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第5話 このままだとまずい

 そんな日々が三年が経ち、僕は9歳になった。


 次女のミャーナ(19歳)は卒業して、ムーナ(17歳)は最高学年、メローナ(15歳)は新入生となった。


 メローナが旅立つ時、僕をしっかりと抱き締めて、信じられないくらいの速度でおしゃぶりをチュパチュパしていた。


 危うく一緒に馬車に乗せられそうになるまで僕との別れを惜しんだ後、窓から涙でグシャグシャになった顔を出して、見えなくなるまで手を降っていた。


 僕も別れるのが寂しくて、メイドに縋りついて泣いていた。



 さて、四女が旅立った後、ある問題が起きた。それは、一緒にお風呂に入ったり寝てくれる人がいなくなってしまったのだ。


 家にいる姉はモナ(13歳)だけ。彼女はどういう訳か、僕を避けるようになってしまった。


 少し前までは、あんなに熱心に鍛錬の指導をしてくれていたのに、今は独り(もちろんメイドの付き添いあり)で、やるようになった。


 声をかけても知らんぷりで、何か嫌われるような事をしたのかと思い返してみても、全然浮かばなかった。


 そういう状態なので、当然お風呂にも添い寝もしてもらえない。こうなると、執事に頼むしかない。


 が、みんな定年退職でメイドしかいなかった。しかし、そのメイドも「いい加減一人で寝ないと、一人前の大人になれないですよ」と言って断られてしまう。


 あっという間に絶体絶命の窮地に立たされてしまった僕は、料理人が忙しなく動いている厨房の近くに座って、これからどうしようか考えた。


 アイツは相変わらず、僕の目の前にいる。

 姿形は生まれた時と変わらず維持していて、今にも襲い掛かってきそうなオーラをまとっているのも変わりなかった。アイツはこの状況を喜んでいるかのように、口元が裂けるほど笑っていた。


 もうすぐ夕食になる。早くしないと、入浴や就寝時間が来てしまう――そう思った僕は覚悟を決めて、ある所へ向かった。



 図書室だ。メイドに『借りたい本がいっぱいあるから、運ぶのを手伝って』と言って付いてきてもらった。借りたい本は決まっていた。適当に小説や図鑑を選んだ後、『召喚』と書かれたコーナーに向かった。


 たくさんある本の中で、一番分厚くて年季が入ってそうな背表紙を手に取った。かなり重たく、危うく押しつぶされそうになったが、日頃鍛えているお陰か、どうにか持ちこたえた。


 メイドと共に図書館を出て、庭にあるテーブルとベンチで本を読む事にした。メイドは見守りがてら僕が選んだ本を読み、僕は本命である本のページを開いた。タイトルは『エルフの召喚の仕方』と書かれていた。



〜エルフの召喚の仕方〜

1.深呼吸をして、気持ちを落ち着かせます。

2.以下に記載されている図を地面に描きます。この際、絵が描けるものであれば、何でもかまいません。

3.描いた図の上に乗り、『エラハラマラララマラ』と早口で唱えます。

4.成功すると、エルフが出てきます。失敗すると動物が出てきます。


〜エルフ召喚の魔法陣〜

(キャンディーの包み紙みたいな絵が描かれている)



 なるほど。呪文を唱える所が難所だな。このエラ何とかという呪文は、前世の世界にあった『生麦生米生卵』と同じ系統を感じる。


 僕は席を立って、テーブルから少し距離を置いた。近くにあった木の枝を持って、まずは深呼吸をした。


 心が穏やかになると、地面に本に書かれたものをそっくり描いて、呪文を唱えた。


「ララハラ……あ、間違えた」


 しまった。序盤の『エラ』の所を間違えてしまった。すると、魔法陣が光出し、現れたのはヒヨコだった。ピヨピヨと走り去っていくヒヨコを呆然と見た後、もう一回チャレンジした。


 また噛んで、今度はハトが出てきた。ヒヨコを追いかけるように走っていった。それから何回も些細なミスで召喚が失敗してしまった。


 その度に、ニワトリ、イノシシ、鹿、猿、熊――と、動物が続々と出てきた。そして、迎えた三十八回目。


「すぅ……エラハラマラララマラ!」


 淀み無くスラスラと言えた時、思わず泣きそうになった。高難易度の呪文の詠唱を達成した感動を胸に染みていると、魔法陣が光り出した。

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