疑念
僕が見たのは膝をついているロヴァイトさんと1人の男と交戦中のレクスとマイだった。
それを見た瞬間考えるよりも先に駆けだしていた。
咄嗟のことで瞬間移動をすれば良いところを走っていく。
これも前世に魔法がなかったせいだろう。
近くまで行った時点で交戦中だった男が一瞬こちらを見てから去っていった。
何で?僕そんな強くみえるかな?
そんなことよりまずは膝をついているロヴァイトさんだ。
「大丈夫ですか?」
「ああ、あの男が去って痛みが引いた」
「……………特殊な魔法かなにかを受けたんですか?」
「いや、1度殴られただけだ」
ロヴァイトさんに一撃入れるだけでも凄いのにまさかその一撃でダウンさせるとは……………
考えているとレクスとマイが近づいてきた。
「カイ少し良いか」
「どうした?」
「少し話がある。この場は警備軍に任せて先に王都に帰ろう」
見た限りもう最上級がいない用なので了承する。
「じゃあ俺はもうひと暴れしてくるか」
さっきまで膝をついてた人のセリフじゃない。
「ロヴァイトさんは休んでください」
「いや、しかし……………」
「お父さん、帰るよ!」
マイの言葉で渋々帰る事になったロヴァイトさん。
こう考えるとSランク冒険者を一言で動かせるマイって凄いな。
「それにお前も入っている事を忘れるなよ」
レクスからそう言われる。
「あれ?声に出してた?」
「ああ、普通に出ていたぞ」
マジか。
気を付けよう。
「って僕も入ってんの?」
「自覚してないのか?じゃあ私が魔獣を倒してこいと言ったらどうする?」
「理由を聞くかな」
「ではスタールに言われたら?」
「そりゃあもう喜ん……………あっ!」
「お前……………完全に尻に敷かれているな。
まあ、面白いから良いが」
苦笑いしながら言うレクス。
「ぐぅ……………お前も尻に敷かれてんじゃないのか?」
「うっ………早く帰るぞ!」
明らかに話を変えたな。
レクスの話が何かは分からないけど、ロヴァイトさんを一撃でダウンさせた男は要注意だな。
ただ生憎顔が見えなかったからな。
ただマイに攻撃したんだから、次に会ったら殺さないと……………
まただ。
何で僕は何でもかんでも殺そうとしているんだ。
帰る道中、自分自身への疑念が深まっていった。