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プロローグ 『富と名声』

文章を追加・修正し、情景を想像し易いようにしました。

『富と名声』


 俺はそれを手にいれる力を持っていた。子供の頃から勉強もスポーツも常にトップをつっぱしていた。

 まわりからも「天才だ」と騒がれ、俺自身もそうだと実感出来る程、才能にありふれていた。


 もちろん、才能だけでなく俺は努力を惜しまず、また常に生活においては効率的に生き、目的を達成するために頑張ってきた。そんな俺の目標は「世界征服」だった。ただ世界征服といっても世界を滅ぼすとかそんな危ない考えではない。単純に少しは達成困難な目標が欲しかったからだ。


 「世界征服」のために何をすべきか?どうしたらいいのか?といろいろ考えた結果がまずは『富と名声』を得るという考えにたどり着いた訳だが。

 そんな時、俺を恐れた集団が、俺を亡き者にしようとあれこれと策略を練り仕掛けてきた。





 しかしながら、俺はそんな策略すら打開できる天才だったため、軽くあしらい、今日も目標達成のために努力を続けていた...。








しかし、そんなある日


「あなたの命は後3カ月です」


 俺は医師から余命勧告を受けてしまった。


 そう、天才の俺は病に犯されていた。

 さすがの俺でも、あと3カ月しか生きられないとなると世界征服の一歩となる『富と名声』を得る目標が達成できない。

 俺の計画でも5年、いや少なくとも3年はかかる見込みだった。


 俺は人生初の諦めモードに...。










 そして3カ月が経とうとした時、一人、部屋のベッドの中で


「あ~、俺は明日も無事に目を覚ますのかなあ」


 そんなことを呟き、床についた。











「おんし、ちょっと聞いてくれんか?」


 俺は突然話しかけられ、目を開けると、そこは何もない真っ白な空間で、俺の前に一人の老人らしき人物が立っていた。


「なんだ?」


 その老人は自分の白く長い髭をさすりながら、自己紹介をしてきた。


「ワシは、ゼス。まあおんしの世界で言う神みたいなもんじゃ」


 ゼスと名乗った老人に対し、俺は特に疑うでもなく思ったことを話しかけていた。


「そうか、ってことは此処は天国か何かか?」

「いやいや、此処は無じゃ。そもそも天国やら地獄なんて世界はこの世にはありゃせんよ。命を落とせば皆、無になるんじゃからのぉ」


 ゼスのいう「無」が何か少し気になるところではあったが、


「じゃあ、俺は死んだってことになるんだな」

「う~ん、正確にはまだじゃなぁ。ワシがおんしの魂を無に留めておる」


「ってことは、俺はまだ...そうかわかった。俺を転生させたいってことか?」


 ゼスは俺のそんな切り返しに「ハッ!」としたが、すぐに納得した表情になり、


「おんし流石じゃな。ワシはまだなんの説明もしとらんと言うのに」

「まあな。それであんたは俺にどうして...そうか世界征服をしてほしいのか、あんたの世界とやらで」


 またゼスは「ハッ!」と驚くき、少し顔を赤くさせ怒った表情になる。


「おんし一体どこまでわかるんじゃい。ワシにもちょっとは説明させぃ」

「まあそんな怒んなよ。じゃあ、質問させてくれ。あんたの世界ってのは、やっぱり俺の知ってる世界じゃないよなあ?」

「そうじゃ、ワシの世界は『レグス』という」

「レグスね~。で俺がいた世界とは違う別次元ってことでいいのか?」

「そうじゃ」

「つまり異世界転生ってことかあ。ならそのレグスっていう世界のことを教えてくれ」


 ゼスは『レグス』について語り始めた訳だが...。


「ふむ、レグスはおんしたちが俗に言うファンタジーみたいな世界じゃよ」


 俺はファンタジーと聞き、軽くうなずきながら答えた。


「なるほどね。つまり剣や魔法があってモンスターやら王国同士の戦争が起きているような世界って認識でいいのか?」

「その通りじゃ。それで間違いない」


「しかし、なんで俺に世界征服なんて望むんだ...もしかしてあんたの世界がやばい状態なのか?」

「そうじゃなぁ、やばいといえばやばいんじゃが。一向に世界が統一せんのじゃよ。そのため多くの民が戦争で犠牲になったり、人類同士の争いばかりに目がいけば、今度はモンスターにやられ多くの人類が犠牲になったりと進歩せんのじゃよ」

「そんなような状態だから俺に世界征服を望むと」


「ふむ。正直おんしの才能は、神のワシですら信じられんほどチートじゃ。ここで無にしてしまうには惜しすぎる」

「わかった。じゃああんたの世界に転生してくれ」

「おいおい、まだ説明してないことがいっぱいあるのだじゃが」


 少し困り顔のゼスをそのまま無視をし、俺は力強く


「聞いたら、目標達成が簡単になっちゃうだろ」


 俺の反応を受け、ゼスは「はぁ~」とため息が漏れたのだが、俺に食い下がる。


「せめてもう少し説明させてくれんか?」

「まあいいけど。正直だいたい認識できたんだよなあ」


 ゼスはそんな俺の回答を受け、「言えるもんなら言ってみやがれ」という表情になり、


「な~に~?じゃあおんしはどんな転生をするんじゃ?」

「誰かと誰かの間に産まれた子だろ。じゃなきゃそりゃ転移だ。そして仮に俺の才能を生かしたまま転生させるってことは、別の人物に転生しても効果は薄い。もしくはあんたが準備した特別な器に転生するのならば、俺じゃなくてもいいわけだしなあ」


