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後宮での生活 10

 居なくなっていたと思っていたミリアが、ワゴンにお茶のセット一式を持って戻ってきた瞬間、場の雰囲気が少し和らいだような気がした。

 そんな中、ミリアの姿に蛍は内心、逃げたかもと思ったことを恥じていた。

 ワゴンにはリラックス効果の高い紅茶と疲労回復の紅茶が用意されており、ミリアは迷わずリラックス効果のあるお茶をクルスに疲労回復の紅茶を蛍達に渡していた。


 紅茶美味し~~、この雰囲気の中でもミリアの淹れてくれた紅茶は落ち着くな

 それにしても何があったんだろう、良い事ではないのは判るけど、さっきの怖い人? の事あるし、多分……リーリオか後宮関連なんだろうけど、この雰囲気は怖すぎます。


 紅茶で場が少し和んではいたが依然クルスさんは渋い表情を浮かべ、リーリオ達はいまだ表情を青ざめていた。

 さすがにこれ以上いてもまずいと思い、ミリアと一緒に蛍はその場を後にしようと思ったが、ルークスによって阻まれてしまった。

 結局、逃げる事も出来ず、これ以上この雰囲気の中でいるのも耐えられないので、思い切って蛍はクルスに話しかけてみた。


「それで、何かあったんですか?」


 恐る恐る聞いた瞬間、クルスはとてもいい笑顔で振り返り、びしっと大人しく座っている二人を指差した。


「内容はともかく、原因だけは判りました、お疲れ様です」


 大体の予想が出来た蛍は深々と頭を下げたが、その表情は二人同様真っ青だった。

 蛍の言葉にクルスは気持ちが楽になったのか、うっすら目に涙を為ながらうんうんと一人頷いていた。

 その様子に、驚きながらもミリアに甘い物を頼み、ルーカスと共に別室に連れて行かせ、いまだ青い二人の前に仁王立ちした。


「で、何をしたの二人して」


 さすがに、先ほどのクルスの様子に改めて罪悪感を感じたのか、二人は少しずつ話し始めた。


 私達が茶会を行っていた時を利用して、ひっそり? とリーリオの花嫁大作戦を開始していたらしい、クルスやルーカス達の人脈を利用して行う予定だったらしいのだが、最初は有力貴族という触れ込みで行くはずがリーリオがぼろを出したのか事前に情報が洩れそうになり、とっさにサフィロがクルスの為のお見合いと誤魔化したまでは良かったのだが、相手の令嬢がその話を本気にしてしまい、事前の打ち合わせに出向いた際に、その令嬢に食いつかんばかりの勢いで迫られそうになり、全くその事を知らなかったクルスは真っ青になりながら逃げ出したらしい(ちなみに、執務室の側にいたのがその令嬢との事)

 何とか王宮に戻り、全ての事情を知ったのは、私達が来る少し前で、執務室の陰でひっそり? と佇んでいる令嬢の姿に、驚き青ざめながら、すぐさま原因で在ろう二人を問いただしたら、自分的に聞きたくなかった事実に卒倒しそうになりながら頭を抱えている時に、私達が来たらしい。


 さすがに蛍は何も言えずに項垂れるしかなかった、花嫁大作戦にも突っ込みをいれたくなったが、それ以上に、この状況をどうにかしないといけない、部屋の側にいる令嬢も怖いし


「たく、何をしているんだか……クルスさんが怒るのも無理ないよ、部屋の外にいる令嬢の様子を見た? 令嬢には申し訳ないけどね、100年の恋が覚める以前に霧散しちゃうくらいだったよ、もし見ていないのなら見てきなさい」


 凄みのある声で言われた二人は隠し扉から、ひっそり? と待ち伏せしている令嬢の様子をこっそり覗いた瞬間、一瞬にして扉を締めて戻ってきた(ものすごい速さで)


「あ、あ、あれは何だあれは」


 サフィロのセリフに蛍もリーリオも静かに遠い目をした


「「恋する乙女のある意味進化版です」」


 蛍達の言葉にサフィロは何も言えず、そしてリーリオもまたこの状況に項垂れていたが蛍は別の事で頭が一杯だった。


 ここの人たちの恋愛の仕方に疑問しか浮かばないけど、まずはあの進化系令嬢をなんとしないとクルスさんも復活出来ないだろうし、かと言ってこの二人を送り込むのは不味い。

|私達≪女性陣≫が行くのは問題外だし、王宮に来れるって事は爵位の高い女性だからきっと父親の用事に便乗してるはず。

 それだったら、なおさらクルスさんじゃないと父親と連絡取るのは不自然だよね……

 あんまり手荒な真似は出来ないし、身代わりも後が怖い。


 青ざめる二人をしり目にどうしたらお帰り願えるか考えていた時、別室からミリアが戻ってきて、蛍の元に歩み寄った。


「蛍様、よろしければこれをお使いください」


 そう言って差し出されたのは小さな香水の様なものだった。


「これは何? 香水の様な物にも見えるけど」


 受け取った小瓶を眺める蛍にミリアは笑みを浮かべながら首を横にふった。


「それは香水ではなく、眠り薬です。無味無臭で人体に影響のない私のオリジナルですので、これをあの令嬢の周りでふりかけ、眠ったのを確認して放……ではなくどこか安全な場所にお連れしては如何でしょうか? 」


何でも出来るんですね、ミリアは、ある意味最強なお人かもしれないけど、放置は不味いと思う放置は……まあ気持ちはわかるけどね、部屋に入るだけで射殺すような目線で見られたものね、私達……


「そうだね、その案でいくしかないかな、まずミリアはあの令嬢に薬を、眠ったのを確認したらサフィロさんの魔法とかで移動できませんか? 安全な場所が良いですね」


 蛍の言葉にサフィロは比較的、人目に留まりやすい東屋を提案し早速行動に移ることになった、まずミリアは令嬢に眠り薬をふりかけた、本来ならほんの一吹きで眠るはずが、中々眠らず一瓶使ってようやく眠ったのを確認してから、サフィロは呪文を唱え令嬢を東屋に転移させ、蛍は念のためミリアに令嬢付の侍女に東屋に居るのを伝えてもらうように頼んだ。

 全ての事が終わり、無事に令嬢が居なくなったのを確認して、蛍たちはやっと安堵の笑みを浮かべだが、令嬢が消えたのを聞いて戻ってきたクルスのお説教がリーリオ達を待っていた。


 さすがに同情できなかった、蛍はルーカスとミリアを連れて別室に避難して居たのは言うまでもない。


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