後宮での生活 9
お茶会が終わり、重い足取りで自分の部屋に戻ると、すぐに着替えベットに倒れこんだ、疲れ切っている蛍の様子にミリアは風邪を引かないように薄手の毛布を掛け、そのまま寝室を後にした。
どれ位の時間がたったのだろうか、目を覚ますと、外は青空からオレンジ色の空に代わっていた。
「起きられましたか? 今、モモネのジュースをお作りましたのでお持ちしますね」
ミリアの言葉に眠い目をこすりながら、ありがとうと伝えると軽く体を動かし始めた、毎日ドレスにコルセットの生活は肩が凝ってしまうと思いながら、ソファーに足を伸ばして座った。
飲み物を持ってきたミリアもさすがに今日ばかりは注意せずに飲み物を蛍に渡した。
「ありがとう~、美味しい~、あっ、そうだミリア達に聞きたいんだけど、今この後宮に居る候補たちのグループや関係性を教えてくれる? まあ、互いにライバルなのは同じだと思うけど」
蛍に二人は簡潔に候補達の関係性を説明してくれた。
個々で仲の良い者達もいるがそれを抜かすと大体3~4のグループになるらしい、それぞれのリーダー的存在は爵位の高い家柄の令嬢らしい。
ちなみ、バカ令嬢はアイーシャのグループらしいが、先ほどの茶会でかばう様子もなく一緒に笑っているような雰囲気だったのを思い出し、気分が悪くなる。
嫌な気分を払拭するように、モモネのジュースを飲みほし、衣裳部屋に向かった……ちなみにこの衣裳部屋は私の元居た世界の寝室より広かったりする。
最初に見た瞬間言い知れぬ悲しみを覚えたものだ……何度も見てもその広さと衣装の数に圧倒されながら一番奥から1着の衣装を取り出した。
「これこれ、これが無いと始まらない~」
鼻歌を歌いながら早速着替えた姿は黒髪の侍女姿になっていた。本来の髪と目の色に戻るのは最初に試した時以来なのでちょっと浮かれた様子の蛍にミリア達は何も見ていませんを貫いていた。
やっと自分の行動の恥ずかしさに気づいたのか、頬を紅くしながらコホンとわざとらしく咳をした。
「ごめんね、ちょっと王宮に行ってくるからその間、留守番をお願いします」
フィアに留守番をお願いすると、そのままミリアと一緒に侍女に変装して王宮へ繋がる通路を歩いていると、蛍達は見知らぬ侍女に呼び止められた。
「ミリア、この子新入り? 何で新入りが王宮に行こうとしているのよ」
「ラーラ、彼女は最近正妃様付きになったエストよ、私達は正妃様からの手紙を殿下にお届けする為に王宮に向かっているのよ」
蛍はラーラに会釈してそのままミリアと供に行こうとすると、ラーラは蛍が持っていた手紙を奪い取り破り捨てた
いきなりの行動にあ然とする蛍にミリアは静かにラーラの目の前にたった。
「あんまり、いい気にならない事ね、正妃様になるのはアンタ達の主じゃないの、正妃にこそ相応しいのは、アイーシャ様だけよ」
そのまま、言いたいだけ言ってその場を去って行った。ラーラが見えなくなったのを確認してから蛍はミリアに声をかけようとしたが、どす黒いものがミリアの周りに渦巻いているように見え、蛍は何も言わずにただ黙ってラーラに対してちょっとだけ同情した。
(いや、実に見事なまで悪役侍女のはずが、雰囲気だけだどミリアの方が……)
蛍はそれ以上何も考えずにただミリアの背を押しながら、王宮に向かったが中々、ミリアの怒りは収まらず、重苦しい雰囲気のまま宰相でもあるクルスさんの執務室に着いた。
ミリアは部屋をノックして、そのまま蛍と供に執務室に入って行ったが、それを影から眺める人物が居たことにおもっきり気づいていたが、|顔≪表情≫が怖かったので気づかないふりをする蛍達だった。
そのまま執務室に入ると、青ざめたリーリオとサフィロ、そして側で静かに佇んでいるルーカスが居たが、なぜかクルスだけは先ほどのミリア以上に黒い物を漂わせながら座っていた。
何も言わず元来た道に戻ろうとしたが、ミリアにエプロンをしっかり握られていて、逃げれなかった。
(うう、何この雰囲気……良くルーカスさん平気……じゃないですね……でもどうもできませんよ、私には声かける勇気何てありません)
つい、目の前の事から視線を逸らし、側にいるルーカスさんに視線を向けると、懇願するような視線を向けられ蛍は思いっきり首を横に振った。
蛍はミリアに助けを求めようと思ったが、いつのまにか居なくなっていた。
(ちょ、どこ行ったのよ~~ミリア~~~)
ミリアは蛍が逃げないように阻止した後、お茶の用意をするために静かにその場から離れていた。
蛍がルーカスとアイコンタクトをとっている間に……
その重苦しい雰囲気はお茶を入れたミリアが戻ってくるまで続き、蛍はさらに疲労感満載になっていた。
(今日は厄日だ~~~~)