8. 愛してる
「お前は色々勘違いしてそうだから言葉にする。
まず、俺はお前のことは嫌いじゃ無い。お前、俺の性格なんてよく知ってるくせに、俺が嫌いな奴とはとことん関わらないこと忘れたのか?」
「で、でも、情けかもだ...」
「は?」
ひい。ひさびさにまともなヴィルの冷気を食らった。 ゔ、でも確かにそうだ、ヴィルは嫌いな奴にはこれより冷たくて重い冷気を浴びせてた。
「ごめん」
「ん。で、次な、俺がお前の元から去ったのは裏切るためだ。これは正しい。ただ、お前を裏切るためでなく、組織を裏切るためだと言うことを念頭に置いた上での正しさだが」
組織を、裏切る。
それはそうだろうと思っていたけれど、おれが除かれているというのは考えもしなかった。
てっきり、組織を裏切るとおれを裏切るは繋がっていると思ったから。
「うん」
「わかったか?それからな」
いつものようにヴィルの言うことはひとつも聞き漏らさないようによく聞く。
「俺はお前のことが好きだ」
なるほどね、へー
?、??
「へ?」
「ああ、待て、伝わらないな。ちょっと待てよ」
待つってなに?
あ、そっか、誤解しないように言い換えようとしてるのか。
好きって、そうだよね。友達として、とか、仲間としてってことだよね?
勘違いするところだった。危ない。
...傷つくところだった。
「あ、勘違いしてるな。その顔は」
「?何の話?」
勘違いしかけたのは本当だけど、つっこまないでほしいなあ。
「あーー、もう、そうだよな、ストレートでないとお前にはぜっったいに伝わらないよな。
俺はお前...フィルスのことを愛してるよ」
「そう....っ?!、あっ愛?!」
ヴィルが、おれを?
っと、友愛も愛してるって言うよな。
危ないなあ、勘違いするよ?
「もー、愛してるなんて....恋愛的な意味で使ってよ」
「勿論そうだけど」
ぽそりと呟いた言葉が拾われた。
...ことよりも、その返答にびっくりした。
「俺はフィスを恋する対象として、愛しているよ」
信じられない言葉だけど、細められた瞳が何よりもおれを愛おしそうに見るから、信じるしかなくなる。
信じてしまったらこちらのものだ。
おれだって、
「おれだって、ヴィルを愛してる」
「っ!」
ほんとうに?夢じゃない?
「嘘なら早く言ってね。その方が傷は浅いから」
「はーっ、ったく。なんでお前は普通の人間の百分の一も自分に都合のいいように物事を考えられないんだよ。
俺が愛してるって言ってるんだから、ほんとに決まってるだろ。嘘はつかない」
だって、ヴィルへの想いは抑えないといけないものだから、ヴィルへの感情には人一倍気を遣わないとで。
「で?返事は?」
「へ、んじ?」
「そうだよ、俺がお前のことを愛してるのは揺るがない事実だから。お前は俺の手を取ってくれる?」
そんなの、選択肢なんてあってないようなものだ。
選ぶのはひとつしかない。
もちろん
「うん、ヴィルがいい」
ヴィルが他の人のものになら、しのうとすら思っていたのに、ヴィルはおれのことが、すっ好きだった?
こんなにしあわせなことがあるのなら、おれはまだ生きていける。
「愛してるっ!ヴィル!」
これにて完結です。
初びーえるということで、至らぬ点が多く特有のじれじれ感は少なかったですが、楽しんでいただけていれば幸いです。
書いたらすぐに投稿したくなってしまう性質なので、4日というとても短い期間の連載にはなりましたが、お読みいただきありがとうございましたm(__)m
続きも書きたいなぁとは思っています。乞うご期待です。
なろにろに