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CHAOS.MERUHEN─カオス・メルヘン─  作者: しゅらく@メスガキ系VTuber
黒打撃
1/1

プロローグ── 空白の世界

目の前に広がるのは白い広い空間、その広大な場所の奥行きは無限に広がるようだった。


壁のように並ぶ本棚を背にして設置された机と椅子。

そこに、猫背で座っているのは初老と言える年齢であろう男性。

白を基調とした格好が凛々しい印象を与える。


「初めましてチェイサー・ジェネレイド君。君には『権利』があるよ、一つだけだ、大切なモノを言ってごらん」

言いながら老人はティーカップに口をつける。

その動作は目の前の人になど興味がないことを示すようだ。


老人の言葉を聞いても男は立ち尽くすしかできなかった。


分からない。


朦朧とした脳内。視界に映るのは不明瞭な世界。

──なぜ、老人のティータイムを眺めなければならない、脳天に鉛弾を打ち込めたならどれだけ爽快だろうか。


「チェイサー・ジェネレイド君、コーヒーはいかがかな?」

ショートケーキの味を楽しみながら老人は言う。


声は聞こえている だが理解が及ばない。

不安定な意識の中では脳味噌の覚醒は遠い。

だが、体は反射的に現実に抗おうとする。


「俺はチェイサー・ジェネレイドだ、失せろ」

無意識に発せられた言葉は自身を確かめるためのものだ。


自分の存在を、意思を、無意識がさとす。


老人は何も聞こえなかったように、机の上に皿を置いて、次はコーヒーに口をつける。

ティータイムを楽しむ以外に興味が無いようだった。


「よかろう」


老人が言うと。

視界が真っ白に染まり、全てが消えていく。

目を開けているのか、閉じているのか、思考も感覚も全てが眠る──



「ふう」

これでまた一人、魂の円環『ライフストリーム』に導かれた。

仕事には終わりがないものだ。

老人はショートケーキの頂上に君臨くんりんするイチゴを味わい、達成感を自覚する。


「おじいちゃん〜、上からの伝言っす〜」


活発な声が響いた。それと同時に白の空間に霧がかかる。


「ああ、君か。おじいちゃんと呼ぶものだから孫が来たのかと思ったよ」

「ぇ、何言ってんすか──」


霧は大きく、濃く広がり、声さえも届かない。







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