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第5章「踏み出した一歩」前編

第5章前編:恋の準備期間


 


山田「んー……お前らさ、最近ちょっとぎこちなくね?」


部室の空気が、一瞬だけ止まった。


読み合わせの余韻が残る中、山田先輩のその一言がぽんっと投げ込まれる。


あまりにも唐突で、私とこちゃ先輩の声が、ほとんど同時に重なった。


葵・こちゃ「……えっ?」


こちゃ先輩が目を丸くして、私は思わず台本を落としそうになる。


山田先輩はにやにやと笑いながら、腕を組んでこちらを見る。


山田「だからさぁ、今度の休みにでもデート行ってこいよ。

台本とか抜きにして、ふたりだけの時間、ちゃんと作ったらどう?」


あまりに突拍子な提案に、部室の空気が一気に変わる。


こちゃ先輩が慌てて口を開いた


こちゃ「お、おい山田、それはちょっと急すぎるだろ。

……ほら、葵ちゃんも困るって」

 

その言葉に、私は反射的に顔を上げた。


葵「い、いえっ、私は全然大丈夫です!」


思わず大きな声が出て、自分でもびっくりしてしまう。


頬が熱くなるのを感じながら、それでもこちゃ先輩から目をそらせなかった。


 

こちゃ「えっ、、まあ、うん、、俺も別に嫌とかではないけど……」

 


その瞬間、ぱちん、と手を叩く音が響いた。


遥「それがいいと思う!」

 

遥先輩だった。

すっくと立ち上がって、いつもの調子で空気を掌握する。



遥「このままの状態で本番を迎えるのは、ちょっと不安があるし。

ふたりの空気感が固まれば、演技にも深みが出るしね。

……まあ、最悪の場合は――」


遥先輩が口にしかけた言葉。

その続きを聞く前に、私は思わず叫んでいた。


葵「こ、こちゃ先輩! 次の休み、どこ行きます?」


早口で言ってしまって、自分でびっくりする。


こちゃ「……お、おう。じゃあ、ちょっと考えてみるか」


台本を抱きしめるように持ち直して、

私はばくばくとうるさい心臓の音をごまかそうと必死だった。

 


◇ ◇ ◇

 


その日の夜

自分の部屋で、私はスマホを眺めていた。


机の上には開いただけの教科書とノート

でも、私の視線はスマホの画面から離せなかった。


こちゃ「日曜日だけど、水族館とかどうかな?」


こちゃ先輩からのメッセージ。


こちゃ先輩とLINEしてる

しかもデートの約束なんて

それがもう、心臓に悪すぎる。



(うわぁぁぁ……ほんとに、デートだ……!)



スマホを握ったまま、ベッドに突っ伏す。


枕に顔をうずめたまま、心臓の音がどんどん早くなる。


(でも……どんな顔して会えばいいの?

どんな服を着れば、変に思われないかな?

子供っぽくない、でも頑張ってるって思われたくない服装で、、)


葵「うぅ、服装どうしよう……!」



スマホを抱きしめたまま、クローゼットの前に立つ。


中にかかっていたワンピースを一着取り出し、鏡の前にかざしてみて首を傾げる


(これじゃ、ちょっと子供っぽい?)


次に黒のカーディガン。大人っぽすぎる気がして却下。


(こちゃ先輩って、どんな服が好きなんだろう、、)


あれこれ組み合わせるけど、「これだ!」って決まらない。


気がつけばベットの上には、何着もの服が散らかっていた。


葵「うぅ……時間が足りない……!」


思わず頭を抱えてしゃがみ込んだ


その時背後から声がした


姉「なにごそごそやってんの。服屋でも開く気?」


葵「ひゃっ!?」


驚いて振り返ると、姉がドアの隙間から顔を覗かせていた。



姉「びっくりしすぎ。なに?あんた、明日デートなの?」



葵「ち、違っ……いや、その……違わない……かも……」

 

私が真っ赤になって答えると姉は小さく吹き出す。


姉「そっかそっか。……いいじゃん、青春してるね」



そう言って勝手に部屋に入ってきて、ベッドの服を一枚ずつ見始める。



姉「ふーん……あんたにしては、どれも悪くないかも。

でも、これとかどう? この白のニット、柔らかい雰囲気出せて似合ってる」


葵「えっ、これ……?」


差し出された服を胸に当てて、鏡の前に立ってみる。


自然に、笑みがこぼれた。


葵「うん…いいかも、ありがとう。おねえちゃん」


 

姉「どーいたしまして。ま、デートくらい、ちゃんと楽しんできなよ」


 

ぽんっと頭を軽く叩かれて、姉は部屋を出ていく。

 


部屋にひとり残って、私は鏡の中の自分と目を合わせた。


(明日、先輩と……デートなんだ)


演技じゃない。練習でもない。

ほんとの、ふたりの時間。


そのことを考えるだけで、胸がふわっと熱くなる。


 


――まだ“好き”って言えてないけど。

明日、ちゃんと向き合いたい。


そんな気持ちが、心の奥に芽を出した。


次回、いよいよデート編


2人にとって大きな一歩です

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