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CHAOS.MERUHEN─カオス・メルヘン─  作者: しゅらく@メスガキ系VTuber
黒打撃シュラーク
2/3

ようこそカオスメルヘン


episode2




仮面をつけた私には感情が無い


感情の無い私には顔が無い





朝の太陽が優しく照らし、 僅かな風が心地よく頬を撫でる──

背中まで伸びる艶やかな、薄い緑色のロングヘアー。

そしてどこかクラシックな雰囲気を感じるメイド服。

カフェを経営するマリブ・ココナは草原に作られた真っ直ぐに伸びた土の道を歩きながら、背伸びをして新鮮な空気を堪能する。

道の横では、どこへ向かうのか草の絨毯の上を白いウサギが忙しく駆けていく。

どこへ行くのだろうか。そんな事を思いながら、前方に目線を戻すと、道に倒れている男が居た。


(お酒に酔って寝ちゃったのかな、こんな所で……)

道を塞ぐように横たわっている男は邪魔でしかない。

早く目を覚ましてくれればいいのだが───

マリブの心配も知らずに男は、穏やかな顔で寝ている。


「うん……」

見てしまったのだから、無視は出来ない。

マリブはうつ伏せで倒れている男の横にしゃがんで、

目が覚めるように声を張って言った。


「おーい!死んでますかー! 生きてますか!」


「あぁ…… 残念だが、生きてるよ」

声を聞いて、頭を抑えながら男が起き上がる。

年齢はマリブよりも一回りは上だろうか。

(おそらく30代くらい……… 怪しい人……)


「ありがとう。奇抜な格好のお嬢さん」

頭を抑えながら眠たげに男は立ち上がる。

たしかに、マリブの格好はメイド服に猫耳のカチューシャという見慣れない格好ではあるが。


「あなたも十分に変な格好だと思いますけど……」

目を細めて心の声を呟く。

その男の姿は、黒のジャケットに黒く染まったジーンズ。

おまけに黒のサングラスで表情は隠されている。

奇抜……どころか あまりに怪し過ぎる格好だった。

どこにいても存在感は抜群だろう。


「俺はチェイサー・ジェレイドだ、お嬢さんは?」


「えっと……お酒とか入ってます?」

何事も無かったのように、堂々と話す男に困惑しながらもマリブは疑問を質問に変えて口にする。


「酒を飲んだ記憶は無いが、もしかしたら……

アルコールでその記憶も飛んでしまったのかもな」

軽快な口調で言う男からは酒の匂いなどは感じない。


(シラフでこのノリなら、なかなかの人ですね……)

そう思ながら自然と頬が緩む。

「ふふ」

自然と笑いがこぼれた。怪しくて意味がわからないし、

イライラさせる時もある、だけど……面白い。

マリブはこう見えて悪魔を狩る、ハンターと呼ばれる

者の一人だ。

ハンターという存在は、女神様から認められた者ではあるが、多くの人々からは良く思われない。

悪魔の返り血を浴びた者、悪魔に近しい者だとか

噂は過剰になり、ハンターと関わったものは悪魔の呪いが……

そんな事実は当然、確認されていないのだが。

嫌われ者であるハンター。彼女もまた、その一人である。


そして──

この偶然の出会いは、人との関わりを避けている彼女にとって、閉ざされた心に光が差すような出来事だった。


「私はマリブ。マリブ・ココナです、よろしくお願いしますチェイサーさん」

警戒をといた彼女は穏やかな口調で手を差し伸べる。


だが

「俺みたいな怪しい男はおすすめしないぜ」

「むぅ…………」

優しさから手を差し伸べ、握手を求めた結果としては

最悪と呼べるのではないだろうか。

いろいろと思いながら怒りを抑えて、マリブは疑問を問う。

「ところで、チェイサーさんはなんでこんな所に……?」


「さぁ、なんでだろうな 俺が1番知りたいぜ」

………やはり、帰ってくる答えは気持ちのいいものではない。真面目に言っているのかふざけているのか。

「えっと……その──」

困惑を見せるマリブ。


それを察したのかチェイサーと名乗る男は──

「ありがとうマリブ、俺は記憶を探しに行くことにする」

これ以上の会話は迷惑だと思ったチェイサー、背を向け歩き出す。

一切の躊躇いの無い動作にマリブは固まる。

草原の草を揺らす穏やかな風が、どこか冷たく感じた。

このままこの道を越えて行くのだろうか、そうなると

もう二度と会うことはないのだろうか。

そう思うと何故か虚しさが込み上げてきた。


(せっかく出会ったのに。もう……会うことは)

こんな自分と話してくれる数少ない人だ。

それを、こんな………

「あ、あの! 良かったら私に雇われてくれませんか!」

マリブはチェイサーの背中を追いかけ、緊張した声で言った。

これは甘えだろうか、欲望だろうか、こうやって

自分のエゴで人を求めるのは。

だが、マリブはその言葉を無意識に体が発していた。

自分でもなにを言っているのか理解できない、それは感情なのか、孤独を恐れた恐怖なのか。

言葉を聞いて振り返ったチェイサーさんは、どこか困った表情をしていた。


「悪いが、俺に出来ることなんて用心棒くらいだ」

それは肯定ではなく否定を求める言葉だ。

そう、マリブには思えた。

だけど、それでも、体は、言葉は、欲望に正直だ。


「お願いします! 欲しいですチェイサーさんが!」


衝動的に言う、叫びそうになりながらも緊張しながらも、冷静を演じて言葉を続ける。


「欲しいんです!」


いろいろ分からなくなりながらも、マリブはチェイサーの目を見続けながら求める。

この人がいい、この人じゃなきゃ嫌だ。

そう思うのはどこか自分と同じ孤独を感じ取ったから。


「…………? 俺のなにが目的なんだ」

その声は冷静でどこか冷たい。

きっと、変なことを言って警戒させてしまった──!


「え!欲しいってのはその……そういう事じゃなくて……人手が足りないんです! そう! なんか怪しい人の手を借りたいくらいには!」

誤解を解くために必死で取り繕うが、きっと表情で

嘘だと見抜かれてしまう。

しかし、チェイサーの返答はマリブの予想した結果ではなかった。


「とりあえず寝床をくれ、帰る場所が無いんだ」

「て、ことは!」

表情が輝くマリブ。

喜びながらも、優しさを利用しているかのような罪悪感

を心の奥底に隠して。


「よろしくなマリブ」


マリブの心情とは対照的に何事もないかのようなチェイサー。

これは利害の一致というものだろう、チェイサーは住む場所が欲しい、マリブは人手が欲しい。

両者にとってそれなりの条件ではあるのだ。


「はい!チェイサーさん!」

朝の日差しが照らし、穏やかな風が吹く。

鮮やかな緑が囲む草原の道で、世界の運命が終わりが

確実に動いていた──



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