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第1話 『言語』

 『言語』


 俺の年齢は0歳。ついこの間産まれたばかりだ。

 よって、俺には両親たちの会話がまだわからない。


 天才と呼ばれてきたが、全く聞いたこともない言語で会話をされ、それを1日で理解できるようになる訳ではない。確かに俺は前世で10を越える言語を習得していたが、1つの言語をマスターするには半年はかかる。


 ただし、言語を習得するにはコツがある。

 それは、赤ちゃんになることだ。

 もちろん普通であればそれは出来ないことなので、言語を習得するには、自分の母国語と習得したい言語を結びつけて覚えないようにすると少なくとも会話は出来るようになる。会話さえできれば、読み書きを覚えることはそんなに難しいことではない。


 そうして俺の言語習得が始まった。


 赤ん坊の俺は、寝て、食って(吸って)、ボーッとして、寝るの繰り返しだ。筋力も無いので動くこともほとんどしない。よって起きている時間は有効に使った。

 まず、両親の会話に注目する。そして俺の顔を見に、祝いに訪問してきた近所の人たちの会話を聞き、言語の習得に勤しんだ。

 もちろん、普通の赤ちゃんと違い、出来るだけ体を動かし筋力アップも欠かさない。

 そんな日々が続き。



 そして3カ月が経った


 言語については、日常会話は理解できるようになり、寝返りやズリばいで進めるようにもなっていたが、さすがに動けるようになっていることはばれないようにしていた。

 なぜなら普通の赤ちゃんは生後3カ月では、精々首がすわる程度なため、あまりにもおかしな成長は目立ってしまう恐れがある。俺の中ではまだ目立ってはいけないのだ。


 言語が理解できるようになりわかったことは…


 まず俺の名前はアレク。そして父親がルシオ、母親がジェーンだ。

 住んでいる所は、ミッドランドから馬車で1時間ほど進んだ先にある小さな村ファルマ。

 ルシオは冒険者ギルドに所属しているランクCの剣士。ジェーンは元ランクBの魔法使いで主に回復役を担っていたようだ。

 俺の家は裕福ではないが、3人が生活するには満足いくものだった。


 言語も理解できるようになったため、俺の世界にはなかった魔法を習得する目標をたてた。


 ただ、自分から話すことも出来ない訳で魔法の習得には難儀した。


 それでも困難な目標を達成するために、まずは『魔法』をキーワードにし、両親の会話からヒントを得ながら、たまに読み聞かせてくれる本から文字を理解し、両親が見ていない間に床に置いてあった魔法に関する本を盗み見るなどの日々が続いた。


 10カ月が経ち、歩いて動いても不自然ではない状態になってからは、魔法の理解に対して大幅に効率的になった。さらに運が良かったのは、家には魔法に関する本がたくさんあったこともあり、習得に勤しんだ。

 もちろん魔法だけでなく、筋トレや剣術に関しても並行で進めていった。



 そして10年が経過した


「「誕生日おめでとう〜」」

「父さん、母さん、ありがとう」

「アレクもこれで10歳になるのよね。ほんとアッと言う間に」

「そうだね母さん」

「そうそう、早速だけど、これ私からのプレゼント。はい」

「ありがとう母さん。開けてもいい?」

「いいわよ」


 ガサガサ


「ミサンガ?」

「そうよ。でも只のミサンガじゃないわよ。これはね」

「待って母さん…これ回復の効果があるマジックアイテムだね。母さんの魔力を練って編み込んだんだね」

「う、うん、そうよ。まったくアレクにはほんと説明要らずよね。まあ、それを着けておけば、すり傷程度ならすぐに回復するわよ」

「うん、大切にするよ」


「アレクいいか、父さんからはこれだ」

「これ、ショートソード?」

「そうだ。まあ母さんみたいに俺はマジックアイテムなんて作れないから、只のショートソードだけどな」

「ううん。いいよ、ありがとう父さん」


「それでアレク、ここからはちょっと大事な話だ」

「何?父さん」

「アレクもこれで10歳だ。あと5年もすれば独り立ちしていかなきゃだめなんだが、アレクは何を目指す?」


「ぼくは、父さんと一緒で、冒険者ギルドに入ろうと思っているよ」

「冒険者は危険な仕事だぞ」

「うん、わかってる。でも父さんも母さんも冒険者でしょ」

「わかった。それでアレクは何を目指す?」


「剣士か魔法使いかってこと?」

「そうだ」

「…父さんは僕を剣士にしたいし、母さんは魔法使いにしたいしって顔だね、二人とも」

「いいかアレク、剣士はなあ」

「ちょっとずるいわよルシオ、アレクが決断するまで何も言わない約束でしょ」

「ごめん、つい」


「父さんも母さんも落ち着いてよ。僕はあえて言うなら両方だよ」

「アレク、剣士も魔法使いも両方なんて、そんなに甘い道じゃないぞ」

「父さんそれは違うよ。片方だけやろうなんて、それは甘えだよ。困難な道だからこそ面白いんだよ」

「…ん」


「正直僕はね、剣士と魔法使いだけじゃないんだ。盗賊も狩人も魔獣使いもやるつもりなんだ」

「アレクは贅沢だなあ。でも本当に剣士にしたって、剣の中でも流派があったり、それこそ武器だって剣以外にも槍や斧、棒などいっぱいあるんだぞ」

「わかってるよ父さん」

「アレク、魔法使いだって攻撃や回復、支援とそれぞれいっぱいあるのよ」

「父さんも母さんも言いたいことはわかってる。でもいっぱいあるからこそ面白いんだよ」

「でもなぁ」


「ただ、父さんには剣を教えてもらいたい。そして母さんには魔法を。剣は父さんが家にいるときに教えてほしいんだ」

「お、おぅ」

「それ以外のときは、母さんが魔法を教えて」

「は、はい」

「明日は父さん仕事休みだったよね。じゃあ、明日から早速やろうよ。いいよね父さん?」

「おぉ」

「じゃあ、明日、よろしくお願いします」


 こうしてアレクの次なる特訓が始まるのであった。



 ちなみにアレクが冒険者を選んだ理由は、レグスでは富や名声よりも単純に強さが必須だと考えていたからだ。いや逆に強さがあれば富と名声を得ることは容易い。

 そしてアレクはモンスターとの戦いという前世ではなかったことに惹かれているという事実もあった。


読んでいただきありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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