23.変化した距離
あの日から関係が何かが劇的に変わったということはなかった。これまでと変わらずゼノが見舞いに来て、しばらく話をして、という日を繰り返していた。
「傷もだいぶ塞がったから部屋戻っていいよ。痛みもそんなにないはずだ。騎士団の仕事もしていい」
「よっしゃーー!」
やっと暇な1日から解放されると思うとオレは嬉しかった。
「ナティス、良かったな」
喜んでいるオレに笑いかける。オレは思わず顔を逸らした。
医務室を出たら、ゼノと一緒の部屋に戻るということだ。ゼノと自分の気持ちを知ってしまってから、普通の笑顔もオレにとっては胸が苦しくなるほど甘く感じてしまっていた。
「部屋に戻るのが楽しみだなー」
自分でも驚くくらい棒読みだった。普段と変わらないようにしているつもりなのに意識してしまう。こういう甘く熱い感情にまだ慣れない。
「誰かさんがいないと部屋が静かだったのに。残念だな」
ゼノは変わらなかった。オレを好きだ、と言ったのに意識してる様子もない。自分だけ意識していて恥ずかしくなった。
部屋に戻るとそれはオレの勘違いだったということを知る。部屋に入って早々、抱き締められた。
「……ずっとこうしたかった」
ゼノの整髪剤の爽やかな香りが鼻をくすぐる。オレは震える手でゼノの背に腕を回す。
「ゼノ、あのさ……オレ、その」
オレも好きなんだ。お前のこと。
たったそれだけの言葉なのにオレは口に出せないでいる。ゼノは少し残念そうに笑い肩が小さく落とす。
「……バカナティス」
唇に軽いキスが落とされる。そして、オレの瞳を一度見てから再び音を立ててキスをされる。最初は優しい触れるだけのものが、どんどん侵食してくるような深いものへと変わっていく。
「……んぅっ、んんっ」
僅かな隙間で呼吸し、ゼノの舌を受け入れる。歯列をなぞられ、上顎をこそばゆく舐められる。
お互いの混ざりあった唾液は小さな音を奏でていた。
オレはその行為が気持ち良くて夢中になってしまっていた。
「んっ…ふぁ」
いつの間にかゼノの熱い手がオレの服の中に潜り込み、背中を撫でられていた。くすぐったいのに、思わず声が漏れてしまいそうになった。
ゼノの唇から逃げ、首筋に顔を埋める。
「ナティス、じゃんけん、する?」
「……する」
「じゃんけん」
「「ぽん」」
オレがパーでゼノがチョキだった。そもそも今からすることはギフトを流し込む行為なのだろうか。
「今日はギフト流さないよ」
ゼノはそう言って、オレの耳に口付けをする。
震えた指先でゼノの団服を握る。今からオレは、ギフト関係なくゼノに抱かれる。
それはバディとしてではなく、ただの1人の男として見られていると確信した。
キスを何度も唇に落とされながら、オレのシャツのボタンがゆっくりと一つずつ取られていく。
「手、震えてるな」
ゼノはオレの手にキスをして、そのまま自分の胸に押し当てる。
ドクン、ドクン、と服の上からでも分かるくらいゼノの心臓が鼓動している。
「私は緊張している。それはナティスも同じだと私は思っているんだが」
「……緊張してる。オレだって」
「そうか」
ゼノは嬉しそうに笑うとまたオレのボタンに手をかけ、最後の一つが取られた。袖を抜かれ、ぱさり、と床にシャツが落ちる音がした。
肩の付け根の傷にゼノが触れる。
「跡、残りそうだな」
ゼノの耳が少しだけ垂れた。
「別にいいよ、残っても……ゼノから貰った傷だから」
三角耳がピコ、とオレの方を向く。ゼノは愛おしそうにその傷を見始め、唇を落とす。
「んっ…」
「そんなこと言われたらもっと刻みたくなる」
ゼノは反対の肩の付け根に甘噛みをして、こちらの様子を伺う。
「あっ……」
「次はどこにしようか」
ここか、とオレの体の部位を指さしては甘噛みしては舐められる。ズボンのベルトに手をかけられる。
「沢山、刻んでやるから」
「んぁっ」
耳すらも甘噛みし始め、オレの反応を楽しんでいるようだった。
カチャカチャと音を立てながらベルトが外されズボンが足元に落ちる。ゼノは胸元にも甘噛みする。
「……んんっ」
そして、脇、腰と甘噛みをしていき、オレの体に甘い刺激を刻みつけていった。
オレはゼノにされるがまま、色んな所を甘噛みされ、しつこく体の隅々まで蹂躙された。




