【番外編】2.ギフト練習のその裏で side:セオドア
僕は部屋に戻ったシドを壁に押し付けて、色んな所にキスをしながらギフトを流し込む。
シドは何も言わない。両手を押さえられているせいなのか、素直に受け入れてくれていた。
そして、今日改めて思ったのがシドは本当に意地が悪い。
「なんで、僕の知ってる獣人を選んだの」
絶対にわざとだ。門番をしていたなら時間で巡回があるから知っているはずだ。僕がその獣人にシドのことを話し、悲しんでいたことを。
「なんのことだ?」
口端を上げ笑う姿は底意地の悪さが垣間見える。
「それより、俺の行動に口出すな、と前に行ったよな?」
僕の腹部に肘を入れられ、痛みで屈むと腕を掴まれてソファに押し倒された。
「最近はいい子だと思ったのに」
シドが上に乗ってくる。冷たく見下ろす瞳は楽しそうだった。
「噛み付いてないだけマシでしょ」
僕はわざとシドの手に噛み付く。甘噛みより少しだけ強くしてみた。
「腕、出せ」
そう言われ出すと思いっきり噛まれた。
「いっ!……たぁ!!」
「飼い主に噛み付くからだ」
噛み跡がしっかりついた場所を舐め上げられ、僕は痛いのに甘い刺激に変わった気がした。
「セオ、さっきのお前はちょっと可愛かったぞ。嫉妬で欲にまみれた顔、中々だったな」
何がそんなに嬉しいんだか。彼は僕の友達を使って、楽しんでいる最低な男だ。
「明日もあいつとギフトの練習をする予定だ。お前はまた2階のあの場所で、涎垂らして待ってろよ」
「本当に最低だな!君は!僕の気持ち分かってるくせに!」
シドが僕をソファから下ろす。足を組み、僕の様子を眺め始めた。
「なんか、飽きた」
「はぁ!?」
欠伸をし始めたシドに僕は肩を震わせる。
「なんなの、ほんと!」
「お前、飼い主に楯突きすぎんだよ。さっきみたいに可愛く嫉妬丸出しにすればいいのに最低だ、なんだって……」
シドは少し拗ねているように見えた。こんな一面、過去にあっただろうか。
なかった気がする。
「君、焼きもち焼かれたいの?」
「あ?悪いかよ。だって、そういう時のお前が1番可愛いからな」
「~~っ!」
シドは足を組み直し、手招きをする。
「優しくされたいか?」
「それはそうでしょ」
僕だって好きだ、愛している、って言われて甘やかされたい。そっぽを向くと腕を引かれシドの足の上に跨る形で座らされる。
「え、な、に」
「ほら、もっとくっつけよ」
腰をぐいっと寄せられ、尻尾の付け根を優しく撫でられる。
「ふぁっ!…っ!」
終いには優しく口付けまでされた。僕の心臓が持たない。シドは意地悪な顔などしていなかった。
他の人に見せるような優しい顔で僕を見てくる。すごく嬉しいのに、何か違った。
「んんっ、やだ、なんか、やだぁ」
シドの膝の上から退く。
「……はっ」
手で顔を覆ったシドは鼻で笑うと僕をまたゴミでも見るような目で見てくる。
ああ、いつものシドだ。
安心してしまう僕はおかしいのだろうか。
「こいよ、駄犬」
僕はシドの首に腕を回した。
翌日も、シドの宣言通りギフトの練習をしてプンプン別の獣人の臭いをさせていた。
明らかに昨日より量が多い気がする。ギリギリと歯を噛み締めて部屋に帰るまでの道のりを耐える。
「駄犬、顔がうるさい」
「うるさいな!誰のせいだと思ってるの!?」
「あー、飼い主に歯向かう奴は嫌だ嫌だ」
「あ、シドさんだ!」
向かい側から歩いて来た騎士団員に声を掛けられたシドは、爽やかな笑顔を作る。
「お、どうした?今から鍛錬か?」
「そうなんです!あの、また剣の相手になって下さい!」
キラキラとした眼差しをした団員は人間なのに尻尾が見えるくらい喜んでいる。
ただでさえ、ギフトを早く上書きしたくてイライラしてるのに、シドは笑顔を貼り付けてお喋りをし始める。
それも楽しそうに。
今すぐその首筋に噛み付いてやりたい。
そんなことを思っているとシドが僕の頭を撫で始めた。それも優しく。
なんなんだ、こんなことされても僕の機嫌は直らないのに、嬉しかった。団員と別れ、部屋に帰ると僕はシドをベッドに押し倒した。
「さっき俺に噛み付きたくて、噛み付きたくて仕方がない顔……してたな?」
僕の手を腕で押し上げ、逆にベッドに押し倒された。
「そんな駄犬に罰をやろう」
「罰?もうこの状況がそうなんだけど。僕はいつまでお預けをくらうの?」
ぐるる、と唸るとシドは僕の上から退いて椅子を持ってくると足を組み始めた。
「早く上書きしたいなら、誘って見ろよ、駄犬」
意地悪そうに笑ってくる。
「はぁ!?やだよ!何言ってるの!?」
声を荒上げ、シドの所まで行くと床に押し倒された。
「ほら、可愛く強請ってみろよ」
目が細められ、にやりと笑うシドはとても楽しそうだ。
「くっ!」
僕は、体を起こしシドの前で膝まづく。にやにやしているシドの手を取って、甘噛みをする。視線を上げればシドの瞳に欲が見えた。
「わん」
小さな声でそう鳴くと顎を掴まれキスをされる。捩じ込まれた舌は口内を蹂躙してきた。僕はギフトを流し込む。
「ん…んんっ」
角度を変えながらの深いキスは気持ちが良かった。
僕はシドの頬に触れると、抱き上げられベッドに連れていかれた。
さわ、さわ……。
頭を撫でられている感覚があった。僕は知っている。意識が浮上していき、そっ、と薄目を開けるとシドの胸板が目の前に現れる。
もう朝だからなのか、辺りは明るかった。
シドの指が僕の髪の間を通っていく。それも何度も。
その優しい手つきに口元が緩む。シドはよくこうやって僕が寝ている時に頭を撫でてくれる。
僕はそれが好きだ。
「……生きて、帰るぞ」
きっと、数日後の遠征のことだろう。僕は心のなかでうん、と返事を返す。
「起きろ、駄犬」
そんな声を掛けられるまで僕はシドの優しい手をひっそりと味わった。




