シーツを持った花子さん
我が校の片隅から火と煙が迸っている。
あそこは件の『三番目のトイレ』があった場所だった筈だ。
何事かと詰めかける野次馬の目を盗んで、焼けた人体が運び出されている。
『なるほど、赤と答えたらこうなっていたのか』
素っ頓狂な僕の呟きが、野次馬の中に溶けて消えていった。
申し遅れた、僕の名前は行橋博人。
この学校の元新聞部員で、残念ながらもう死んでいる。
トイレの花子さんに挑み、死したことで真実を得たのだ。
幽霊の声が聞こえるそこの貴方に、我が校の怪談の真実を広めてほしくてこうして語ることにした。
是非とも最後まで聞いていただけると幸いである。
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『男子トイレの3番目の個室にシーツを持った花子さんがいる』
『夜の10時以降にノックすると居る筈の無い返事が聞こえる』
『花子さんは本当は稲荷様で、油揚げをもっていかないと出で来ない』
これが我が新聞部に寄せられた怪談の顛末である。
大変興味深いが、このままでは記事にできない。少なくとも体験談が必要だ。
ということで、僕がシーツを持ったトイレの花子さんを試してみた。
用務員さんも帰った学校なんぞ打ち捨てられた遺跡並みに侵入が簡単で、あれよあれよとトイレの目の前までたどり着く。
このトイレには結構変な話がある。
大の方をすると低確率でぶっ倒れる、長くいすぎると何かが漏れ出す幻聴が聞こえてくる。
勿論その方が燃え上がる。
明日の一面記事の為に、お土産の最高級油揚げを取り出して例のドアまで近づく。
Hanako has Sheets(花子はシーツを持っている)
いかにも怪しい落書きをされたドアに3回ノックして耳をそばたてる。
「はーなこさん」
すると、一瞬だけ刺激臭がする。
これが第一関門である。
『はーい』
第二関門もクリア、順調すぎて明日の特ダネになりそう。
「でておいで」
『ねえ?』
と、いきなり間延びが消滅した話し声が聞こえてくる。
マジモードになったわけだ。
『服どれにしようかなと思っているんだけど
赤いのがいい? それとも青いのがいい?』
と聞かれたので少し考えこむ。
この時に少しでも『これ赤い紙、青い紙の方じゃね?』と疑うべきだったけど、そういえば珍しいなと思って
「じゃあ青で!」
なんて答えてしまったのである。
その後は何も覚えていない。
気が付いたら病院の中で家族が皆泣いていた。ベッドの上には勿論青い顔の僕。
これで怪談はおしまい。
結局のところ、シーツを持った花子さんは『赤い紙、青い紙』だったんだ。
長くいすぎると赤か青かの幻聴が聞こえ、うっかり答えた人間がぶっ倒れる。
運悪く死んでしまった俺が皆に伝える事は出来ないが
これを聞いた貴方には是非とも『白で』と答えて欲しい、これですべて解決だ。
それにしても、何で狐だったんだろうね。どうしてだろうね
どうでもいいけどこの話はこれで終わりだ。
長い事聞いてくれてありがとうな、じゃあ俺は先に浄土に行っとくわ。
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今日は湯本高校でのお仕事だ。
学校の男子トイレから何かが漏れているような音が聞こえてくるらしい。
その調査と、必要があればトイレを新しいのに変えてくれ、というものである。
湯本高校は前回ガス漏れがあった所なのだが
その時も俺が担当した、勿論バッチリやったと付け加えておく。
何故なら、あの事故も都市ガスが原因ではなかったからだ。
丁度一服がしたくて部下にライターを求める。
トイレの中でタバコすんのかよ、と言いたげな顔であるが関係はない。
休憩は必要なんだ。
シュボッ
用語解説
『トイレの花子さん』
女子トイレの3番目のドアをノックして呼び掛けると、居ないはずの女の子の声が聞こえる都市伝説。様々なバリエーションが存在する
『赤い紙青い紙』
トイレで用を済ませて紙を取ろうとすると、『赤い紙か青い紙』かと聞かれ、赤を選ぶと血塗れ、青を選ぶと絞殺される都市伝説。しかし、今回はいずれでもない
『殺生石』
九尾狐が化けたとされる玉藻前が、逃げた先で変じた毒の石。近づくだけで呪殺される。
近年では、火山ガスによる中毒説が主流となっている。
なお殺生石の住所は、栃木県那須町『湯本』
『Hanako has Sheets』
湯本高校で語り継がれた都市伝説。シーツを持った花子さんと俗称される。
この頭文字を取るとHHS、又はH2S(硫化水素)
『硫化水素』
火山ガスの一種として有名。腐った卵に似た刺激臭とも無臭とも言われ、これが原因の酸欠(中毒症状)はしばし意識障害(譫妄・幻覚の一種)を伴い致命的である
『湯本高校爆発事故』
原因は前回のガス管工事の際に誤って岩盤にヒビを入れてしまい、そこから湧き出した火山ガスが隙間を縫って男子トイレの中に充満し、タバコの火に引火。
なお、事故前より男子トイレにいた生徒が意識障害を起こして倒れる事件が何件か発生していたという




