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7.ギフトの上書き side:ゼノ


 あれから騒ぎを聞きつけた獣人達が門番を呼び、私は殴り倒した獣人を引き渡した。


「…ナティス、帰ろう」


 私はそっと騎士団の上着でナティスを抱き上げる。

 あの獣人の臭いがして嫌だった。早く上書きしてしまいたい。

 しかし、こんな顔色が悪いナティスに無理をさせてしまったらあの獣人と一緒だ。

 私は額にキスを落とすだけにした。


「…そうか」


 ほんの少しだけだが私のギフトが吸われた気がした。


「ナティス、もっと私を必要としてくれ」


 私は眠っているナティスの唇にキスを落とした。







「これ、よく生きてたねぇ」


 騎士団の医務室にナティスを連れて行くと医者に驚かれた。

 相当な量のギフトを流し込まれていたらしい。私は、ナティスの頬を撫でる。


「いや〜、良かった、良かった」


 医者の小さな尻尾がフリフリと揺れていた。


「んん…ここは……」


 ナティスが目を覚ました。私がナティスの頬に触れると気まずそうに目線を逸らされる。手は振り払われなかった。

 医者はその様子を見てニコニコと微笑んでいた。

 私たちはここの常連だったせいか、喧嘩ばかり見せていた彼らにとって進歩したように見えるのだろう。

 実際、私もナティスが歩み寄って来てくれた気がする。


「もう部屋に戻っていいよ。明日も消毒においで」


「わかりました。じゃあ、ナティス行こう」


「は!?おい!やだ!やめろ!」


 私が抱き上げるとナティスは嫌がった。ジタバタと暴れる。


「怪我人なんだから大人しくしてろ」


 そういうとナティスは大人しく抱き上げられた。何だか調子が狂う。



 医務室から出て廊下を歩いているとナティスが小さくあの獣人の名前を出す。


「セオドアは…どうなった?」


 ナティスは悲しそうに瞼を少し伏せ、私の胸に寄り掛かる。


「捕縛された。今は事情聴取でもされているんじゃないか?」


「……オレ、セオドアに酷いことしたんだ。あいつはバディが死んでしまっているのに。そんなやつの前にこんなバディを解消したいやつが現れたら嫌だよな」


「それでもあの獣人がしたことは罪だ」


「そうだけどさ」


 ナティスが珍しく自分がしたことを反省して悲しんでいる。

 私に嫌悪して罵倒した後はこんな顔しない。もや、としたものが胸の中心から顔を出す。


「私には何かないのか?お前のこと心配したんだぞ」


「……ごめん」


 ナティスが謝った。

 驚いていると耳を赤くしたナティスが私を睨む。


「なんだよ」


「いや、何でもない」


 私はナティスが可愛いと思った。





 部屋に帰り、ベッドに下ろす。


「今日はゆっくり休め」


 その場を離れそうとした。しかし、それは上体を起こしたナティスが私の袖を掴んで阻止された。


「どうした?」


「じゃんけんしよう」


 俯いたナティスの首や耳は真っ赤だった。きっと、顔も真っ赤だろう。

 私はその姿に胸が熱くなった。


「いいけど、どうして急に?」


「だって、臭い、だろ?ギフトの上書きして欲しい」


 あまりにも小さい声だった。

 口元が思わずにやけてしまいそうになる。


「ごめん、聞き取れなかった。もう1回言って」


「だから!ギフトくれって言ってんの!!」


 顔が真っ赤だった。きっとナティスなりに上書きされてしまったギフトのことを気にしているのだろう。

 確かにナティスから他の獣人の臭いは嫌だった。怪我が落ち着いた頃に上書きしようと思ったのに。


「でも、相当な量、ギフト入れられたんだろ?これ以上はまた気持ち悪くなるぞ」


「いいから、早く」


「どうなってもしらないからな」


 私はわざと負けるべきなのだろうか。今のナティスの状態では私を抱くなんて絶対無理だ。

 ただ、それを言ったら激怒しそうだ。


「じゃんけん……」


 ナティスが拳をベッドに下ろした。


「やめた」


 大きなため息をつくと、私の袖を先程よりも強く握る。


「今日だけはオレの負けでいいや」


 理性を試されているのだろうか。私は今すぐに押し倒したい気持ちを抑え、ベッドに腰をかける。


「本当にいいのか?」


「オレの気が変わる前にやれや」


 口は相変わらず悪いな。


 そっとナティスを横にし、私もその横に寝転がる。


「無理させないようにするから。具合悪くなったら絶対言ってくれ」


「わかった」


 私はナティスの手の中にキスを落とす。やはりほんの少しだけギフトが入って行く。

 ナティスは気づいていないのだろうか。

 手の中をゆっくりと舐める。


「んっ…」


 声を漏らしながらぴくり、と手が動く。可愛いと思った。

 私はナディスの手を舐め上げた後、頬にキスを落としていった。首筋と腕の痛々しい傷はガーゼと包帯で見えなくなっている。


「あの時、私の名前を呼んでくれてありがとう。嬉しかった」


 傷を優しくなぞっていく。


「うるせぇ、忘れろ」


「それは無理だな。私の頭の中に記憶として保存されてしまった」


「うわ、きもっ」


 私は笑うしかなかった。悪態をついている癖に顔が真っ赤なのだから。


「笑うなよっ!この変態猫」


「はいはい」


 ナティスの真っ赤な耳にキスを落とす。一晩かけてゆっくりと上書きされてしまったギフトを私のギフトで取り込み食べて行った。





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