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現代もの

マジ勘弁して!

作者: 花ゆき

 学校の帰宅途中、魔法少女爆誕の場面に遭遇してしまった。当の本人は世界の終わりとばかりに固まっている。


「あ、うん。何も見てないから。ご近所さんにも、まるくんのお母さんにも秘密にしておくから」

「終わった……」

「どうしたキュルン?」


 うわぁ、まるくんの肩にいるコリスがしゃべった。


「えっと、そういう多感な時期だもんね。仕方ないよね。うん、スカートとっても似合うよ」

「や、やめてくれ! そんなフォローいらないから! そんな目で見ないでくれ!」



 思わず目をそらさずにはいられない。ご近所さんの子、まるくんは小学六年生。今は魔法少女的なヒラヒラした可愛いピンクのコスチュームを着ている。サラサラの黒髪の頭の横には、大きなリボンがある。まるくんがもつハートのスティッキは、母譲りの優しい顔立ちに似合っていた。ただし、まるくんは男だ。なぜ、こんなことになったのか。


「世の中には女の人の服を着るのが好きな人もいるし、まるくんも気にすることないよ」

「ちがっ! 誰がこんな服、好き好んで着るか! キュッピー! 元の格好にはどうやれば戻るんだ!」


 まるおくんは切羽詰まったように、コリスを掴んでブンブンと揺さぶっている。


「駄目キュルン。ロンリーブレイカーを倒さないと戻れないキュルン」

「何だソレー! 優香さんの前でこんな格好してられるか!」


 私も見たくなかったよ。妙に似合ってるから始末が悪い。ここは立ち去るが正解だろう。あっ、数学の宿題やっておかなくちゃ。



「えっと、まるくん頑張ってね」

「み、見ないでくれ!」

「マルオ、このお姉さんに協力してもらうといいキュルン」

「は? 何を」

「ラブ☆マジカルは自分の恋の力を魔力にするキ」


 まるくんが慌てたようにコリスの口を塞いだ。コリス窒息死しかねないよ。


「キュッピー! 優香さんの前でな、な、何を言おうとしてるんだ」

「マルオはこのお姉さんのことがす」

「頼むから黙ってくれ」


 まるくんとコリスは仲がいいみたい。美少年と小動物のたわむれって、目の保養だなぁ。


「と、とりあえず早く終わらせる! 恥の時間を少しでも短くするんだ!」


 そういう方向で話がまとまったらしい。



「どうやって倒せばいいんだ?」

「スティッキはマルオのラブパワーに反応するキュルン。マルオがドキドキするといいキュルン。お姉さん、世界平和のためと思ってマルオにキスしてほしいキュルン」


 社会的に死ねと言われました。いやあのね、高校生と小学生ってアウトだと思うの。


「キュッピー! ななななな何を言ってるんだ!」

「ほっぺでいいキュルン」

「それならいいかなぁ」

「いいの!? おねシャス!」



 目を固く閉じたまるくんのまぶたが、ピクピクと震えている。そんな彼の頬に軽く唇を落とした。彼はその感触に驚いたように目を開け、キスした左頬をおさえて緩やかに微笑む。思わず、巻き込まれたというのに応援したくなった。


「頑張ってね」

「はい! 今なら百人力だ!」

「やったキュルン! ラブパワーマックスだキュルン。ロンリーブレイカーを救うキュルン!」 


 まるくんがかざしたスティッキから、ハートの光線が出て、ロンリーブレイカーを包んだ。光がはれた時には、跡形もなく消えていた。


「浄化されたキュルン。マルオ、最後に決め台詞だキュルン」

「言いたくねー」

「魔法少女のお約束は守ってもらうキュルーン」


 コリスの目が怪しく光った。するとまるくんは、肩幅に足を開いて笑顔で言い放った。


「世界の愛は私が守るわ! ラブ☆マジカル」


 目の横でピースサインを決めて、完璧な決め台詞だった。その代わりにまるくんは何かを失ったようだ。


「勝手に操るな!」

「この調子で頑張るキュルン」


 それから、私は協力者としてまるくんに協力して、彼は無事ロンリーブレイカーを全て倒した。







 数年後、まさか自分にふりかかるとは思わないよね。


「ラブ☆マジカル、ユカ参上!」


 うっわぁ、ありえない。フリッフリのピンクなんて、キャラじゃないわ。大学生で魔法少女って……。


「優香さん、いいよ! 視線こっち!」


まるくんがスマホで連写してる。あの、本当やめてください。


「さぁ、マルオでラブパワーチャージだキュルン!」


 今なら前よりマシよね。小学生とキスするのに比べたら、高校生なんてマシよマシ。それなのに、私は身動きできなかった。焦れたようにまるくんが動く。



「優香さん、頑張ってね」

「ん!? っ……」


 誰がこんなディープなキスをしろと言った! いやいや、必要なのはラブパワーなわけで、エロスはいらないってば。


「ごちそうさま」

「ラブパワーマックスだキュルン。これでサクッとやっつけるキュルン」

「あ、あ、ありえないーーー!」


 おあつらえむきに出てきたロンリーブレイカーに向かって、駆け出す。


「マックスだなんて」


 スティッキで、ロンリーブレイカーの頭を強打。


「まるくんのこと」


 ひるんだ隙に蹴飛ばす。


「好きみたいじゃないのー! ラブ☆マジカル!」


 スティッキからハート型の光線が出て、ロンリーブレイカーを飲み込む。消滅した。


「そうじゃないキュルン?」



 そんなことは! お姉さんは、まるくんがイケメンに育って想定外です! 最近まるくんと話すと不整脈になるから、距離をおいてたのが裏目に出たかな。いや、リハビリを重ねれば大丈夫!


「お姉さんのように思ってたけれど、いつか好きになってた。優香さんのラブパワーの源になりたい」

「えっと、弟分みたいに思ってたから」

「なら、ラブパワー充填できないよね? 見込みはあるってことでしょ?」


 どうしてこうなった。





 魔法少女コスチュームに憤死ものだったけど、ロンリーブレイカーを倒すうちにそういう仲になってしまいました。


「まるおと一夜過ごした次の日は無敵だキュルン」

「やめて、お願いだから黙ってて」

魔法少女になったのを見られた男の子を書いてみたくて、書きました。そして人事だと思っていれば自分にふりかかるというのも書いてみたくて。楽しかったです(笑)

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