職安に行く途中
就職難。ニュースで時折話題に上がる問題……それは今の私にとって大問題の話題でもある。
白澤蛍(27才)現在無職……
「このままじゃ、路頭に迷ってしまう」
親もいない、あまり親しい友人もいない。そんな中で一人で暮らすのは生半可な事ではない……
歯を食いしばるように頑張ってきたのに、この不景気の影響で仕事をリストラされた。
(今は、両親が残してくれた遺産があるけど……それだっていつまで持つかなんてわからないんだし、でもこの不景気に加え就職難…どうしたら良いのかな……)
そう心の中でボヤキながらいつものように、職安に向かっていた途中、いきなり目の前が真っ暗になりそのまま意識を失った。
気づいたら、ふかふかのベットに横たわっていた。寝起きの様なボーっとする頭で周りを見回しても、全く身に覚えのない場所だった。
「ここ、どこ?……病院ではないみたいだし」
ヨーロピアン風の高そうなアンティーク調の家具でまとめられた豪華な部屋に、女の子なら憧れそうな天蓋付ベット……
あまりの事に目は覚めたが頭が追い付かず、ほっぺを思いっきりつねってみた…
「痛いってことは、夢じゃないんだ。映画のセットって感じでもないし、誘拐でもなさそうだし、こんな豪華な病院なんて近所に無かったはず」
(親無し遺産ちょっぴりの私を誘拐してもまったくもって意味がないものな)
そんな事を思いながら、ベットから降りて窓辺に近づいた瞬間、ノックの音と共に一人のメイド服の女性が部屋に入ってきた。
咄嗟の事に身構える私に、その人は笑みを浮かべながら会釈をしてきた。
「失礼します、お声をお掛けしたのですが、御返事なかったもので。 お目覚めのようですし、差し支えなければ主の元にご案内したいのですが、よろしいでしょうか? 申し遅れました、私は侍女をしております、ミリアと申します」
恭しくお辞儀をしながら言う侍女さんに、ただ頷くしかできなかった。
どちらにせよ、状況を確認するにはそれ以外に手段がない。ちょっと冷静になりつつある頭でそう考えていた。
ミリアさんに連れられて、広い廊下を歩くなかで気づいたのは窓から見える景色に見おぼえない景色。
それに案内してくれる侍女のミリアさんは綺麗なピンク色の髪にとがったお耳……その姿は大好きなファンタジーに登場するエルフそっくりって 内心騒いでいたら、本当にエルフらしい、ついつい目線が耳から離れなかったのがバレていたのか、苦笑しながらで教えてもらった。
自分の知らない場所や本の中のはずの種族が居る、どんどん突きつけられる状況にまず思うのは帰れるのかだった……無職のままはまずい。
でも、この後の私にはそんなの吹っ飛ぶくらいの事が待ち受けてたなんて知りもしなかった。
知って居たら、私は全力で逃げだしていたと思う、絶対に