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後宮での生活 1

 その後も王妃様と時間が経つのも忘れて色々話が弾み、そろそろ戻らないと行けない時間になっていたのか、気づいたらミリアが迎えに来てくれていた。

 名残惜しい気持ちいなりながら、またお伺いすることを王妃様と約束して、東の宮を後にした。

 ミリアのおかげで、迷子になる心配もなく戻る事が出来たけど、早く道を覚えないと……迷子にだけはなりたくない。

 ミリアの話ではリーリオが後宮に上がってすぐに自分の元に来るのは、何代か前の正妃様からの慣例で、その時の正妃が夫になる王子に手料理を振る舞ったのがきかっけだったらしい


 まあ、出来た料理はその場で食べた方が美味しいけど、そのまま泊まるわけではなく、王様との正式な謁見が済むまでは寝室をともしてはいけない、料理もそうだけど、王家の決まりはややこしい。


 部屋に戻り室内用のドレスに着替えると、フィアが手際よく淹れてくれた紅茶を飲んで、蛍はようやく張が解れたのか、大きく背伸びをしてソファーに深く座り直し、時間にも余裕があったので貴族一覧の本を読みなおしていた(まだ覚えられないので)

 夢中になっていたのか、ミリアに声をかけられるまで気づかなかったが、もう日が落ち、夜になろうとしていた。


「蛍様、殿下がお見えになるまで、時間がありませんが、よろしいのですか?」

「えっ、もうそんな時間なの? 急ぎ始めましょう」


 ミリアの言葉に頷きながら、蛍はエプロンを着けて西の宮の食堂専用のキッチンに向かった。

 そこは自分の世界のキッチンとは多少異なる部分があるけど、使い方を習っていたので何とか、ミリア達のサポートを受けながら、料理を作り始めた。


 全ての料理を作り終え、食堂に料理を運び終え、リーリオを呼びに行くと、ソファーに座り、優雅二にカップを片手にぶあつい本を読んでいた。

 普通なら、ランプの光が照らす中で、静かに本を読む姿は一枚の絵の様で見とれそうな、場面のはずが蛍はそんなリーリオに見とれるわけもなく


(絵になるんだけどな、中身がな~私にはどうしてもへタレにしか見えない……もったいない)


 そんな事を思いながら、蛍が声をかけると、本を読むのを止め立ち上るその様子もまた絵になる姿だったが、同時に響き渡るお腹がなる音が聞こえてきたのは、可哀そうなので聞かなかった事にしながら食堂に案内した。(やっぱり勿体ないと、また思いながら)


「美味しそうだな、初めて作ったとは思えないな、でも二人分にしては多くないか?」

「だって五人分だもの、ミリア・フィア呼んできて~」


 蛍の言葉に、ミリアとフィアは護衛で来ていた近衛のルークス・ヒンメルを連れてきた、恥ずかしそうに立っているルークスにミリアはリーリオの横に座らせ、蛍が座るとミリアとフィアも蛍の左右の席に腰かけた。


「最初、この話を聞いたときにいきなり二人きりも緊張するかなと思って、ルークスさんとミリア・フィアに同席を頼んでおいたの、迷惑だった?」

「いや、気を遣わせてすまない、ありがとう」


 蛍の言葉に気持ちが楽になったのか笑みを浮かべながら頷き、食事を始めた。

 初めての料理で皆の口に合うか心配だったが、ミリア達ののサポートもあって、料理は好評だった。

 ルークス達も、仕える主君との食事に多少緊張していたが、デザートを食べる頃には談笑するまでになっていた。


「蛍様、後宮に上がってみて如何ですか?」


 大分緊張も解れたのかルークスが問いかけてきた、それにはリーリオも気になったのか、蛍に視線を向けた。

 蛍はデザートを食べる手を止め、少し考えるようなそぶりを見せ。


「嫉妬と羨望に憎しみの感情のるつぼかな、東の宮は逆に癒しの空間って印象、まあ当たり前だと思うよ、自分たちを差し置いて、何であんなパッとでの女が正妃にって思ってるだろうから」

 

 蛍の正直な感想にさすがにリーリオ・ルークスは青ざめた、あの肉食獣系の令嬢達の視線をそれだけ判りやすく浴びているにまったくおびえる様子がなく、逆に楽しんでいる様にも見えた。

 蛍は二人の様子に気づき苦笑しながら手をふった。


「誤解しないでね、慣れてるわけでないからね、過去に仕事してた時に女性が圧倒的に多かった職場で働いていた事があるから少し免疫があるだけよ」


(免疫付く職場って逆に怖いし、気になる!!!)


 リーリオは蛍の話を聞きながらそんな疑問に駆られたが、人の過去を詮索するものではないと考えるのをやめた、聞いたら聞いたで、余計に恐怖を募らせる予感もしていた。

 さすがにそれ以上その話題に触れることはなく、他愛もない話で盛り上がっていた時、ルークスが時計の様な時間を表す物を見てあわてて立ち上がった。


「殿下、そろそろ戻らないといけません、宰相閣下がお待ちになっています!」

「もうそんな時間か、まずいな」


 慌てる二人を見て蛍は内心、『ああ、この二人もクルスさんが怖いんだな』としみじみ思いながら、片づけを手伝ってくれているミリアに声をかた。


「はい、これ持って行って、クルスさん達用の差し入れが入ってるから、これを賄賂にして謝ったら」


 ルークスに料理が入ったバスケット渡しながらそう言う蛍に二人は大げさな位頷きながら慌てて部屋を飛び出していった。

蛍は二人を見送りながら、クルスさんの怒りの矛先が自分に来ないように、ひたすら願うのだった。


 幸いな事に賄賂が効いたのかリーリオ達も怒られることもなく、逆に蛍にはクルスから礼状が来たので、ホッと胸を撫で下ろすことが出来た。


補足

オーブン・時計は昔の物が現役で使われている設定になっています。

時計に関しては時計の様な物に設定を変更しました(2016,10,10)

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