後宮での生活 3
謁見も無事終わり、また同じ道を戻る最中、自分達に向けられている視線が数倍に増え、威圧感も半端なくなっていた。
蛍はそんな視線にうんざりして、わざとリーリオの腕に自分の腕に絡め、視線を向ける者達に見せつけるように歩き出した。
リーリオはそんな蛍の様子に驚きながらも、何も言わずに供に西の宮に戻っていったが、陰から見ていた令嬢たちは悔しさで一杯だった。
蛍は部屋に戻るとソファーに寝っころがり、軽く腕を回していた、ミリアはそのまま紅茶を用意しに台所に向かい、リーリオは蛍の向かいのソファーに腰かけた。
「蛍、お前も淑女ならだらしない恰好で座るものではないぞ」
「良いの良いの、ここで猫かぶる必要もないし、私のような平民は高貴な人に会う機会なんてまずないから、緊張して疲れちゃったんだもの」
蛍の言葉に、俺はどうなんだと突っ込みたくなったが、流されるのが目に見えていたので諦めるリーリオだった。
そんなリーリオをしり目に蛍はさすがに座りなおし、ミリアの淹れてくれた紅茶を飲みながら、先ほどの謁見を思い出した。
「ねえ、さっきの謁見の間に居た人達の中に後宮に自分の娘を上げている人達がいるよね、その中で一番厄介な人を教えて」
蛍の問いかけにリーリオは難しい表情を浮かべながら、一人の人の名前を挙げ、蛍はその名前に部屋に届いていた手紙を思い出し、手紙をリーリオの目の前に置き、楽しげに笑みを浮かべた。
「そのブレリオン伯爵のお嬢さん、アイーシャ・ブレリオン嬢だっけ? その人から茶会に招待されているの、王妃様もお呼びした後宮での歓迎会で、もちろん主催はアイーシャ嬢、出席しますよ伝えてあるけど、これは何も起きないとは思えないね」
まあ、それだけ強引に出来る後ろ盾がありそうって事は、茶会でも色々やってくれそうだよね、めんどくさい展開にならなければ良いけど……無理かな
先行きに不安を感じながら招待状を見るリーリオの様子に苦笑しながら、安心させるように頭をポンポンと撫でた。
「落ち着きなさいって、貴方は王子なんだよ、たしかに肉食獣系の令嬢が怖いのわかるけど、もっとどしっと構えてなさい、後宮は私の戦う場所なの、大丈夫だって」
ちょっと男らしい? 蛍にリーリオは心なしか顔が熱くなるのを感じながら、ただ頷くしかできなかったが、さっきよりも気持ちが落ち着いていた。
「で、今日はこのまま泊まっていく?」
気分を変えようと紅茶を飲んだ瞬間、蛍の言葉に驚いて吹き出してしまった、幸いな事に紅茶は冷めていたのでやけどの心配はなかったが、蛍は慌てたミリアが用意してくれたタオルで顔を拭きながら、真っ赤になっているリーリオにため息をついた。
「あのね、何を想像しているの何を、たしかに私の言い方も悪かったけど、ただ泊まるだけ、さすがに周りの事を考えて泊まるようにクルスさんにも言われてたでしょ」
嫌~、本当に純情と言うかなんと言うか……よく令嬢の魔の手から逃げれたものだわ、今度聞いてみたい気がする……はあ~
まあ、ミリアに簡易ベットをあの部屋に用意して貰ってるからそれで寝てもらう予定だけど……クルスさんから話聞いてなかったのかな? きっと言ってないな
それでも、まだ慌てているリーリオにミリアが説明する姿に、へタレだと改めて思う蛍だったが
これ以上話に付き合っていても大変だと思い、蛍はさっさとフィアを連れて着替える為に別室に移動した。