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2. あいしてるよ

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 その願いは、最悪なカタチで叶えられた。


 あいつが、敵組織の人間として接触してきたからだ。



「いやだ、やだ」



 涙ばかり溢れて、前が見えない。つい数分前までは、喜びであふれた笑顔を見せられたのに、今はあいつの顔すら見えないほど、視界が歪んでいる。


 なあ、どうしてだよ。なんで。



「なんで?」



 おまえが敵としてきたら、いまだに制御装置に縛られたおれは、おまえを、おまえを殺さないといけない。


 こんな再会の仕方なら会いたくなかった。

 会いたいなんて、願わなければよかった。


 それにね、ねえ、隣にいる人は、だれ?


 おれは、おれは?おれがどれだけ好きだと言っても、笑顔ひとつ見せなかったおまえは、どうしてそんなに幸せそうな笑顔を浮かべて其奴を見ているの?其奴の隣にいるの?おれは、おれは今そこにいないのに。

 どうして、ずっと、ずっと一緒にいたおれは、


 いたい、痛い、いたい


 居たい。



「なん、で」



 あいつは、まだおれに気づいていないようだった。


 くるしい、くるしい。


 あいつはまた、知らない奴に微笑んでいる。


 くるしい、くるしい。


 あいつは、一言二言、言葉を交わして突然顔を赤らめた。怒ったように其奴のことを軽く叩く。


 ぼきっ


 もう、むりだ。

 そのばしょは、おれのばしょだったのに。いつもいっしょにいたのは、おれだったのに。


 そっか、あいつはうらぎったんだ。

そしきといっしょに、おれのことも。

おれ、きらわれてたのかな。



 もう、しにたい。



 衝動のままに、走り出した。

おれも一応危険分子で、組織の奴に武器の携帯・使用は認められていない。


 だから、そこらじゅうに倒れている組織の奴から奪う必要があった。


 あいつはここにいる奴がみんな死んだと思っているはず。おれはいないと思っているはず。

 ちらりと目を向けると、あいつは突然動き出したおれを見て驚いていた。


 ごめんな、生きてて。邪魔だよな。


 すぐに、すぐに。


 手近な奴からナイフを取った。暗器というのは大体隠すところは決まっているから、すぐに見つけてするりと取り外す。


 あとちょっと。


 思いのほかよく手入れしていたようだ。鋭く尖り黒く鈍く光る金属の刃を見て思う。


 これで、おわり。


 その刃を喉に近づけて、ひとおもいに突き刺す。


 痛い、痛いよ。けれど、あいつがいなくなったときに比べれば、今日の苦しさに比べれば、ほんの少しも痛くない。


 ばいばい。


 最後にあいつの顔が見たくて顔を向けた先に、目を見張って何かを叫ぶあいつを見た気がするけど、それはきっと気のせいだ。



 ....ねえ、愛しているよ。

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