 俺の回答は的を受けていたらしく、ゼスは悔しそうな顔をし唸る。


「うぅ~。その通りじゃ」


 俺は続けざまに語る。


「さらに、俺は転生しても今の知識を持っている。じゃなきゃ、俺の才能は意味がなくなるしなあ」

「正解じゃ。おんしが頭が良いのはわかった。じゃあどの王国に転生するか選んぶのじゃ」


「まあ俺にしたら何処でも一緒なんだけどなあ。それで選択肢は?」

「レグスでは4つの王国に分かれておる。ノースランド・イーストランド・ウエストランド・サウスランド。それぞれの王国は」


 俺はゼスの話の途中に割り込み


「ちょっとそれ以上はいいよ。じゃあミッドランドに転生させてくれ」

「ワシは4つと言ったはずじゃが」

「いや、ミッドランドじゃないかもしれないが、レグスにはきっと真ん中にある国があるはずだ。じゃなきゃ進歩もなしに永遠と戦争を繰り返したりなんかしないはずだ。真ん中にそれぞれの王国から不可侵の国があるからこそ、戦争が続いてる。そしてその真ん中の国は、勢力がほとんどない。違うか?」

「なぜそこまでわかるんじゃ。だからこそ4つといっとるんじゃよ。ミッドランドでは世界を征服することなんか無理じゃ」


 そんな俺はゼスを強い眼差しで見つめる。


「困難な目標の方が面白いんだよ」


 ゼスは俺の天才ぶりにほどほどあきらめた表情になり、


「わかった。じゃあ次は特殊能力を選ぶんじゃ」

「特殊能力ねぇ。それは転生に必要だということかな...あんまり神様を怒らせるのも気がひけるし、ここは素直に選ぶよ」

「じゃあこのリストを見てくれ」


 ゼスは懐から1枚の巻物を取り出し、


 バサッ


 そこには次のような項目が書かれていた。


自己再生:怪我をしても再生する。

運気最大:とにかく運がいい。

未来予知:先に起こる事象を予知できる。

限界突破:能力に限界がなくなる。

神器錬成:アーティファクトが作れる。

勇者体質:人から好かれる。

賢者体質:人から崇拝される。

魔人体質:魔法能力に優れている。

全知万能:すべてにおいて万能。

成長促進:能力の成長が早い。

大器晩成:大人になると急激に成長する。

動物愛護:モンスターに好かれる。


 俺はそんなリストに目を通しながらも、一つの項目に目がとまる。


「なんかどれもチートのような気もするが…『限界突破』にするよ。正直なところ現世では限界まで達してた気がするしな」


 ゼスは最終確認だと言わんばかりに、やれやれといった表情で、


「よし。転生する国はミッドランド、特殊能力は『限界突破』。これで行くぞい」

「ああ、よろしく頼むよ」

「ほぃ」


 ゼスとのやり取りを終え、俺は『レグス』に転生されるのであった。




(痛っ、痛て~。う~ぅ)


 俺はこれまでに味わったことのない痛みに思わず泣き叫ぶことしか出来ず。


「うぎゃ~、うぎゃ~」


 とうとう泣き出した。


 それもそのはず。なんせ母親から産まれてくる最中なのだ。頭を万力で締め付けられているみたいに、とてつもない痛みに襲われる。


 痛すぎて気を失うことも許されず、やっとのおもいで俺は母親の体から出て、目の前にいた助産師であろうお婆さんに抱き上げられた。


「おぉーおぉ、よく頑張ったね。元気な男の子じゃよ。ほらジェーン」


 助産師であろう老婆は、赤ちゃんである俺をジェーンと呼ばれた母親の前に近づける。母親となるジェーンは疲れた顔をしているものの、我が子が無事生まれたことに目に涙を浮かべながら喜んだ顔を向ける。


「はぁはぁ、本当」


 その横では、父親であろう人物もうれし涙で顔を濡らす。


「あっ、あ。おれたちの子なんだな」

「そうよ。ルシオ」





 そうして俺は、父ルシオ、母ジェーンの間に無事転生することができたのだが、生まれたときの痛みと疲れで俺は気を失うように眠った。





 それからしばらくして


 次に目を覚ますと隣には母親であるジェーンがおり、一緒になってベットで寝ていた。


「う・・うぅ」


 赤ん坊ということもあり、舌を上手く使うことが出来ず、お腹が急激に減っていることもあり。


「うぎゃ~、うぎゃ~」


 泣いて訴える。


「まあ、お腹でも空いたのね。今おっぱいをあげますね」


 はっきり言って、記憶が残ったまま赤ん坊になるのは、この上なく恥ずかしいとは思いつつ、食欲には勝てず、おっぱいを吸ってお腹を満たした。


「まあま、ほんと元気な子」

「なあ、ジェーン。この子の名前なんだが、アレクにしないか?」

「アレク?いいわね。じゃあこの子は今日からアレクよ」

「ああ。二人で愛情かけて立派な子に育てような」

「うん」


 そんな父と母の会話により、俺はアレクという名前で、この新しい世界『レグス』で暮らしていくことになった。


読んでいただきありがとうございました。

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