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【番外編】帰省 後半

 久しぶりのゴルゴン村は相変わらず穏やかだ。

 この空気がなければ。

 オレの横を歩くゼノ、そしてシンラ。気まずくて胃が痛くなってくる。何を喋ったらいいのか分からない。調査のために来たと母さんに伝えたのがいけなかったのだろうか。

 まさか、案内人にシンラを付けられるとは思わなかった。


「……もう、獣人は怖くないのかよ」


 シンラが話しかけてきた。


「ああ、まあ色々誤解とかあってさ……。ゼノのお陰で、もう怖くない」


 オレは足を止め、シンラを真っ直ぐ見た。


「あの時、ひどいこと言ってごめん」


 頭を下げる。過去に自分が言ったことを思い出す。


 ーーー近寄るな!お前はあの化け物と一緒なんだろ!怖い!来るな!触るな!


 街に行く前まで仲良かったはずの友人から言われたシンラは深く傷付いた表情をしていた。罪悪感はほんの少しだけあった。でも、あの時は謝る気なんて更々なくて、それはつい最近までそうだった。

 変化があったのはやはり、過去のトラウマが解消されたことが大きい。それにゼノに「会える内に会っておいた方がいい」という言葉があったからだ。


「いいよ、別に。昔のことじゃん」


 顔を上げるとシンラは眉を下げながら笑っていた。


「確かに傷付いたよ。だけど、そんなこと気にしていられるほど俺は暇じゃない。子供がいるんだ。今年生まれたばかりでさ」


 ちゃんと前に進んでくれていたシンラにオレはどこか安堵した。


「ゼノだっけ?さっきは悪かった。ナティスが獣人嫌いなのに一緒にいたからどんな奴なのか知りたかった」


 シンラがオレの近くに来ると肩を叩く。


「だって、お前ら恋人だろ?俺匂い嗅いでびっくりしちゃってさ」


 そうだった。毎回忘れてしまうが獣人は嗅覚が鋭かった。

 ゼノがオレの肩を抱く。


「結果は、どうでした?」


「ああ、あんたにナティスを頼めるよ。まさか、獣人の男とくっつくとはなー」


 意外だったわ、とまた歩き始めるシンラは嬉しそうだった。オレはゼノを見る。


「良かったな、ナティス」


「……ゼノ、ありがとな。帰省して良かったよ」


 優しく肩を叩かれる。シンラに呼ばれ、オレ達は急いで駆け寄った。

 その後、無事に調査が終わり久しぶりに実家で夕食を食べた。

 母さんはずっと泣いていた。もう会えないんじゃないかと思っていたらしい。

 仕事から帰って来た父さんも、オレがいることに驚いて泣いていた。

 どれだけ両親に寂しい思いをさせてしまっていたのかと反省した。

 母さんが泊まる部屋を用意してくれた。そこはオレが昔使っていた部屋だった。


「ゼノ、起きてる?」


 狭い部屋に布団が2つ敷かれ、横で寝ているゼノに話かけた。


「……起きてるよ」


「あのさ、1年に一度、一緒にまた帰らないか?」


 ゼノがオレの方を向いた。


「いいよ、帰ろう」


 優しい微笑みにオレは胸が熱くなった。


「……そっち行ってもいい?」


 そう言えば布団を開けてくれる。オレはもぞもぞと動いてゼノの横に行った。

 お互い父さんの服を借りたせいかぴちぴちで笑った。


「ゼノ、キスしていい?」


 そう聞くとゼノはオレの頬を撫でて、そっとキスを落とす。

 オレはもっと、と自分からキスをねだった。深くなっていくキスにお互いこれ以上はやめておこうと唇を離した。


「バカナティス」


「……ごめん」


 ゼノはオレの頭を撫で始める。


「帰ったら抱くからな」


「もっと寝れなくなるからやめろよ。そういうこと言うの」


 頭上からくすり、と笑う声が聞こえる。オレはゼノの胸に頭をくっつける。微かに聞こえる心臓の音が心地良い。

 だんだんと眠くなっていったオレはゼノとくっついたまま目を閉じた。








「もう行っちゃうだね」


 村の入り口で父さんと母さんがオレを抱き締める。


「またゼノと一緒に来るよ」


「おーーい!」


 シンラの声が聞こえる。走ってきたのか息が荒かった。呼吸を整えたシンラはオレを抱き締める。


「またな、ナティス」


「うん、また」


 オレもその背中に腕を回す。


「絶対、帰って来いよ。今度、俺の家族紹介させてくれ」


「うん」


「絶対だからな」


「分かったって。ゼノとまた一緒に帰って来るよ」


 シンラはオレと抱擁した後、ゼノとも握手を交わす。


「ナティスを頼んだ。大事にしてやってくれよ」


「もちろんですよ」


 オレ達は手を振りながら、村を出た。あっという間の2日間の滞在だった。


「ナティス、ホームシックになりそうか?」


 イタズラな笑みを浮かべてゼノが聞いて来る。


「ならないよ。だって、ルキとかセオドア達がいるだろ」


 オレはゼノの手に触れる。


「ゼノがいるし。今のオレは騎士団がホームだ……わっ!?」


 グイッと腕を引かれた。ゼノがオレにキスをする。


「ばっ!誰か見てたらどうするんだよ」


 周囲を見渡すと誰もいなかった。もう一度、キスをされる。


「誰もいなかったからしたんだよ、バカナティス」


「な!?」


 ゼノはオレの手を握り、またキスをしてきた。今度はギフトが流される。


「……分かったぞ!お前。喜んでるな。へー、あーゆーこと言われるの好きなのか!」


「だったら?」


「少しは照れろよ!」


 オレとゼノは顔を見合わせた。お互い吸い寄せられるように唇を重ねる。


「早く帰ろう」


「ああ、帰ろう」


 

 ーーーオレ達の家に。



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