後宮での生活 20
いつもより少し短めですが、読んで頂けたら嬉しいです。
近衛騎士の推薦状はルーカスに一任し、蛍達は残りの書簡の山を片付ける事にした。
「まず、書簡を三種類に分けてください、殿下の花嫁目的の書簡、行儀見習い目的の書簡、婚約者のいる方の書簡です、婚約者のいる方は緑の書簡、行儀見習いの書簡は赤と色で分けてありますので、そのまま分けてください、そして花嫁目的の書簡ですが、サフィロ」
クルスの言葉に、片付けを終えたサフィロが二種類の書簡を出してきた、それぞれの肖像画と令嬢の釣書を見せてきた。
どう違うのかと見比べるとすぐにその違いが見えてきた。
片方の肖像画の令嬢はこれでもかと着飾って描かれているがもう片方は華美な服装ではないが令嬢の特徴をきちんと捉えた肖像画だった。
「これを現時点での判断材料にして仕分けてください」
その言葉を合図に、一斉に仕分けが始まり、大量の書簡を分けていく中で、サフィロが一通の書簡を手に取り中身を見た瞬間、すぐさまクルスの方に振り向いたが、当の本人はサフィロの視線に気づくことはなく、もくもくと仕分け作業を行っていた。
そんなサフィロの表情に気が付いたリーリオは、サフィロが持っていた肖像画を覗き込んだ瞬間、ヒィっと悲鳴を上げそうになったが、サフィロは慌てて手でリーリオの口を押え、悲鳴が漏れるのを防いだが
「何をしているんですが? サフィロ……」
「は、はい……実はこれが行儀見習いの書簡の中にありしまして……」
魔王もといクルスにバレてしまい、サフィロは諦めて持っていた書簡を差し出し、横に居た蛍と供に書簡をみた瞬間、クルスは真っ青な表情になりながら書簡を凝視し、蛍は苦笑いを浮かべていた。
「な、な、なんでこの令嬢が行儀見習いに、先ほど書簡を破棄したはず、もしや殿下にまでその毒牙を?」
「落ち着いてくださいクルスさん、さすがに毒牙って、一応貴族のご令嬢なんですから、もしかしたら純粋に行儀見習いの可能性もあります……よ、多分」
蛍のフォロー? を後押しするようにサフィロもフォローを始めた。
「そうですね、私も現時点では行儀見習いの可能性は捨てきれないです、閣下には負担になるかもしれませんが、もう少し様子を見ませんか? 」
サフィロや蛍の言葉に多少冷静さを取り戻したのか、渋々書簡を仕分けされている場所に書簡を置き、また仕分けを再開した。
その様子にサフィロもまた安堵の笑みを浮かべながら仕分けを再開し、蛍も仕分けを再開しようとすると、リーリオに手招きされたので近づくと、青ざめた表情を浮かべていた。
『女って恋すると豹変するものなかのか? 』
『あれは例外、全ての女性がああでは無いよ』
『じゃないと、俺は本気で結婚するのが嫌になる』
『まあ、そうだよね・・でも一生懸命な気持ちはわかるんだけどね……』
全ての仕分けが終わる頃には日も暮れ辺りが夕日に染まっていく中で、疲れたような表情を浮かべながら、蛍はクルスに問いかけていた。
「私が行儀見習いの候補を選ぶんですか? 普通はリーリオや他の方が選ぶものでは? 」
「殿下では無理です、ただでさえ後宮にいる令嬢方に怯え……遠慮している面がありますので、それに女性の視点の方がシビアに判断して頂けると思いましたので、そういった意味では蛍さんが適任かと思いますが」
「まあ、それは、ですがそれでしたら、王妃様にお決めいただくのが筋ではないですか? 」
リーリオはクルスの言葉にムッとしたような表情を浮かべたが、続く蛍の言葉に真っ青になりながら首を横に振った。
「絶対に駄目だ、母上に頼むと面白さ重視で候補を決めるに決まっている」
断言するリーリオの言葉にクルスも同意するように頷き、その場にいた誰もが同じことを思った。
(((王妃様ならやりかねないと)))
結局、蛍も否定することが出来ず、そのまま蛍が候補を選ぶことになり、すべての書簡は蛍の宮の書斎に運ばれた。
「ご安心ください、最終判断は私が一任されていますので、まずは蛍さんの勘で選んで頂けたら、そうですね、20人ほど選んで頂けますか? 」
「うう、分かりました、でも正直自信ないですよ」
「大丈夫ですよ」
気のせいと思いたいけど、副音声が聞こえた気がして、青くなったのは言うまでもない。