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【番外編】2.勝利の後で side:エレン



「貴方とバディなんて組みません」


 パンッと弾かれた手は中を舞う。俺は自分からバディを何らかの理由で亡くしてしまった獣人の寄宿舎に来ていた。

 だって、寂しいじゃないか。獣鬼にならないように騎士団に入ったのに、バディが亡くなったことでまた死と隣り合わせになるなんて。

 騎士団に入隊し、俺はここでバディを自分で見つけると宣言した。


「俺はお前がいい。俺の手を取れ」


「絶対に嫌です!」


 まだ若い獣人、名はカイというらしい。獣人では珍しく10代半ばでギフトが発現してしまったらしい。まだ遊びたい年頃だろう。それなのに、こんな若い内からここに入るなんて勿体ない。


「分かった。じゃあ、まあとりあえず、ここを出よう」


「はい!?」


「さて、行くぞー」


 埒が明かないから外に出すことにした。強引に外に出し、見回りに何度か同行させた。

 そんなある日、獣鬼と遭遇してしまう。俺はギフトを持っていなかったから苦戦を強いられた。


「カイ、ギフト……くれないか?」


「無理です、私はもう……」


「大丈夫だ。俺は死なない」


 さあ、と手を出す。カイは震える手で俺の手を包み込み口付けをする。

 これが、ギフトなのか。熱く、巡っていく。

 俺はカイのギフトで勝つことが出来た。


「大丈夫、俺はお前を置いて死なない。約束する。だから、俺のバディになってくれ」


 まだ幼さが残る若い獣人、カイ。彼はきっと俺の最高のバディになる気がする。


「……絶対ですよ……私より先に、死なないでくださいね」


 カイは俺の手を取った。






「ーーレンさん、エレンさん」


 肩を揺らされ、目を覚ますとカイが俺を見下ろしていた。


「大丈夫ですか?無理させ過ぎちゃいましたね」


 ああ、そうだった。あの獣鬼との戦いの後、カイに押し倒されたんだった。

 執拗に中を暴かれ、求められた。きっと、死と直面したからだろう。


「いや、まあ…うん。でも、昔の夢見てた」


「夢、ですか?」


「まだ小さかったお前……可愛かったな」


 カイの頬を指先で触れる。もう頬も若い柔らかさはないが、肌触りは変わらない。

 頬にかかる髪を耳にかけてやる。

 ほんのり頬を染めるカイは何年経っても可愛い。


「今はもう……可愛くありませんか?」


「んなわけあるか!何を言ってんだ!エロくなったし、執着も一丁前に強くなって……もっと可愛くなってるぞ」


「~~っ!」


 カイが顔を赤らめる。俺は腕を伸ばし、昔より筋肉がつき大きくなった体を抱きしめる。


「好きだよ」


「だめです」


 カイが少し拗ねたような表情をする。

 分かっている。欲している言葉はもっと重みがあるものだ。だが恥ずかしい。

 俺はカイの頭の上に付いている丸みを帯びた耳に触れる。その耳をいじいじと緊張を流していく。


「あ、愛してる……かも」


 なぜ、この言葉がいいのだろう。好きだ、という言葉だってしっかりした好意の現れだ。


「だめですね」


「好きだって言葉も一緒だろ?」


「いいえ、違います」


 カイは俺の首筋にキスをする。


「苺、好きですか?」


「ああ、好きだな」


「食堂のご飯は?」


「好きだ」


「仕事は?」


「好きだな…ってなんだよ」


 カイを引き剥がし、顔を見る。なんで分からないんだ、という顔をされた。分かるかよ。


「私はその好きなものと一括りにされたくありません。だって、貴方は私より先に死なないって言ったんですよ?プロポーズですよね?」


「は!?……えー、そうなのか?」


「そうです。だからこそ、私は貴方にとって普通の好きより上にいたい」


 カイが俺を押し倒す。顔の両サイドに置かれた手が俺をその場に閉じ込めているようだった。

 確かに、カイは普通の好きとは違う。それを区別するとそういうことになるのだろうか。

 しかし、それはまだ恥ずかしい。

 俺はカイの手に触れ、見上げる。


「……愛してる」


「はい、私も愛しています。私より先に死なないで下さいね」


 そう満足そうに微笑み、俺はまたカイによって重たくて逃げることができない愛を体に刻まれた。




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