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第42話 こたつの中と、時間の丸み

朝、目を覚ますと、体の芯が冷えていなかった。

 昨夜の温もりが、まだ残っている。

 布団から出るのが、昨日より楽だ。


 居間に行くと、炬燵がそこにある。

 布団は少し乱れ、使われた形をしている。

 家が、もう一段落ち着いた。


 「昨日、よく眠れた?」

 「火が穏やかじゃった」

 みーちゃんは、炬燵の外側に座っている。

 中には入らない。

 距離は変わらないが、位置が定まってきた。


 台所で湯を沸かす。

 火の音が、冬の朝には合う。

 味噌桶に触れると、冷えすぎてはいない。

 「いい感じ」

 「守られておる」

 短い言葉が、静かに残る。


 朝食を運ぶ。

 炬燵の上に置くと、空間がまとまる。

 タマは一度だけ中を覗き、すぐに潜った。

 昨日とは違う判断だ。


 「学習早いね」

 タマは答えない。

 丸くなり、動かない。

 それが返事だ。


 外は曇り。

 光は弱いが、白くはない。

 雪を呼ぶ前の空だ。


 午前中、特別なことはしない。

 炬燵の縁に腰をかけ、本を読む。

 文字が、ゆっくり頭に入ってくる。


 「時間、遅くなった?」

 「丸くなった」

 「丸く?」

 「角が取れた」

 確かに、急ぐ感じがない。


 昼前、湯を足す。

 炬燵の中から、タマが一瞬だけ顔を出した。

 湯気が届くと、すぐに戻る。

 距離の調整が、うまい。


 午後、外に出る。

 冷たいが、刺さらない。

 空気は、静かに落ち着いている。


 祠の前で立つ。

 雪の気配は、まだ遠い。

 鈴の紐は動かさない。

 今日は、知らせる日ではない。


 「ここも、冬になるね」

 「なる。だが、同じではない」

 「家と同じ?」

 「役目が、並ぶ」

 よくは分からないが、違和感はなかった。


 夕方、炬燵に戻る。

 布団の端が、少し重たい。

 時間が、腰を下ろしている。


 「こういう冬、嫌いじゃない」

 「続く冬じゃ」

 「終わりは?」

 「先にある」

 答えは、いつも短い。


 夜、灯りを落とす。

 炬燵の中で、タマが寝返りを打つ。

 みーちゃんは、いつもの位置で目を閉じた。


 時間は進んでいる。

 でも、角張らない。


 炬燵の中の暖かさは、

 止まるためのものではなく、

 続くための形だった。

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