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第7話

≪正暦124万2247年5月30日午前2時 正界 ルドルーエ≫

「見張り2を確認、排除完了」

「周囲に敵影無し」

「総員……突入せよ」

 闇夜の中に蠢く複数の影。

 彼らは皆、バージェスのウラーミル支部に所属する暗殺者たちだ。このような光景がほぼ同時に、ルドルーエ各地で見られた。

 

 ルドルーエはウラーミル付近に存在する都市である。

 ウラーミルの裏社会で勢力を安定的に維持できるようになったバージェスは、ルドルーエに勢力を伸ばすことを決定した。作戦内容は“電撃戦”。敵対勢力の拠点を複数個所同時に攻撃し、混乱の間に拠点を盤石にするというものだ。新興勢力であるバージェスは今まさに勢力を拡大している最中である。以後迅速に橋頭堡を作るための試金石として今回の作戦が立案された。投入戦力は周辺拠点から選び抜かれた精鋭たち。彼らが引き抜かれれば各拠点の戦力がかなり低下するため、速やかに復帰しなければならない。まして、壊滅するなど以ての外だ。戦力は“ただ存在するだけ”でも意味があるのだ。

 アークレックこと雫も選抜された。彼女たちウラーミル支部第1班の目標は裏市場。正界でも違法の物が取引されている場所だ。ここを襲撃し、商品を全て駄目にするのが彼らの任務だった。


「こちらシスタージラフ、3階にて集会所確認。どうしますか」

「こちらロイビクター。何人ほどいる?」

「こちらシスタージラフ。約20人ほどです」

「こちらロービクター。了解……ほかに3階にいるのは誰だ」

「こちらアークレック。3階にいます」

「こちらウルブズキラー、同じく」

「こちらロイビクター。シスタージラフ、アークレック、ウルブズキラーは3階の敵を眠らせろ」

「シスターシスタージラフ了解」

「アークレック了解」

「ウルブズキラー了解」



「おい、交代の時間だ」

「ん、了解。後は頼んだぞ……ッ!!」

「……!!」

 雫は近くにいた見張り担当と思われる二人を眠らせた。

 今回は敵をあまり刺激しないため、構成員の殺害は最低限にとどめるよう命令されていた。そのために雫達は即効性の睡眠薬をいつもより多く持参していた。

「……ここは倉庫ね、ここには何が……?」

 見張りから鍵を奪い、倉庫らしき部屋を開けた瞬間――――――雫は固まった。


「こちらキャンホース、倉庫発見。中身はヤクと思われます」

「ロイビクター了解。ヤクはご法度だ。廃棄しろ」

「キャンホース了解」

 数秒後、通信を聞いて我に返った雫はようやく報告する。

「こちらアークレック、倉庫発見。

 ――――――人です」

 そこには複数の牢があり、大勢の人間が監禁されていた。身なりを見るに、皆どこかでさらわれた人々なのであろう。この裏市場では人身売買も行われているそうだから、非合法の奴隷として売られる予定だったに違いない。

「ロイビクター了解。

 奴隷か?」

「こちらアークレック、間違いありません。

 どうしましょうか?」

 雫は個人的には助けたかった。捕えられていたのは比較的若いものが多く、中には彼女と同年代らしき少年少女の姿もあった。ほとんどの者は寝入っているが、起きている者もいた。

「こちらロイビクター。

 逃がせ。この建物の中の敵はほぼ制圧した。そろそろ撤収開始だ、行くぞ」

「アークレック了解」

 指示は逃がすこと。彼らも商品だ。逃がすことによって経済的な打撃を与えることが出来る。


「あの、あなたは……」 

 一番近い、起きていた少女が雫に問いかける。

「説明している時間は無い。

 逃げなさい。これからすべての鍵を開ける。仲間がこの建物の中の人間はほとんど眠らせたけれど、音を立てないように。

 運が良ければ逃げられる。わかった?」

 少女が頷いたのを確認し、雫は牢の鍵を全て開けた。

 

「あの、助けていただいてありがとうございます」

 撤収寸前、最初の少女が雫に礼を言った。

「礼には及ばない。まだ助かったわけではないことを忘れないで。逃げおおせることだけを考えなさい」

「いえ、そんな……

 あの、……お名前は?」

「アークレック」

 

 自分のコードネームを伝えて、雫はすぐに撤収した。

 彼女らが逃げおおせれればよいが。そう願いながら。

 










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