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第4話

≪正暦124万2245年10月30日 正界 ウラーミル≫

「……以上が最新の報告になります。 

 またここ数日、連中の動きが活発化しているという情報が入っております。護衛を強化することをお勧めします」

 ウラーミルの半分を牛耳るヴァ―シリー・メンシコフは秘書から報告を受けていた。

「護衛の強化……?つまり君は、連中の次の手は私の暗殺、とでも言いたいのかね?」

「あくまで可能性の話です。抗争の準備にしては規模が小さいとのことで」

「私の鉄壁の警備を破れるとでも?」

「蟻の穴から堤も崩れる、と言います。用心に越したことはありません」

「わかっているわかっている。伊達に長生きはしていないからな」 

 メンシコフは大多数の裏社会の要人と同じく、人を信用しない。彼の場合は度を越しており、そのため部下からも恨まれることがある。そのくせ自信家で、自身の警護には絶対の自信を持っていた。

「ご苦労だった。忠告は受け入れておこう。下がっていいぞ」

「……失礼します」

 不満げに退出する秘書を見送った後、メンシコフはひとりごちる。

「……そろそろ奴も焼きが回ったか」

 彼は今まで何人もの秘書を雇ってきたが、数十年勤め上げた後、全員が病死している。

 変死ならともかく、病死であるため表沙汰になることも少ない。


「失礼します」

 そう考えていたところに、秘書が戻ってきた。

「何だ、まだ何か――――」

「お届け物です」

 差し出された箱を受け取ろうとした時、

「――――死んでください」

 斬撃がメンシコフを襲った。



「貴様!!裏切ったな!!」

 秘書の繰り出したナイフを辛うじて避けたメンシコフは大声で警備を呼ぼうとする。

「無駄ですよ。今頃仲間が交戦中です。来るには時間がかかります」

「何……だと……?」

 しかし、そのころ警備についていた者たちは侵入者への対応に忙しく、彼のもとには来れなかった。

「くっ……覚えておけ!!」

 形勢不利を悟ったメンシコフは即座に逃走に移る。

「逃げられましたか……と言っても出口は封鎖済みなんですけどね」

 秘書の言葉は正しかった。というのも、いくつも用意してある隠し出口も含め、この建物の出入り口には罠が仕掛けてあったからだ。

 

 30分後。

 脱出した秘書が合流地点に着くと、すでに男が待っていた。

「来たか」

「ええ。残念ながらしくじってしまいましたが……」

「まあ、内部情報をありがとよ。おかげで色々と頂戴できたわけだ。

 で、礼と言っては何だが追加報酬がある」

「追加報酬ですか!?それは……」

 その時不意に衝撃が走り、下を向いた彼は――――――腹に刺さったナイフを見て、絶句した。

「な、何を……」

「ボスを取り逃がした」

 男の声色が急変し、冷たいものになっていた。

「お前が教えてくれた隠し通路は全てではなかったようだな」

「う……嘘だ!!私は知っていることを全て」

「奴の事だ。裏切り者が出ることだって想定しているだろうさ。

 今頃地下通路でまったりとしているんじゃないか?お前が取り逃がしたのが痛かったな。

 まあいずれにしろお前には死んでもらう予定だった。予定より少し早くなっただけだ」

「そ、そんな……ま、待て、待ってくれ!!」

「良い夢を」

 短く言うと、喉を切り裂いて止めを刺した。

「さて、どうすっかな……役立たずのせいで今までのがすべてパアだ。やり直しだな」

 男の考えでは、メンシコフは目論見通りすでに何処かに雲隠れした後だと思っていた。

 事実、メンシコフの目論見はほぼ成功していた。

 だが、一人の刺客の存在が、彼の計画を全て狂わせた。

 




 


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