『虎と獅子と狐と速記』
神州の狐が唐に住んでいたことがあった。あるとき、山のけものやら草地のけものやらが集まって、自慢話をすることになった。虎が足の速さを自慢すると、獅子が声の大きさの自慢をするというような具合である。神州の狐は、虎に向かって、どんなに足が速くても、私にはかなわないでしょう、と言って、勝負をふっかけ、虎が走っている間に、獅子に向かって、あなたがどんなに大きな声だとしても、私にはかなわないでしょう、と言って、かちんときた獅子が、大声を出そうとしたところへ、速記の問題文を差し出し、獅子が朗読を始めたところでこれを速記し、虎が戻ってくる前に書き終えて、狐は、虎と獅子に勝ったということになった。虎は恐れ入って張り子のようになり、獅子は声を張り上げ過ぎて頭が抜けてしまった。狐は獅子の頭を背負って神州に戻ってきた。祭礼のときにかぶって歩くあれは、これがもとになったということである。
教訓:走ってきた虎が戻ってくる前に速記を終えると勝ちだというのと、獅子の大声を速記すると勝ちだという判定が釈然としない。




