そうだ。まあアレクの場合、家の本が北神流のものばかりだからわかったと思うが」

「うん、あと父さんの動きでね...北神流は攻守型、東神流は攻撃型、南神流は回避型、西神流は防御型になり、父さんは全体的に満遍なく対応できるような稽古をしていたもんね」

「おぉ、その通りだ。あいかわらず、アレクは説明要らずだなあ。それで北神流の稽古は、アレク、もしかしてこれもわかったりするのか?」

「うん。北神流は攻守型だけど、本来はどんな戦闘においても柔軟に対応する臨機応変さが必要だよね。もちろん基礎的な稽古は必要になると思うけど、それよりも実戦経験が一番効率が良いはずだよね」

「やっぱり・・・その通りだ。だからこれからの稽古は、基本的には父さんとの組手を中心に行う」

「はい」

「アレク、これを受け取れ」


ルシオはアレクに木刀を投げ渡す。


「さすがに真剣でやってケガさせる訳にはいかないからなぁ」

「そうだね」

「よし、じゃあ早速はじめるか。アレクかかってこい」


「待って父さん。やる前に一つお願いがあるんだ」

「なんだ?」

「父さん、本気出して。油断なんかしてると木刀とは言え、ケガさせちゃうから」

「はは。アレクさすがに俺はそんなに弱くないぞ」

「父さんが弱くないのはわかってる。だけどお願い。せめて油断はしないでね」

「わかった、わかった」

「じゃあ、いくよ」


ビュッ。



カランコロン。



 ルシオは口でそう言いながら、アレクからの忠告を完全に無視していた。さすがに10歳の息子が現役バリバリの冒険者で、しかもランクCの自分に対して、攻撃なんてあたるはずがないと思い油断していたのだ。


「あ~ぁ、だから油断しないでって言ったのに」


 ルシオは木刀で攻撃された右手の甲をおさえていた。

(右手にヒビが入ったな、こりゃ)


「アレク、これはもしかして、北神流の『小手弾き』か」

「そうだよ」

「まさか、これ程とはなぁ。アレク、お前どこまで北神流の技使えるんだ?」

「家にあった本に載っていた技は全部かなあ。ただ実戦で使ったことないから、どこまで使いこなせるかはわからないけど、今の反応を見る限り『小手弾き』は完璧だった?」

「おぉ、そうだなよかったと思う。しかし全部かぁ」


「そうだ父さん。右手ヒビ入っちゃったよね。治すから手出して」

「アレク、お前回復魔法使えるのか?」

「うん、母さんの見て覚えたからね、ある程度のケガなら治せるはずだよ」

「恐れ入ったよ、アレクには」


 ルシオはヒビの入った右手をアレクに差し出す。

【ライトヒーリング】

 アレクの回復魔法により、ルシオの右手が光に包まれ、腫れとともに痛みも引いていく。


「じゃあ父さん、次こそ油断しないでね」

「おぉ、わかった。さすがに息子にコテンパンにされたままじゃあ、父親失格だからな」

「じゃあいくよ」


 アレクは先ほどと同じく、北神流の『小手弾き』を放った。


 小手弾きは剣道でいう小手みたいなもので、相手の持ち手に攻撃し、武器を使用できなくさせる技だ。地味な攻撃であるが、戦闘中に利き手をやられた場合、そのダメージは大きく、ほとんどは勝負ありだ。


 ルシオもさすがに同じ技はくらわないと、今度はアレクの攻撃を木刀で横に弾いき、アレクの左肩に袈裟切りを見舞う。

 アレクは体を回転し、袈裟切りを回避するとともに、そのまま回転の勢いを殺さず、横薙ぎを繰り出す。

ルシオはそれを木刀で受け止め、両者共に半歩後ろにステップし、間合いをとる。


 今度はお返しとばかりにルシオが小手弾きを放つ。

 アレクは腕のみを動かし、ルシオの小手弾きを避け、上段から木刀を振りかざす。今度はルシオが体を回転させアレクの攻撃を避け、横薙ぎで反撃。アレクはそれをしゃがみ込むことで回避し、ルシオに足払いを仕掛けるも、ルシオは後方にジャンプしてかわし、再び間合いを取った。



 アレクとしては、父ルシオとの対戦について、稽古の一環として何度もシミュレートしていた。もちろんアレクはルシオの稽古を見た限りで父親の動きに対して、本気になった場合の力を加え対戦していた。そんなことを8歳ぐらいから本格的に始め、その結果、アレクは父ルシオとのシミュレートで勝てるまでに至っていた。


 しかし、アレクの計算とは違い、ルシオの本気はその計算を上回る力を発揮していた。特に単純に力の部分で大幅に狂いが生じていたのだ。そのため、体力といった面でも次第に押され始めていた。


 そんな中ルシオは、息子との戦いで、次第に力が上がってきていた。近頃本気での戦いから離れていたこともあり、ルシオは息子との稽古だということも頭から少しずつ遠のき、戦いに集中する形となっていった。


 そんな二人の状況が重なり、アレクとルシオの戦いは、次第にルシオ優勢となっていった。


 アレクは筋力の差もあり、回避主体。一方ルシオはアレクの攻撃を受けと弾きでいなす。そんな攻防の中、アレクの体力も限界に近付いており、アレクの放った突きに対し、ルシオはそれを横に回避する。アレクは攻撃を回避されたことで体制を崩し、その隙をルシオは逃さず、肩口に袈裟切りを放つ。


 ルシオの攻撃はアレクにヒット。ルシオは息子と戦いに夢中になっていたこともあり、アレクに放った攻撃は、十分に相手の意識を狩る程の威力があった。そのため、それをもろにくらったアレクは、その攻撃で意識が遠のき、その場に倒れることになった。




「うぅ」


 目を覚ましたアレクは、ベットで横になっていた。その近くでルシオは床に正座をさせられ、ジェーンから説教されている様子であった。


「ルシオ!まったく、何考えてるのよ。いきなり大怪我させて」

「すまん。つい本気になってしまって」

「あんた馬鹿。父親が息子に本気になって戦ってどうするのよ」

「いや・・・」

「いい訳なんか聞きたくないわ」

「でも、聞いてくれよ。アレクは」

「でもじゃないわよ。アレクはまだ10歳よ。ほんと大人げない」

「・・・すまん」


 そして、その説教は1時間以上も続き、ルシオはこっぴどくジェーンにやられるのであった。

(ごめん、父さん)


 そんなことでアレクの剣術稽古の初日は終了したのであった。


読んでいただきありがとうございました。

今度ともよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