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【番外編】1.勝利の裏で side:シド


 俺はどうやら可愛い飼い犬に噛みつかれるのが好きらしい。


「おい、これはどういうことだ」


 体の中にあるギフトはさっきの戦いで使い果たしてしまった。もちろん体力もだ。セオが本気で怒って、俺をシーツに縫い止めてきやがる。

 やっぱりこいつはどうしようもない駄犬だ、と過去の記憶が頭の中で巡る。





「なんで、助けたの?」


 獣鬼になりそうだった獣人のギフトをセオの目の前でもらった。

 俺は知らなかった。獣人がここまでバディに執着することを。無理矢理口付けをされた俺は大量のギフトを流された。今まで見たことがない顔をしていた。セオのギフトは酒のように酔いやすい。

 そんなものを大量に流し込まれ、意識が飛びそうになっている時に運悪く獣鬼と遭遇してしまった。

 それから4年、セオに躾を称して放置した。それは俺への罰でもあった。

 

 自分のバディを止められなかった罪。

 獣人の執着を知らなかった罪。

 セオのことを考えなかった罪。

 弱かった自分への罪。


 エレンから放置はやめろと言われたが、門番などをして様子は見ていた。

 そして、4年ぶりに再びバディを組むことになった。セオが人を噛んだ、と遠征中に知らせを受けたからだ。このままだと処分される、とエレンから聞いた。

 怒りでどうにかなりそうだった。騎士団は何をしていた。どうしてセオの前に餌をちらつかせた。

 セオもセオだ。同じことを繰り返す馬鹿だったとは思わなかった。

 しかし、それは俺のせいだったと知った。死んだことにして、4年も放置したことが原因だった。

 だが、俺は優しくしてやらない。セオは抑えて置かなければすぐに噛み付いてくるのだから。





「ねえ、何を考えてるの?僕は本当に怒っているんだよ」


 低く唸るセオの声にはっ、と意識を戻される。


「君、どうしてあの時、あの獣人を助けたの?」


 大きな獣鬼に囚われた獣人のことだろう。仲間なのだから当たり前だ。ギフトはそのために貰っているのだから。


「俺の行動に指図するな、と散々言ってきているのに……まだお前は言ってくるのか」


「当たり前じゃないか!君はどうして、いつもいつも僕の嫌がることばかりするんだ!」


 涙の雨が俺の顔に当たる。


「……死ぬかも、しれなかったんだよ」


 俺の首元に顔を埋める。流れてくるものが俺の肩を濡らしていく。押さえつけられた手も震えていた。

 バディがいなくなる恐怖を植え付けてしまった分、怖くなってしまったのかもしれない。


「だが、それでもお前は俺の行動に口出しするな。駄犬は大人しく俺の後ろを着いてくればいいんだよ」


「本気で言ってるの、それ。ごめん、とか謝罪もないの?」


 むくりと体を起こしたセオはゴミでも見るような目で俺を見下ろす。その目をしていいのは俺だけだ。

 力を入れて逃げようとしたが、敵わなかった。


「人間が本気の獣人に敵うわけないじゃん」


 今まで俺は何度もセオの行動を止めて来た。だがそれは手加減されていたことを知る。やはり、こいつはどうしようもない駄犬だ。すぐ噛み付いてくる。


「おい、駄犬。いい加減にしろ」


 お互いの怒りが視線を通してぶつかり合う。


「どれだけ、僕が怒っているのか。体で教えないとだね。今回ばかりは許さない。絶対に」


 ああ、今回は俺の負けだ。

 そう確信した。




 手首を縛られた俺は為す術なくセオに初めてを渡すことになった。それが終わった頃、セオが俺を求め始めた。


「これを解け……セオドア」


 セオは俺の顔を見て、生唾を飲み込む音がする。

 期待した目で見るその顔を鏡で見せてやりたい。

 手首の縛りが解けていく。俺はセオの首を掴み、ベッドに押し付ける。


「駄犬はやっぱりその姿がお似合いだ。飼い主に噛み付いたんだ、期待しろよ?」


「……少しは反省して欲しかったな」


 苦笑したセオが押さえつけられながら呟く。

 ほんの少しだけ罪悪感が湧いた。ほんの少しだけだがな。


「……悪かった」


「え!?」


 俺はセオの頬にキスを落とす。

 その後は執拗に、セオが泣いてやめて、というまで離してやらなかった。



 たまにだけなら、この可愛い飼い犬に噛まれてもいいかもしれない。


 














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